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2013年1月

2013年1月31日 (木)

わかることの歓び

 今内田樹先生のブログ(内田樹の研究室)のアーカイブを読み直している。今日読んでいるのは2007年の分(1999年の初期の分から読み続けていてしばらく中断していた)。分量が多いから多分数日かかるだろう。私はアナログ人間だから(と云うわけでもないが)液晶画面で読むのが苦手である(目が疲れるし)。だからハードコピーしてから読む。プリントされたものなら寝転がろうが、どうしようが自由自在だ。それに一枚ずつ考えたりメモを書いたり出来る。先生がブログで書かれたものはほとんどその著作の中にも書かれているが、それでも両方とも読みたいのだ。

 内田樹先生の文章を読んでいると、思ってもいなかったことが解るようになる。それは先生が言う通り、先生が解るように教えてくれるからではなく、解るのは私自身の力による。そして決して解るはずがないと思っていたことがいつの間にか解っていたりするのでその歓びは大きい(先生の本を読めば多分云っていることが解るはず)。

 先生は当たり前だと思っていたことに、そうではない世界を提示してみせる。そしてそのように世界を見る方が面白いことを教えてくれる。どれほど私が見えない色眼鏡を嵌めていたのか、気づかせてくれる。

 その色眼鏡は長年に亘って知らないうちにわが頭にがっちりと嵌めこまれたものだ。全てを外すことなど不可能なほどたくさん嵌めこまれているが、大事なことは、自分が気づかずに色眼鏡をかけていた、と気が付くことなのだ。

 これこそ仏教で云う、無明の闇からの悟りの始まりであろう。ソクラテスの云う、自分が知らない、と云うことを識ることだ。

 私のその第一歩は、キルケゴールというデンマークの実存主義哲学者の書いたものを繰り返し読む(たまたま高校生のときに格好をつけて読み始めた本だったと云うだけでさっぱり解らなかった。未だに数頁しか理解していない)ことで、自分と他人は違う、と云うことに気が付いたときだった(キルケゴールはそんな事を取りたてて云っていないけれど、どういうわけは私にはそのことだけが心の底から解った)。

 気が付いたことの内容の問題ではない。解ること、と云うことがどう云うことか解った瞬間のその歓びは今でも鮮明に記憶している。そしてその解る、と云うことにまた幾層ものレベルがあることにも気が付くことが出来たのだ。二次元にいる人が三次元について悟るようなものだろうか(違うか)。

 旨く説明出来ないが(何より解る、と云うことは人に教わるものでは決して無いからだが)、多分多くの人は既に私よりもレベルの高いところにいるのだろう。だから是非内田樹先生の本を読むことをおすすめする。ややレトリックは多いが、それはあなたに何とか解って欲しいという先生の愛による。

佐渡ヶ島(新日本風土記の「佐渡」を見て)

 このブログで、いちどでなく佐渡が好きだと書いてきた。思い出せるだけで七回は行っているが、多分もっと行っていると思う。何せ大学時代から行っているのだから。何が好きと云って全部好きだ。特に島の人の品がいい。多分罪人として流されたみやこびと、それも高貴な人の血が伝えられているのだろう。そういうことってあると思う。

 たまたまNHKの新日本風土記で佐渡を特集していた。この番組は「わあすごい」とか「きゃあおいしい」ばかり云うタレントを使った観光案内番組ではないから、ディープな佐渡が詳しく紹介されていた。

 知っている佐渡のすぐ周辺に、私の知らない佐渡があるのだ。もう少し時間をかけて佐渡を歩きたいと強く思った。数年前、自家用車とともにフェリーに乗って友人と二人で、丸三日かけて丁寧に廻ったが、今度はバスや歩きで廻りたいと思う。五月の連休前くらいなら寒くないだろう。

(業務連絡)桐生の周恩来様 来週北関東方面に参ります。週末の土曜日は空いていますか?おつきあいいただけるなら桐生に参ります。周恩来様のメールアドレスが、どう云うわけか見つかりませんのでここで連絡いたします。

松井孝典・南伸坊対談「『科学的』って何だ!」(ちくまプリマー新書)

 買ったことを忘れていた本。ちょっと読み始めたら止まらなくなるほど面白かった。

 内容を紹介するかわりに目次を列記する。
第一章 未来はなぜわかるわけがないのか?
第二章 宇宙の果てはあるのか?
第三章 日本はなぜ不合理がまかり通る社会になったのか?
第四章 人間の欲望はなぜ尽きないのか?
第五章 研究するとはどう云うことか?

 この目次を見ただけで読みたくなるでしょう?

 「科学」でわかる、わからない、と云っているときには二元論と要素還元主義が前提としてあることが説明されている。このことは極めて大事なことなのだが、一般的にはわかりにくいのでこの本の中で繰り返しかみ砕いて例を挙げて説明されている。そして人が経験的にわかる、わかからないと云っていることには科学的ではないものがほとんどで、それは納得する、納得しない、と云う世界観の話で科学とは無関係である。

 世の中は科学的という名の皮を被ったまやかしにあふれている。それを見分けるためにはこのような明快で分かりやすい本を時々読んでおく必要がある。

 それにつけても南伸坊という人は不思議な人で、人が聞くのをためらうような、あまりにも当たり前と思われていることを平然と聞くことで、本質をひとりでに摑んでいく。本当に頭のいい人なのだと思う。多分この人の基本的な質問に答えることの出来ない専門家、と云うのはにせものと断じてかまわないだろう。

 あまりにも簡単に読み終わったので、肝腎のことを読み飛ばしている気がする。時々読み返してみたい。棚に並べておくことにしよう。

タイ・バンコク(世界ふれあい街歩き)

 「世界ふれあい街歩き」という番組は、NHKの番組で好きなものの一つであり、特にアジアの街の場合は録画しておいてゆっくり見るようにしている。バンコクには数年前に友人たちと行っているので特に懐かしく、その当時のことを思い出しながら見た。

 番組を見ているうちに、あの高い湿度と高温を実感したような気がした。旅で訪ねるときには観光地がメインになってしまう。だがこのような番組で、露地に住む人々とふれあいながら生活そのものを見せられると改めて路地裏を歩いてみたい、また行きたい、と思う。

06112324_109番組でも取り上げられていたワットポーの仏像。

06112324_146屋台の光景。東南アジアでは外食が普通のようで、朝でも昼でも夜中でもこのような屋台で食事が出来る。

0611245_033国技のムエタイ。番組でも少年たちが私設のジムで練習をしている姿が映されていた。

信用調査業管理条例

 中国の温家宝首相は国務院令に署名し、「信用調査業管理条例」が交付された。

 これにより、信用調査会社の設立条件が定められ、管理部門の認可が必要となる。そして調査会社は信仰する宗教、遺伝子、指紋、血液型、疾病、病歴及びその他法律に禁止されていいる個人情報の採取が禁止される。さらに個人の収入や貯金、有価証券、保険、不動産に関する情報及び納税情報の採取も禁止される。

 見過ごされそうなニュースなのだが、どう云うことだろうか。

 先般取り上げたように、中国では調査会社の存在は公式に認められていない。それを今回は通常の会社として公認する、と云うことのようだ。その代わり、調査してはいけないことを決めるからそれに従え、と云うことなのだ。ではその裏には何があるのか。鋭い方ならすぐ分かるであろう。

 中国では公人の資産や愛人についての暴露が続いている。その額の巨額さやえげつなさは想像を超えている。最近は温家宝首相の何百億円という巨額の資産が、ニューヨークタイムスに報じられている。これらの調査に活躍しているのがこのような調査会社なのだ。

 中国の公人で不正な蓄財をしている人間は少なく見ても九割を超えている、と云うのはほぼ常識だ。と云うよりほとんど全てが行っていると云っていいのだろう。もしがんばって清廉で居続けようとするとまわりの人間にとって不都合であるから、強要させられるか、それでもがんばれば職を失う羽目になるだろう。

