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2012年12月31日 (月)

佐伯泰英「散華ノ刻」(双葉文庫)

 居眠り磐音 江戸双紙の最新刊、第41巻である。1月には続けて第42巻も出るという。恐るべき執筆スピードである。「天明の関前騒動」三部作と銘打って、前作の「春霞ノ刻」、この「散華ノ刻」、次いで出る「木槿ノ賦」は一つの連続した物語になっている。

 作者の後書きを読むと、予定では50巻で巻を閉じるようだ。そう言えばこの巻でも佐野善左衛門の姿がちらりと見え隠れしている。後に殿中で田沼意次の息子、田沼意知を殺害した人物である。それを記に田沼意次の権勢も一気に凋落する。関前藩の難題が解決し、最大の敵、田沼意次が失脚するところで物語を終えるつもりなのであろうか。

 前作で藩主の密命を受けて江戸にやってきた関前藩の国家老、坂崎正睦(磐音の実父)は、関前藩を私しようとしていた江戸家老の鑓兼参右衛門に拐かされるが磐音の活躍で救出された。その正睦には磐音にはまだ明かしていない密謀があるらしく潮時を謀っている気配である。
 
 的の首魁、江戸家老の鑓兼参右衛門にたらし込まれてしまった藩主の正室・お代の方を後ろ盾に参右衛門たちが江戸藩邸を牛耳る中、ある知らせを受けるとついに正睦は磐音たちを引き連れて敵陣に正面から乗り込む。もちろん結果は正義が勝つのだが国家老と江戸家老の応酬の正睦の弁舌が痛快である。昼行灯と呼ばれる男はいざというとき底力を発揮する(と期待されるが、その機会のないこと、またはそもそも無能だったりすることが多い)。さすがに物語だ。

 次の巻ではついに藩主が参勤交代で江戸に出府してくる。最後の大掃除が始まるのであろう。実は的の首魁の江戸家老・鑓兼参右衛門の背後では田沼意次が糸を引いていた。田沼の反撃がどのような形で磐音に災厄を及ぼすのか。それに磐音はどう対抗するか。次回をお楽しみに、と云うところだ。

 ところで今年もいよいよ終わり。拙い文章を読んで戴いて本当にありがとうございます。来年も精々駄文を書き連ねて御目を汚しますが、引き続き読んで戴けるよう心からお願い申し上げます。

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