宮崎正弘「現代中国『国盗り物語』」(小学館新書)
副題「かくして『反日』は続く」。
現代中国の共産党政府はどうなっているのか、そのことについて歴史的背景と共に明快に説明されている。このようなとらえ方は皮相的だとして嫌う人もいるかも知れないが、私はとてもよく分かったし、普段感じていたことがあまり間違っていなかったと云う事に安心感を覚えた。
意見を異にする人もこの本を一度そのまま読み通してもらいたい。そしてこの二十年間の中国のニュースの数々、そして日本に対しての行動、東南アジアに対しての行動などを思い返してもらいたい。著者の云っていることが決して偏った思い込みではなく、現実であることに気が付くだろう。
日本人は中国について思い込みで幻想を持っている所がある。それは中国四千年の歴史を背景にしての漢文的知識の中国像だ。私もそれを根深く持っている。しかし現実の中国はそのようなものではない。共産主義で国をまとめて以来そのようなものでなくなったのではなく、もともとそのようなものではなかったのだと云うことは、中国を知るほどにわかってくる。
中国が現在共産党王朝であること、初代の毛沢東から主権がどのように引き継がれていったのか。その引き継ぎにどのような権力闘争があったのか。そして最新の習近平という皇帝は如何なる基盤のうえにあるのか、中国の現在抱えている問題に何処まで対処出来る人物なのか。
反日の背景と、日中関係は今後に希望はあるのか。それについてはこの本を読んだ後に自分なりに考えてみたら良いだろう。そのための材料はこの本に山盛りに盛り込まれている。
*この本の中に日本軍が『三光作戦』についての言及がある。中国で、日本軍の残虐行為をあげつらう時に必ず引用される言葉なのだが、この本で疑問に思っていたことが氷解した。三光とは焼き尽くし、殺し尽くし、奪い尽くす、ということである。「光」という字に日本ではそのような使い方はない。このような意味で使うのは中国のみである。中国の用語を使って日本がそのような作戦を展開した、と云うのは考えにくいことで、中国が後でねつ造したものであることがうかがえる。
**本多勝一という朝日新聞の記者であり著名なルポライターがいる。知床の自然保護などの運動もして尊敬もしていた。文化大革命の最中に中国で取材して日本軍が如何に残虐な行為を行ったかというルポを行っていたが、私は不思議なことにその記事に違和感を感じていた。多分記事が殆ど一方的に中国側の提供している情報を検証無しに事実として書き連ね、日本をひたすら誹謗する文言にあふれていたからだ。日本軍がこんなに救いがたいほど悪人だらけだったという主張は明らかに嘘くさいではないかと感じたのだ(私の父親も日中戦争に従軍していたから特にそう感じた。戦争だから父親が敵を倒したことはあっただろうが、悪逆非道なことをする人間だとは思えない。殆どの日本軍兵士がそうだったろう)。
この本の中でとても重要な部分だと思ったのは、中国共産党の軍は、いくつかの戦闘以外は殆ど日本軍と干戈を交えていないと云う事である。日本軍が戦っていた中国軍というのは国民党の軍隊、蒋介石の軍隊であったことである。そして中国共産党は、国家の主権を握った根拠を日本軍と戦い、中国大陸から日本軍を駆逐して独立を勝ち取ったことに置いていると言うことだ。実は日本に戦勝したのは国民党が支配する中華民国であった。だから国際連合は中華民国を常任理事国とし、正式に中国を代表すると認めていたのだ。中国共産党は投降した日本軍の武器を奪い、日本軍との戦いに疲弊した国民党軍をゲリラ的に駆逐していってついに中国大陸から追い出すことによって中国に王朝を打ち立てた。それから後の事はこの本を読んで欲しい。
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