 だからたたけば誰でもほこりが出る。そしてそれが明るみに出るには必ず理由がある。中国お得意の権力闘争が背景にあることがほとんどなのだ。

 温家宝が署名した、とわざわざ上げて記事が報じているのはそういうことで、温家宝も引退を前にして、政権側には今後暴露をしにくくしますから、とアピールを行い、そして自分に対して今後追求をしないでください、と暗黙にお願いしているのだと私には読み取れた。

古美術泥棒

 長崎県対馬市の神社や寺から盗まれた仏像や宝物が韓国に持ち込まれ、ソウルで売りさばかれようとしていた。ソウル警察は文化財保護法違反で首謀者を逮捕、共犯者四名を指名手配した。

 日本の寺院から盗まれた文化財が、韓国の骨董業界で普通に流通していて、中には韓国の国宝になったものまであると云うことをご存じだろうか。

 「韓国窃盗ビジネスを追え 狙われる日本の『国宝』」と云うノンフィクション(菅野朋子著)に詳しく述べられている。

 具体的には、長崎県の安国寺にあった『高麗版大般若経(重要文化財)が1994年に盗み出され、その翌年、これに酷似した経典三巻が韓国政府により国宝指定されている。日本政府は調査を依頼したが、韓国は無視している。写真の記録が残っているので比較すれば判別が可能なのに、である。

 菅野氏はそれを独力で追跡調査、ついに盗んだ犯人を突き止め、取材を行うことに成功している。

 韓国政府はそれでも調査を行おうとしない。警察ももちろん動こうとしない。韓国では当該品は高麗のものだから(たとえ盗まれたものでも)韓国のものである、との主張のようである。つまり確信犯である。韓国には歴史的な文物はほとんど残っていない。戦争という惨禍があったからでもあるが、そもそも文物を大事にするという風習がなかったとも云える。日本は幾多の戦乱の中、命がけで歴史的文物を護ってきた。

 韓国もナショナリズムの高揚とともに、そのような歴史的な文物を大事にし始めたらしいが、盗んだもの(もちろん否定はするだろうが、調査にすら応じないのは疚しいからであろう)でも国宝にする、と云う品性は下劣でいやらしい。韓国は自らをおとしめている。

 今回の対馬の事件について犯人を逮捕したことは評価しよう。しかし盗まれたものは既に売却されているだろう。それが世に出て来たとき、韓国政府はどうするだろうか。

 これから韓国の美術館、博物館はますます展示品が充実していくことだろう。

2013年1月30日 (水)

映画「アンダーワールドビギンズ」2009年アメリカ映画

 監督パトリック・タトポロス、出演マイケル・シーン、ビル・ナイ、ローナ・ミトラ。

 映画「アンダーワールド」シリーズの第三作で、ヴァンパイア族と人狼族とのそもそもの戦いの発端が明かされる。第一作と第二作の主人公セリーンを演じたケイト・ベッキンセールは、この映画ではラストシーンにちらりと登場するだけだ。セリーンは、この映画のヒロイン、ソーニャに瓜二つ、と云うのがアンダーワールドのそもそものお約束で、そのソーニャはヴァンパイア族の長であるビクターの娘である。だからソーニャ役にはベッキンセールがなるものと思っていたが、ローナ・ミトラが演じている。一応似ているし、そもそも別人の設定だから違和感はない。

 アンダーワールドの第一話、二話では人狼族=ライカン族は敵として描かれているのだが、この第三話の主役はそのライカン(マイケル・シーン)である。そもそもの人狼はいちど狼に変身するともう人間に戻れない。人間はこの人狼から身を守るためにヴァンパイア族を領主と仰ぎ、貢ぎ物を捧げてきた。その人狼の血を人間に移植するとその人間も人狼になるが、そうして出来た人狼は狼になってもまた人間に戻ることが出来る。ヴァンパイア族の長、ビクターは人間から奴隷を徴発し、人狼を数多く産み出して利用していた。

 ところがオリジナルの人狼の中に人間に戻れるものが現れた。それがライカンである。このライカンを殺さずにビクターは目をかけて育て上げた。ところが長ずるに及んでライカンは優れた能力を発揮しはじめ、ヴァンパイア一族たちから反感を買われる存在になっていた。

 ライカンとともに育ったビクターの娘ソーニャは跳ね返りの娘だが、いつの間にかひそかにライカンと愛し合うようになっていた。

 そんなある日、城の外でソーニャが人狼たちに襲われる。城の外へ出ることを禁じられていたライカンだったが、掟を破りソーニャを助け出す。ビクターは激怒し、ライカンの特権を剥奪して奴隷にしてしまう。

 そんな中、ライカンは奴隷仲間を糾合し、ソーニャやタニスなどの助けを借りて城を脱出する。そしてソーニャも折を見て後を追うことになっていたのだが・・・。

 このあとの悲惨な出来事は第一話のライカンの回想シーンで繰り返し語られるものである。そしてライカンとビクターとの壮絶な戦いが始まる。

 このシリーズを見たことの無い人には何の事やら意味不明だろうが、とにかくこう云うダークワールドの物語は面白い。大好きである。

見事な偽装

 江蘇省南京市内で「釣魚島(尖閣諸島)付近や黄岩島(スカボロー礁)付近の海で獲れた魚」が市場で売られ、瞬く間に売り切れた。

 中国近海と違って汚染されていないことでもあり、ナショナリズムにも訴えるものがあって、通常よりもかなり高値だったが、売れ行きが良かったらしい。インターネットなどでも大々的に取り上げられてニュースになっていた。

 ところが漁業関係者や専門家によると、本当に現地で漁獲されたものかどうか疑わしいのだという。「係争地で獲れた魚」というレッテルだけで高値であっという間に売れるのだから、偽装だとすれば見事な産地偽装だ。

どさくさ紛れ

 韓国・李明博大統領は昨日、大統領府で国務会議を開き、獄中の自分の側近たちに対して特赦を行うことを決定した。

 特赦されるのは前国会議長二人、公職者五人、政治家十二人、経済人十四人、教育・文化言論労働系市民団体員九人、龍山参事五人、外国人受刑者八人の合計五十五人。

  対象者の一人、前放送通信委員長は、巨額の不正資金事件で懲役二年六ヶ月、追徴金六億ウォンの有罪が確定している。

 李明博大統領は大統領に就任したばかりのころ、「在任中には赦免権を乱用せず、在任中に発生した権力を使った不正赦免は行わない」と明言していた。

 今回の赦免が批判されると「不正な赦免ではないから乱用に当たらない」と述べたという。

 李明博大統領が就任初期に赦免権を乱用しない、と明言したと云うことは歴代の大統領が、任期中に赦免権を乱用してきたことを認めたようなものである。

 韓国マスコミも反日を煽るよりも、このような行為に対してもっと批判しても好いのではないか。まあ李明博も大統領でなくなったとたんにぼろぼろにされることは過去、以前の大統領で再三見せられてきたことではあるが。

 朴次期大統領もこれには強く反対していたが、無視されたようだ。彼女が就任を要請した新首相もどたんばで断ってきた。前途多難なようである。そうすると大統領になった早々に李明博の悪事をあばいて断罪することで国民の支持を取り付ける、と云う韓国流の手法をとらざるを得ないことになるだろう。そしてたぶん朴大統領も任期末までに公正な(!)恩赦を行うことになることだろう。

 これは韓国の一族主義が背景にあるのだろうが、これこそ韓流ではないか。

池波正太郎「鬼平犯科帳」(文藝春秋)

 「剣客商売」シリーズを読み終わった(番外編を除く)ので今度は「鬼平犯科帳」シリーズを読め始めることにした。ご存知、鬼の平蔵である。この人は実在の人物で、火付け盗賊改め方としての事蹟とともに、ときの老中の松平定信に建言して、江戸湾の石川島に人足寄せ場という、当時無宿人と呼ばれていた人々に職業訓練などを施して、構成させる授産施設をつくっている。

 初版は昭和四十三年、上下二段組。月刊誌・オール讀物に連載していたものをまとめたもので、当初は一年間の予定で書き出したらしいが、好評なのでもう一年連載を続ける、とあとがきには書かれている。それが生涯書き続けることになろうとは池波正太郎も思っていなかったようだ。

 一年間・十二ヶ月、十二話がもれなく掲載されている。

 第一話は鬼平こと長谷川平蔵宣以(のぶため)が火盗改めの長官に任じられる前の事件から説き起こされる。その事件の顛末を語りながら、新任の長官である長谷川平蔵のひととなりや生い立ちが語られていく。ここで読者に長谷川平蔵のイメージがつくられる。

 現在テレビや映画で長谷川平蔵と言えば、中村吉右衛門だが、その以前は吉右衛門の父親、先代の松本幸四郎(松本白鸚)であり、イメージはまさしく幸四郎なのだ(今の幸四郎は全く違う、この親子の染五郎は私は余り好きではない。父親は少し説教臭くなって鼻につくし、息子はにやけている)。

 物語が展開していくうちに懐かしい名前が登場する。佐嶋与力、うさ忠こと木村忠吾、小房の粂八、相模の彦十などだ。巻を追うごとに次々に増えていくのが楽しみだ。私にとってこれは池波正太郎ワールドが現実に存在しているのであって、その中で人々が関わり合い、傷つけ合ったり助け合ったりしているのだ。シリーズものを楽しむと云う事、そして繰り返すのに足りるほどの名作をたびたび読んでその世界の細部が付け加えられていくのは無上の喜びなのだ。

世界韓流学会

 このほど韓流現象について研究を行う世界韓流学会が正式に発足した。初代会長の高麗大学の学長は「韓流について学問的に検証し、産業としての可能性を示し、さらに世界の人々が韓流で一つになる道(!)を模索する必要がある」と述べた。

 韓流の世界史的意味について国際学術大会も開かれた。カトリック大学韓流大学院の教授は「K-POPを初めて聞いた時、朝鮮戦争直の後に聞いたエルビス・プレスリーやフランク・シナトラなどのアメリカ音楽を思い出した。それは苦難の時に心をいやしてくれたが、今はK-POPがその役割を果たしている」と述べた。

 冗談かと思ったらどうも本気らしい。

 世界韓流学会は今後、韓流について様々な学術会議を行う予定で、2014年には英文の学術誌を発行するという。

 韓流はブームである。ブームは必ず去る。研究するならブームが去ってからその意味を考えた方がいいのではないか。ブームの最中に論じても「学術的」なものにはならないと思う。

 それにしてもプレスリーやシナトラはK-POPと並べられて苦笑しているだろう。

 韓国はお祭り騒ぎに浮かれているが、お祭りが終わった後のことをそろそろ研究した方がいいのではないだろうか。ピークにいるときには果てしなく登り詰めていくように感じるものだ。日本も「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などともてはやされて浮かれていたものだ。

2013年1月29日 (火)

映画「荒れ狂う河」1960年アメリカ映画

 監督エリア・カザン、出演モンゴメリー・クリフト、リー・レミック、ジョー・ヴァン・フリート。ちょっと古い映画を見た。この映画は、日本では劇場公開していない。

 1930年代、アメリカは洪水対策のためもあり、また景気浮揚を狙ったニューディール政策により、多くのダム建設を進めていた。この映画は完成間近のテムズ川にかかるダムに水没予定の地域住民の立ち退きの話である。どうしても立ち退かない老女を説得するために派遣されたのが、チャック・グラバー(モンゴメリー・クリフト)で、この交渉に当たるのは三人目であり、もう猶予はない状態になっている。

 しかし老女エラ(ジョー・ヴァン・フリート)は頑として交渉に応じようとしない。その交渉の過程でチャックはエラの孫娘で子持ちの未亡人キャロル(リー・レミック)とただならぬ関係に陥ってしまう。

 現地は南部の因習の残る地域で、黒人差別も露骨であり、分け隔てなくつきあい、仕事も与えるチャックは地元の人々から反感を買う。やがて嫌がらせはエスカレートし始める。また会社からは立ち退きを急ぐように催促が入る。しかしチャックは今はエラを尊敬もしており、強硬手段を執る気はない。

 ついにチャックの思惑とは別に強制執行が実施され、エラは立ち退きを余儀なくされる。仕事が終わればチャックは去らなければならない。二人の中はどうなるか。それは見てのお楽しみ。

 立ち退きにまつわるドラマは一人一人にあるはずである。そのひとつを一つの物語として丁寧に描いた映画で、今ではこのような映画が作られることはないだろう。真実は細部にある。そして神は細部に宿る。

興梠一郎「中国 目覚めた民衆」(NHK出版新書)

 著者は神田外語大学の教授で専攻は現代中国論。外務省の専門調査員、分析員を歴任している中国情報通。「中国激流」(岩波新書)など何冊かこの人の本を読んだ。

 今中国では群体性事件(中国の集団による抗議行動)は年間で20万件を超えるとみられていれる。公的メディアの新華社の発表ですら100人以上の群体性事件が年間800件以上発生していることを認めている。参加した者は20万人を超えているという。多くが体制側の横暴、特に土地を知り上げられた上に農民や市民に渡されるべき金が不当に奪われていることへの抗議活動である。

 この本では様々な抗議行動についてのレポートが詳細に語られている。烏坎村(うかんむら)の事件など、表面的なことしか知らなかったが、その背景や顛末は小説の世界のようである。世の中には理不尽なことがあるものだ、と承知したつもりでいてもここで上げられているような事実が横行していては当然身の危険を顧みずに抗議行動に出ざるを得ないことがよく分かる。しかも勇気ある人の多くは悲劇的な末路に終わることが多いのだ。だから烏坎村のようなレアな結果になったものがセンセーショナルに取り上げられるのだ。これもほとぼりが冷めた後にどのような仕打ちが待っているか、10年後くらいまで見ないと分からない。

 中国は習近平による新体制となり、腐敗の撲滅を達成目標の一つに掲げている。このような民衆の抗議行動が、体制側の腐敗に対する不満によるものであり、体制自体を危うくするものであることを承知しているからこそのスローガンなのだ。

 ジョン・アクトンと云うイギリスの思想家で政治家の有名な言葉「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗する」を思い出した。

 中国共産党が絶対的権力を持っていることは紛れもない事実である。そしてアクトンの言葉通り、絶対的権力であるが故に腐敗が止まるところを知らないのである。

 この本を読んでいると、腐敗がますますエスカレートしていること、そして集団による抗議行動が急増していることが分かる。つまり今の中国の共産党独裁体制が末期的症状にあること、過去の王朝の末期に酷似しているのである。

 中国は多分必死で弥縫策をとるであろうから、ジャスミン革命のような事態は簡単に来ないかも知れない。しかしほとんどいつそのような事態が起きてもおかしくないほど内部の腐敗が進行していることも間違いないようだ。

 薄煕来が汚職で断罪された。そして汚職の摘発を受けて多くの権力者が極刑を受けている。汚職が正されつつあるのだろうか。決してそうではない、と著者は言う。これらの断罪はほとんど権力闘争の結果であり、告発した側も全く同じ穴の狢なのである。あの国民に人気があった温家宝すら巨額の海外蓄財を暴露されている。そして腐敗撲滅を唱う習近平が権力を利して一族が蓄財を行っていることも公然たる事実なのだ。

 今、中国では文化大革命も天安門事件も知らない(情報が遮断されているので知らない)若者がほとんどとなっている。だから今の体制がいざというときどれほど恐ろしいのか理解出来ていない。彼等はネットで呼びかけ合い、反体制行動にも気軽に動くだろう。そのとき天安門事件のように悲劇が起きるか、体制に変革が促されるか、予測がつかない。

 最後に著者は日中関係の改善についての指針を書いているが、残念ながらやや説得力に欠ける。しかしこの本に書かれた詳細な情報は間違いなく今後中国のニュースを見る時の参考になる。

ばね指

 本日は整形外科の診察予約日。肩痛は相変わらずだが、その痛みはやや軽減している。そしてしびれもやや改善してきたのだが、本来の状態にはほど遠い。ただ、医師は可動範囲が少しずつ広くなっているのでこのまま薬を続けましょうという。ところで最近一月くらいの問題は左手の小指の異常だ。

 以前はしびれていただけだったのが、関節がおかしくなってきて指を曲げるとそのまま戻りにくくなってしまい、力も入らないために左手に持っているものを取り落とすことが再々となっている。医師がいろいろいじくった上で告げたのは「ばね指」という診断結果だった。

 簡単なメカニズムや症状が書かれたパンフレットをもらった。指を曲げ伸ばしする腱がある。そしてその屈筋腱を包むようにして指の骨と繋いでいるのが靱帯性腱鞘という場所で、ここの異常が進行した時に起こるのがばね指だという。更年期の女性に起こることが多いが、糖尿病患者にもしばしば見られるのだそうだ。

 治療法はステロイド注射をするか、その靱帯性腱鞘の一部を切離する手術を行うしかない。医師の見立てでは私の症状は手術するしかないだろう、と云う。そもそも注射はあまり効きません、一ヶ月様子を見て決めましょうとのこと。

 何たいした手術ではありません、簡単です、とおっしゃるが、手術を受けるのは私で、あんたではない。

 とにかくあまり指を使わないことが一番だ、と云うことだが、そもそも普段小指なんかあまり使わない。どうすりゃいいんだ。まあ治るのなら手術を覚悟するしかないか・・・

招待

 村山元首相と加藤紘一日中友好会長が中国に招待されて訪問した。鳩山元首相、山口公明党代表に続く日本の要人訪問である。中国はこうして朝貢外交を日本にさせて世界にアピールしようとしている。

 もともと村山富市という人は社会党の人だから日本よりも中国の側に立つ思想の持ち主だ。社会党は、人権尊重という看板を掲げながら、中国や北朝鮮の人権無視の行動を見て見ぬふりをし、あまつさえそんなものはでっち上げだ、と強弁さえした(朝日新聞もそれを後押ししていた)。そして加藤紘一という人も外務省のチャイナスクール出身だから同じような思考の人だ。特に加藤紘一と云うひとは官房長官時代に韓国の慰安婦問題で事実確認もしないうちから謝罪を行って、今日の最悪の日韓関係を作り出した人として忘れられない。また、南京事件についてもいち早く大虐殺があったと認める発言をして中国に喜ばれた人だ。数多くの人が、戦後韓国や中国に対して築き上げてきたことを善意のつもりで大きく損なった人である。彼の言い分は「相手がそう云うのだからそういう事実があったのでしょう」と云うものだった。今日の韓国や中国の反日の根拠を与えた人として記憶に残る人なのだ。

 このような人たちを招待することの意図が何処にあるのかは自ずから明らかなことである。

 中国は古来、中華思想のもとに下位の国に朝貢させることで自らを誇示してきた。相手との関係修復を唱えるなら自らも相手を訪問する、などという気は今のところないようだ。安倍総理は山口代表を介して、中国を訪問する旨の親書を習近平に送ったようだ。習近平は経費節減のため、不要な海外訪問は控える、と云っているとも言う。向こうから来ることは当面ないだろう。

 そう言えば中国側からは軍艦みたいな海洋監視船が度々日本領海を訪問してくれている。最近は空からも領空を訪問し始めた。日本の朝貢に対する返礼のつもりなのかも知れない。

2013年1月28日 (月)

映画「コンテイジョン」2011年アメリカ映画

 監督スティーヴン・ソダーバーグ、出演マリオン・コティアール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グィネス・パルトロウ、ケイト・ウィンスレット。

 コンテイジョン・Contagionは感染、とか伝染病、と云う意味だ。

 未知の感染性の疾患で人が次々に発病し、高い致死率で死亡していく。最も初期に発病した何人かのうちの一人がベス・エンホフ(グウィネス・パルトロー)である。彼女はキャリア・ウーマンで、香港出張から帰ったところであった。彼女は風邪のような症状から突然けいれんを起こし、救急車で夫のミッチ・エンホフ(マット・デイモン)にともなわれて病院に担ぎ込まれるのだが、手当の甲斐もなく息を引き取る。茫然自失で自宅に帰ったミッチが見たものは変わり果てた息子の姿だった。息子も感染し、留守を頼んでいたベビーシッターが手を施す間もなく母親と同じように死んでしまったのだ。

 そして東京で、シカゴで、もちろん香港で同様の患者が出始める。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は必死で原因となるウィルスの解析を進めるとともに、その培養を試みる。培養されたウィルスに対して有効なワクチンを作り出さなければならない。

 みんなが必死でそれぞれの役割で奮闘する中、これは製薬会社の仕組んだ陰謀だと唱えてCDCを糾弾する男(ジュード・ロウ)が現れる。彼は執拗にCDCの職員にまとわりつき、ネットで特効薬を推奨し、ついにはマスコミも彼を取り上げる事態となる。

 ベス・エンホフの香港での足取りを追求していくうちに原因に近い場所が特定されていく。あるホテルのカジノ場の監視カメラに残された映像を追ううちに初期の感染者が全てその中に収まっていることが分かるのだ。

 ウィルスを培養しようとすると検体が全て死滅するため、遅々として研究は進まなかったが、ついにある検体を元に培養が成功する。そしてワクチンをつくるための試行錯誤が開始された。

 劇的な話なのだが、ソダーバーグ監督は淡々とした話の進め方に徹している。それなのに全くだれることがなく息詰まる思いで見続けられるのはこの監督の力量があってのことだろう。

 もちろん甚大な死者は出るもののついにはワクチンも完成するのだが、それが生産されて接種されるところまでのタイムラグとその優先順位についても丁寧に描かれ、一層リアリティを高めている。

 ラストにこのウィルスがなぜ発生したのかがさりげなく示されている。

 狂信的な男を演じたジュード・ロウが不気味だ。現実にこのような男はそこら中にいる。陰謀説ばかりに偏った情報に接するとあんな風になったり、それに惑わされる人間になってしまう。こころしよう。

電子納税

 市役所から納税案内のメールが来ていたので案内に従って確定申告を行った。年金の通知や生命保険、国民健康保険税などの通知を元にさくさくと納税のフォーマットに打ち込んでいった。そしてカードリーダーに住基カードを差し込んで、送信しようとしたら・・・暗証番号が違う、と云う。おかしい、何度か打ち込みなおしたらアウトになってしまった。カードそのものが読み取り不可になってしまったのだ。

 仕方がないので市役所に行ってカードのロックを外して貰い、暗証番号を入れ直した。昨年も一昨年も問題なかったのにどうしたことだろう。ボケたのか。

 とって返して再度試してみると・・・さいわい今度は全く問題なく送信出来た。よかった。よかった。これで今年の納税は終了、わずかな納税額のうちから還付がある。うれしいな。

本当に便利だ。

自制が出来ずに真似をする

 ワニは冬眠するらしい。冬眠している時はもちろん動かない。

 中国深圳市の自然公園のワニも冬になると冬眠する。観光客の中には生きているのかどうか確かめるためにペットボトルを投げたり、石を投げつけるものもいる。それを見ると他の観光客も真似をして一斉に石を投げつけるのだという。冬眠中のワニは急には動けない、哀れそのままお陀仏になることもある。こうして既に数匹のワニが死んだ。

 観光客の中にはゴミを投げつけたり、清掃員の使う竹の棒を持ち出してワニを突っつくものもいるのだそうだ。誰かがゴミを投げると、他の観客も次から次にゴミを投げるので、園の中は掃除してもすぐゴミだらけになってしまうのだという。園側がいくら注意しても殆ど効果がないそうだ。

 園側は観光客に生き物に対する思いやりの心を持って欲しい、ものは投げないで欲しい、と呼びかけている。

 私の持論は、中国人は子どもだ、と云うものだ。自制が出来ず、しかもすぐ真似をする。まわりの迷惑など斟酌しない。傍若無人で大声でわめく。まるで幼稚園児の集団だ。誰かがワニに石を投げれば一斉に石も投げるだろう。

 だから中国は共産党独裁で管理しなければならないのだ、と中国政府が言う声が聞こえそうだが、一面では正しいのかも知れない。

 だが親が手取り足取りしすぎると自己管理の出来ないわがままな子どもが出来るのも事実だ。

高感度センサーでセキュリティー

 北京の故宮博物館のセキュリティーが公開された。1000箇所以上に監視カメラが設置され、4000箇所以上の防火装置、10000箇所近いセンサーによる通報装置が備え付けられている。既に11月から稼働を始めているという。

 セキュリティー管理室では60個以上のモニターで映像が常時映し出されている。公開取材中にも猫の侵入に対してアラームが鳴り、その性能を証明していたという。これで欧米の一流博物館に引けをとらない設備が整った、と博物館は胸を張っているそうだ。

 しかし猫の侵入でアラームが鳴るくらいだと誤作動のような事態も多々ありそうだ。センサーの感度はコントロール出来るらしいが、たぶん誤作動の煩わしさにセンサーを切っておくような監視員もいるに違いない。過ぎたるは及ばざる如しだ。

 故宮博物館では展示物や収蔵物が失われる件数が甚だしいことは昨年来報告してきた。これで少しはそのような事態は改善するだろうか。

 どうもそのような紛失事件は、猫ではなくてネズミのなせる技であろうと見られている。それも頭の黒いネズミ、故宮博物館の警備員たちや博物館員が破損したり、持ち出したりしているのだと見られている。

 いくらセキュリティーを強化してもセンサーにかからないネズミの対策をとらないと事態は改善されないだろう。

2013年1月27日 (日)

ミャンマーの銅山

 少し前のニュースだが、ミャンマーの銅山の開発を任された中国企業に対して、地元住民が環境汚染、立ち退き補償などに不満を持って大規模な抗議行動を行っているという。このためこの銅山の開発を行っている中国企業は現在作業が中断しているという。

 企業側は「抗議行動は、地元住民の立ち退き補償が不満で始まったが、外部の政治勢力の介入により、政治的事件に発展して待った」と事態に対して不満を表明している。

 中国企業はそこが中国国内ではないことを失念しているようだ。

 中国国内であれば、このような場合、補償などは二束三文で強引に立ち退きを強行し、環境問題などは無視して作業を進めていただろう。なぜこんなに抗議行動が起こるのか理解出来ないでいるのがこの中国企業側のコメントから分かる。無理が通らないと最後は政治的な妨害工作として片付けようとする。中国国内なら反体制活動に対処する、と云う名目で弾圧が行われるはずなのだ。

 中国の常識は海外では通用しないのだ。

私立探偵

 中国では官僚の汚職が横行しているが、高官の汚職や腐敗が相次いで暴露されて話題を呼んでいる。盗撮された写真や動画がネットに曝されてその地位を失うものも多い。これらに活躍しているのが私立探偵たちだ。

 中国では習近平体制になって汚職や腐敗を撲滅することを国家の目標の一つに挙げており、国民はこのような汚職の暴露に喝采を送っていた。

 ところが当局は私立探偵を一斉検挙し始めた。官製メディアの発表では1152人が検挙されたとしているが、香港の人権団体の調べでは2500人以上の私立探偵が拘束されたようだとしている。

 検挙の理由は個人情報の違法取得や売買である。そもそもが中国では私立探偵という職業は違法だが、民間の経済問題や家庭争議に関わる案件に限り黙認されてきた。

 これは国民の盛り上がりが反体制への火種になりかねない、と懸念して、火消しをもくろむものなのだろう。

 民主化を求めて逮捕された人たちや、不当な地方の役人を告発する村の人たちの弁護を引き受けた弁護士たちが、国家反逆罪に問われてつぎつぎに逮捕されて凄まじい拷問を受けているとも言う。中国の現実は海外で見ているよりも独裁主義に振れているようだ。

目標をクリア

 中国は2012年、汚染物質の排出量削減を火力発電所、製鉄所、セメント工場、製紙工場、汚水処理場、家畜や家禽の農場、自動車の排ガス整備などを対象に、1276のプロジェクトで強力に実施してきた。

 その結果、主要大気汚染物質の二酸化硫黄、アンモニア性窒素、窒素酸化物、CODなどの排出総量を、前年比2%削減することに成功した、と環境保護部長が誇らしげに発表した。

 さらに2013年はCODと二酸化硫黄の排出量を2%、アンモニア性窒素2.5%、窒素酸化物を3%削減させることを目標にするのだという。

 中国は目標を立てると必ず達成する。2012年も達成したのだから、2013年も必ず達成するだろう、現実とは無関係に。

 今、少しずつ読んでいる「大躍進」という本でも、戦後、ソビエトを真似て集団農法を推し進めた結果、農産物の収量が飛躍的に増加し、海外に輸出したり援助物質として大量に供出されたことが記されている。そのとき、農家には食べるものがなく、想像を絶する餓死者が出ていた。
 農産物の収量目標の水増しを重ねて空想的なものに設定し、しかもそれ以上に成果が上がったと報告し続けた結果である。水増しをした役人たちが悪いのは事実だが、彼等も成果を上げたという報告をしないと粛正される危険にさらされていた。だから数字がおかしいとして現実を直言した勇気ある人々は悉く反逆者として処罰され、命を失ったものも多い。中国人にはその記憶が刷り込まれているから、目標は高く掲げ、成果は必ず達成しなければ身を守れない、と知っているのだ。

 中国の共産党体制というのはそういう体制である。だから統計数字は創作されたものであることがほとんどであり、中国人は本音ではそんなものは信じられないことをよく知っている。

2013年1月26日 (土)

映画「第七鉱区」2011年韓国映画

 監督キム・ジフン、出演ハ・ジウォン、アン・ソギ、オ・ジホ。

 済州島の沖合、海底石油ボーリング基地・第七鉱区では石油の探査試掘が繰り返されていたが成果が得られずにいた。石油が出ると信じて掘削の継続を主張するヘジュン(ハ・ジォン)だったが、慎重派の基地の隊長は本社と撤退を決めてしまう。撤収のために乗り込んできたのはヘジュンの叔父でこの鉱区の以前の隊長アン・ジョンマンだった。

 意外なことにアン・ジョンマンは、ヘジュンの掘削継続の願いを受け、基地の撤収の撤回を本社から取り付ける。ところが作業再会早々ヘジュンと新米作業員の二人が掘削機の点検のために潜水作業中に事故が起こり、新米作業員が命を失う。さらに海洋生物の生態研究員のヒョンジュンが高所から転落して死ぬ。ヒョンジュンに日頃から言い寄っていて、その事故の前にも二人でいるところを目撃されたチスンに疑いがかかるのだが、医師のムンヒョンはヒョンジュンの死に不審を覚える。

 そのムンヒョンが何ものかに襲われ、ヒョンジュンの死体とともに消える。みなはチスンを疑い、彼を拘束している倉庫に向かうのだが、そこでみたものはおぞましい怪物であった。彼等は必死に怪物から逃げ、体勢を立て直して戦いに挑む。それからは戦いがこれでもか、と繰り返される。

 前半が鉱区員たちの人間関係などが丁寧に(ちょっと長すぎる)描かれているのだが、後半は延々と怪物との戦いが続く。なぜこんな怪物が存在するのかもその中で説明されるのだが、そんな理窟はとってつけたようなもので、監督は戦いそのものを描くことが楽しくてたまらないようだ。ほっとしてからまた怪物が現れるというお約束通りの展開がある。

平岩弓枝「聖徳太子の密使」(新潮社)

 こんな本が出版されていたとは知らなかった。2009年刊行の本である。平岩弓枝には平岩版の「西遊記」があるが、子どもが読んでも楽しいファンタジーになっていた。この本は題名から想像するものとは全く違って、その「西遊記」のテイストのする、冒険ファンタジーである。

 厩戸皇子(聖徳太子)は天に赤気(せっき)の現象を見る。吉凶どちらとも判断出来ず、自らの持つ知識の限界を覚る。彼の知識は日本だけではなく朝鮮半島や隋、唐から仕入れたものも含まれるのだが、さらに遠い国の情報が欲しいと思う。そして愛娘である、珠光王女(たまひかりのひめみこ)に真の智慧を求める密命を与える。珠光王女は珠光王子として男装して異国への旅に出る。従うのは三匹の愛猫、北斗、スバル、オリオン、それに愛馬・青龍のみ。

 この三匹の猫と愛馬は人語を解し、王女とは会話も出来る。また、神の力でときに人間に変身することも出来る。彼等は難波津から船(天の鳥船)に乗り、瀬戸内海を抜け、九州東岸を南下、琉球からさらに南下しながら様々な事件に遭遇し、新しい智識を獲得していく。

 この物語はその数々の冒険談である。実は珠光王女の母は海神の娘である。そして青龍は、姿は馬だが実は龍である。

 と云うわけで行く先々で怪異な出来事化け物などに出会い、危難に遭うが力を合わせて乗り切っていくという楽しい話なのだ。

 楽しいのは好いのだけれど平岩弓枝様、新御宿かわせみの続編を早く書いてください。待ち遠しくてたまりません。

メルケル首相

 ドイツのメルケル首相がスイスのダボスで安倍首相の経済政策を批判した。通貨を意図的に円安にしようとする経済政策は、各国がこぞってその手法をとりかねない危険な経済政策だ、と云うのだ。

 ちょっと聞くと、まともなことを言っているように聞こえるが、これは言いがかりだ。既に各国は意図的な自国通貨の安値誘導を行ってきた中で、日本だけは政府と日銀の無能無策により、円高のまま取り残された。どうせこのまま何もしないとみて、投資家は日本円を買い続けて利益を上げ、日本は富を失ってきた。今はただ行きすぎた円高が少し修正されたに過ぎない。それに日本が目指しているのは建前上デフレの脱却である。

 案の定ウォン安でわが世の春を謳歌してきた韓国はわずかなウォン高で動揺している。

 最も露骨なのが中国で、本来あるべき元のレートを異常に低く抑え続けてきた。メルケル首相が非難すべきは中国に対してであろう。どう云う訳かオバマもメルケルも中国に対して何も言おうとしない。

 ところでEUの通貨・ユーロは欧州危機を背景に当然レートが安い状態である。しかしドイツの経済実勢だけ見れば(もしマルクなら円以上にずいぶん高いはずのところ)ドイツにとって異常に安い。つまりドイツは巧まずして自国の通貨が安いことによる恩恵をどこよりも受けているのだ。ドイツ企業の輸出競争力は韓国以上に有利に推移してきた。だから円安になって日本の輸出競争力が上がることは有難くないことに違いない。

 メルケル首相が言っているのはそういうことである(企業に言わされているという観測もあるらしいが、知らない)。

無表情

 公明党の山口代表が、ようやく習近平主席と面談を果たした。山口代表がにこやかに手を差し出したのに対してぎこちなくそれに応え、ほほえみ返そうとして思い直したように無表情になったのにお気づきになったであろうか。

 この人、思ったより人が好いのかも知れない。無表情に冷たさが感じられず、どうして好いのか戸惑っているように見える。あの紳士然とした胡錦濤が、無表情になった時は恐ろしいほど冷たい顔になるのとはずいぶん違う。もし習近平が意識してあのとまどうような無表情をして見せたのならすごい役者だ。

 それよりも感じたのは、国家主席ですら儀礼的な笑顔をすることが許されない中国という国の恐ろしさだ。周恩来も鄧小平も、笑顔も不快感も自由自在であり、礼儀を失するようなみっともないことはしなかった。それが仮にも迎えた客に対してあのような顔をせざるを得ないという現実、にこやかに笑ったら何を言われるか分からないと恐怖する事実にこちらは恐怖を感じる。

ハムリン?ヤマリン

 「ひろ」さん、コメントをありがとうございます。葉室麟をハムリンと呼ぶとは知りませんでした。世界は理不尽なことで出来ていて、正しいものが必ず勝つとは限りませんし、ときに何が正義かも明らかではありません。その中で葉室麟の描く物語の中の主人公たちのような生き方は我々にどう生きたら良いかの指針になるような気がします。

 葉室麟という名前は手書きしたら画数が多いのでハムリンと縮めるのも分かりますが、今はパソコンが変換してくれるので何ほどのこともなく、「はむろりん」が「ハムリン」になったところで何ほどの省略にもなっていないような気がします。愛称と云う事でしょうか。

 ところでハムリンというのを聞いて「ヤマリン」こと山本麟一(やまもとりんいち)のことを思い出しました。時代劇映画やヤクザ映画を見たことのある人なら誰もが知っている東映の悪役俳優です。私はこれを読み違えていて「やまもときいち」だとばかり思っていました。麒麟の麟を麒に見ていたのです。だって麟一なんてヘンな名前ですから。でも愛称をヤマリンというのだと知って自分の間違いに気が付きました。

 誰がどう見ても悪役の顔ですが、緋牡丹博徒でも初期の頃はお竜さんの弟分の役をやったり、高倉健や鶴田浩二の映画でも、弟分として悲しい切られ役をやっていました。俳優仲間からは皆に愛されていたようで、特に高倉健は彼を信頼していたと言います。結構コミカルな役も旨くて如何にも楽しそうに演じていました。「雲霧仁左衛門」での強烈な演技も忘れられません。既に物故して久しいですが久方ぶりに思い出しました。

 話があらぬ方へ跳びましたが、麟という字のつながりと云う事で。

2013年1月25日 (金)

雪を見に行く

今年は雪が多いようだ。朝、急に雪を見たくなったので白川郷まで行くことにした。普通なら東海北陸道で一気に行くのだが、途中の景色を楽しむために東海北陸道は美濃まで。美濃で降りて地道を行く。

Dsc_0052国道156号線に並行して長良川鉄道が走っている。これは一両編成。二両編成もある。まだ郡上美並の手前なので雪は降っていない。気温はマイナス1℃。

Dsc_0053郡上に近づくにつれてみぞれになった。山は雪雲に蔽われてうっすらしか見えない。気温はマイナス2℃。

Dsc_0059郡上を過ぎたら本格的な雪になった。郡上白鳥を過ぎると路面も雪でまっ白になった。外気温マイナス4℃。ここから荘川までは長良川の源流への峠道、急勾配の急カーブ続き。久しぶりの雪道なので心を引き締める。分水嶺のあるひるがの高原は50センチ以上の積雪の中にあり、分水嶺公園には車を停めることが出来ず。蛭ヶ野からは荘川へ峠を下る。そして荘川から御母衣湖の脇を北上する。狭いトンネルの連続する難所だ。御母衣湖はまっ白でどこが水だか分からない。路面はトラックの圧雪でツルツル。昔ここでスリップしてガードレールにぶつかり、ライトをつぶしたことがある。白川郷まではもう近い。

Dsc_0067駐車場から白川郷内に入る時に渡る橋。寒い。マイナス5℃。

Dsc_0074雪の中の白川郷。高台から見おろすロケーションの良いところがあるのだが、駐車場が除雪中ではいれなかった。とにかく寒いし手が冷たい(手袋を忘れた。どうせカメラを持っているから嵌めていられないけれど)。

Dsc_0070ここでにごり酒を買った。遅い昼飯を食べた後で、駐車場へ戻ったところへ兄貴分の人から電話があった。白川郷へ来ている、と云ったらいっしょに行きたかったのに・・・とうらやましがられた。兄貴分の人は和歌山の人だからあまり大雪は知らないのだ。

Dsc_0081おでんを今煮ている。出来たらこれで一杯やるのだ。うふふ、よだれが出そうである。やはり出かけるのは楽しい。

デフレと売春

 韓国がウォン高になり、にわかにデフレ状況になっているというニュースを見た。輸出が減少し、滞貨を投げ売りする事態も起こっているという。日本が円高で起こっていたことを今経験しているようだ。ただこのような事態は始まって一、二ヶ月のことなので、今後どうなるかは分からない。

 韓国・釜山では日本人観光客が昨年九月から40%以上減少したという。また済州島でも昨年下半期から同様に日本人観光客が激減しているという。理由は円安の影響だと言うが、それは12月に入ってからのことで、韓国の反日行動に嫌気が差していること、不安を感じていることがそもそもの理由であろう。その後に円安(ウォン高)になり、韓国旅行の魅力が半減したことも確かだろう。韓国にとっては李明博大統領様々だろう。嫌いな日本人が来なくなったのだから。

 どうせ中国から大量に旅行客を受け入れているから良いではないか。ただ、リップサービスかも知れないが、私が一昨年済州島に行った時のガイドによれば、中国の観光客は日本人と違ってマナーも悪く現地では嫌われているという。金のためだ、仕方がないではないか。早く行っておいて良かった。

 韓国の主要産業(!)に売春業がある。韓国メディアによると現在売春に従事している女性の数はなんと27万人だという。女性人口の1%を超えると言うが、売春対象にならない女性(年寄りと子ども)もいるから驚くべき数字である。専門家によればこの数字は正しくないという。マスコミが少しオーバーに伝えているというのかと思ったら、実際はこれよりも多いはずだという。もっとびっくりだ。

 多文化の街として知られる韓国の観光スポット・京畿道安山市の多文化通りが売春街に変貌した、と韓国メディアが伝えた。安山市には世界66カ国4万4000人の外国人が住み、人口の65%が外国人である。そこでこの地区を多文化の街として外国人向けの観光スポットにするような政策を進めてきた。ところがこの多文化通りはいつの間にか歓楽街に変貌し、売春街として韓国人が殺到する名高い場所になったのだという。

 これらは韓国メディアが伝えていることである。あえて論評を差し控えたい。

古森義久「『無法』中国との戦い方」(小学館101新書)

 著者は産経新聞のワシントン駐在編集特別委員。中国に駐在したこともあり、世界情勢に詳しい。この本では、最近強硬姿勢をエスカレートさせている中国に対してどう対処すべきか、これをアメリカの対中国情報分析とその最新の戦略について、アメリカの関係者にインタビューをしてまとめたものである。

 やはりアメリカの情報力、情報量は日本をはるかに凌駕しているようだし、中国についての専門家が沢山いるのでその分析力も優れているようだ。日本は中国とは隣国でありながらあまりにも中国の専門家が少ないのだという。だから将来は知らず、今はアメリカのこのような中国についての分析は有用である。

 もちろんそのような研究を行っている組織は数多くあるので中国に対する評価は千差万別である。しかしながら日本のような幻想にもとづいた甘っちょろいものはない。

 マスコミやテレビのコメンテーターに刷り込まれた中国像を補正して正しく中国を把握し直し、日本の将来を過たないためにこの本を読んで参考にすることをおすすめする。

 世界の現実は冷厳なものなのである。

*これを読んでいたら昨晩のBSフジプライムニュースに著者が登場して、司会の反町理、八木亜希子と二時間中国情報を語っていた。日本にちょうど帰っているようだ。

2013年1月24日 (木)

映画「顔のないスパイ」2011年アメリカ映画

 監督マイケル・ブラント、出演リチャード・ギア、トファー・グレイス、マーティン・シーン。

 ロシアとの不正な関係が疑われている議員が、FBIの監視下で暗殺される。その暗殺方法が、伝説のロシアのスパイのものと酷似しており、その暗殺者カシウスが再び現れたのではないか、と見なされ、既に引退しているが、過去このカシアスを執拗に追い続けていた元CIAのエージェント・ポール・シェファーソンに協力依頼が来る。また、このカシウスの研究を続けてきたFBIの若手捜査官ベン・ギアリー(トファー・グレイス)もチームに招集される。

 ベンが今回の議員暗殺の手口はカシウスのものに間違いないとの分析結果を発表するのだが、ポールは、あり得ない、と一蹴する。

 その根拠は何か。わずかな手がかりから事件の背景が明らかになるにつれて驚愕の事実が判明する。はたしてカシウスは実在するのかそれとも架空の存在なのか。さらなるどんでん返しがラストにある。そして映画は静かに終わる。

 リチャード・ギアもまだアクションが出来るようだ。チャーリー・シーンも久しぶりに見た。予想よりも面白い映画だった。無駄に長くないのがいい。

善意と誠意を示してきた?

 フィリピンの外相が、南シナ海の領有権を争っている中国を国際海洋条約に基づき、国際仲裁裁判所に提訴した。

 この地域を失うとフィリピンは領海の三分の一以上を失うことになる。しかし中国の武力恫喝に屈してフィリピン海軍が一時引いたために中国は一方的に領有を宣言している。これはアメリカがフィリピンから基地を引き揚げた際のどさくさに紛れて行った中国の一方的な行動なのだが、中国は例によってこの海域はそもそも中国領だったところであり、争う余地などない、と突っぱねている。

 そして例の中国外交部の洪磊報道官は「中国は最大限の善意と誠意を示してきたのにフィリピンは不当である」とフィリピンを非難した。このような仕打ちをして置いて善意と誠意を示した、と臆面もなく言ってのけるとは人としてよくなしえないことである(まさかフィリピンのバナナを一方的な言いがかりをつけて輸入禁止にしてフィリピンの農家を苦しめたことを中国語では善意と誠意を示す、というのではあるまいが)。

 尖閣に対して日本が中国に少しでも譲ったらどうなるか、これを見ても明らかなことである。話して分かるような相手ではないのだ。

映画「一命」2011年松竹映画

 監督・三池崇史、出演・市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、役所広司、青木崇高、竹中直人。

 時代劇映画の傑作、小林正樹監督、仲代達矢主演の映画「切腹」(昭和37年製作)のリメイクである。

 関ヶ原の役から三十年、戦国の気風は残しながらも実戦の経験のない武士が普通の世の中、幕府による改易が行われ、食い詰め浪人が巷にあふれていた。その頃ある浪人が、大名屋敷の門前で切腹を申し出る、と云う事件が起こる。食い詰めて生きていても詮がない、ついては潔く腹を切ろうと思うので軒先を借りたい、と申し出たのだ。それに対して、門前を血で汚すのも迷惑だと考えたその大名家では「武士らしい天晴れな心がけである」として歓対し、寸志を包んでその浪人を思いとどまらせた。

 これが噂になり、小遣い稼ぎのために切腹を申し出る浪人が相次いでいた。

 ある日彦根藩、井伊家の門前に津雲半四郎(市川海老蔵)という浪人が現れて切腹したい、と了解を求める。これを聞いた家老の斎藤勘解由
(役所広司)は津雲半四郎を座敷に上げ、直接津雲半四郎に対面して、二ヶ月ほど前に同じように申し入れをしてきた若い浪人(瑛太)があったことを話しだす。

 井伊藩は勇猛でなる藩であるとの自負がある。切腹をしたいならさせてやろう、と云うことになったのだ。そして悲惨な結末になったいきさつを詳しく語っていく。家老としては、これで津雲半四郎が思いとどまって引き下がればそれで良いとの考えであったのだが、案に相違して津雲半四郎は泰然として切腹する、と決意を変えようとしない。

 そしてその前に自分の話を聞いて欲しい、と今度は彼が話を始める。ここからが物語の山場なので見ていない人は映画で見て欲しい。

 導入部は映画「切腹」に匹敵する迫力なのだが、過剰な残酷シーンや食い詰め浪人の悲惨さ、若い浪人が何故狂言切腹を決意せざるを得なかったか、の説明などがくどすぎる。観客は馬鹿ではないし、想像力もあるから全部映像で見せなくても物語の意味を理解出来る。どうも三池崇史という監督のこの過剰さが私はちょっと苦手である。それでも人気があるのはその過剰さが分かりやすいから、と云うことなら何をか言わんやだが。

 市川海老蔵の迫力はすごい。この目力(めぢから)は群を抜いている。瑛太の追い詰められていく演技も素晴らしい。満島ひかりのはかなさも抜群。これだけの素晴らしい演技があるのだからあと20分くらい削ったならずっと素晴らしい映画になったのにちょっと残念。

 武家社会の欺瞞性と残酷さが物語のテーマだが、それについては良く伝わった。

葉室麟「蛍草」(双葉社)

 葉室麟の最新作。この本を読み終わって涙をこぼさない人がいるだろうか。悲しくてか、嬉しくてか、は読んで見てのお楽しみ。

 切腹した父の無念を母親から聞かされながら育った奈々は、十六歳の時に出自を隠して風早市之進という武家に女中奉公する。さいわい清廉潔白で人望のある主人であり、その妻女の佐知は奈々を妹のようにかわいがり、やさしく薫陶する。子ども達二人も明るく優しく、奈々はしあわせに勤めていた。

 好事、魔多し。その佐知が病魔に冒される。労咳であった。一時は快方に到ったかに見えたが、ある事件がきっかけで病は再び重くなり、ついに帰らぬ人となってしまう。その佐知に後事を託された奈々は必死で家内を切り盛りし、子どもを護るのだが、その頃藩内に内紛が起きようとしていた。

 不正を糺す側の若い侍達は市之進を担ぎ上げようとする。しかし確かな証拠のないままの行動は頓挫しかねない、と市之進はいさめるのだがついに若侍達は暴走する。ところが敵方はそれを強くとがめない。そこに大きな罠があった。

 奈々には何時の間にか頼るべき味方がたくさん出来ていた。その人達の交流はとてもほほえましい。奈々の人柄が、その一癖も二癖もある人々を優しい思いやりのある行動へと導くのだ。

 ついに敵の姦計により、市之進はとらわれの身となり、奈々と二人の子どもは屋敷を追い出されてしまう。彼等を助けたのはもちろんそのような人たちである。最大の敵は、実は奈々の父親の切腹の原因でもある男であるが、藩切っての使い手で、仇を伐ちたくても奈々にはすべがない。

 愛するもののために身を捨てて立ち向かうことの強さと美しさを奈々が示して見せた時、奇跡は起こるのだろうか。

 とにかくラストが泣けました。読後感のこんなにいい本には滅多に出会えるものではありません。心が洗われます。

歴史を創作する

 中国社会科学院近代史研究員が、中国の近代化は日本によって妨害された、と主張した。

 その主張によると、アヘン戦争から立ち直りつつあった中国は、西洋から遅れていることに気が付いて洋務運動などで近代化を図り、「洋務新政」「同光中興」などで国内の体制を変革しようとしたが、日本が日清戦争を仕掛けたので頓挫したのだという。

 この運動が頓挫したのは西太后によるもので、日本は中国の近代化に貢献しようとさえしていた。日清戦争はその後の出来事である。

 そのほかこの研究員は、たくさん歴史を創作した上で、今回の尖閣での日本の行動は中国を挑発して再び中国の近代化を阻むもくろみである、とまとめている。

 このような妄想にもとづく歴史創作を行う研究員が、中国の社会科学院を代表して意見を述べるところを見ると、中国も末期的症状を呈していると推察される。

 今に中国の大気汚染も、国を挙げての汚職も、貧富の差も、いや文化大革命や大躍進で数千万人が死んだのも、全て日本が悪い、と言い出すだろう。そんな理窟、創作に基づけば私でも簡単につけられる。人のせいにしているうちは何も改善されない。日本の隣に中国があることの不幸せと諦めるしかないようだ。

 中国もつまらない情報管制を敷くなら、国の恥になるようなこんな言説こそ取り締まるべきだと思う。このような、国におもねる提灯学者こそが国を誤らせてきたことを歴史で学ばなければならないのに。あっそうか、その歴史を研究している研究員が言っているのだった。

2013年1月23日 (水)

映画「プリースト」2011年アメリカ映画

 監督スコット・スチュアート、出演ポール・ベタニー、カール・アーバン、キャム・ギガンデット、マギー・Q。

 韓国の漫画が原作だそうである。パンパイヤがぞろぞろ出てくるホラーアクションというジャンルに入るのだが、ここで登場するバンパイヤは人間とは違う形状をしているのであまり恐怖感はない。こんなダークファンタジー風の映画、好きなんだなあ。

 人類とバンパイヤ族は太古の昔から戦いを繰り返し、ついに人類はバンパイヤに追い詰められる。そこへプリーストと呼ばれる、教会に選ばれた戦士達が、バンパイヤハンターとして超人的な戦闘能力と武器を与えられて逆襲に転ずることになる。物語はそのプリーストが役目を終え、パンパイヤ達はわずかな居留区に閉じ込められている世界から始まる。

 人類はほとんど閉鎖されたシティに暮らしているのだが、荒廃した周辺地域を新しく開墾しようとする人々がいる。その一家が襲われ、娘がさらわれる。プリーストの一人である主人公(ポール・ベタニー)はバンパイヤが居留地を出て襲撃をした、と睨んで捜索を申し出るのだが、シティを支配する教会は、既に戦いは終わっている、としてそれを許さない。掟を破り、独りプリーストは現地へ向かう。さらわれた娘とプリーストの関係が明らかにされるとともに、この娘をさらったものの正体が分かってくる。そしてパンパイヤ達の恐ろしい計画も明らかになる。再び迫る人類の危機をプリーストは救えるか・・・。

 ラストにプリーストは「戦いは始まったばかりだ」とつぶやく。

 はたして続編はつくられるのであろうか。

辞めたら良いではないか

 国家公務員と一般との報酬格差が是正されて引き下げられるのに習い、各県でも同様の決定が行われている。

 今問題になっているのは教職員や警察官の早期退職である。三月から施行されることが分かると12月から今月にかけて次々に退職をしているという。早期退職すると退職金が平均150万円ほど多くもらえるかららしい。

 このような人がいるために欠員が出来て困っている、などとニュースで報じているが、良いではないか。そもそも公務員の給料は結構高いから、三ヶ月早く退職すれば三ヶ月分の給料である百万円以上の月給を払わなくてすむから、差はわずかなことだ。
 
 そのわずかな金額の差を、おのれの仕事を全うする、と云うことと比べて、仕事を弊履の如く投げ捨てるわけだから、ろくでもない人間に決まっている。そんな人間は一日でも早く辞めた方が世のためである。

 馬鹿な県では、早期退職した人を再度臨時雇用して穴埋めした、などという。働きたい人が山ほど控えているのに何でそんな事をするのだろう。本当に馬鹿だ。

 教職員組合の人がテレビで「このような事態が生ずるのはシステムに不備があるからだ」などとたわけたことをほざいていた。

超巨大都市

 北京市統計局と国家統計局の調査総隊が、2012年末の北京の居住人口を発表した。その人口は2069万3000人で、前年よりも50万7000人の増加、その内で半年以上居住している流動人口は773万8000人。

 毎年3%前後の増加を続けてきたが、これでも人口の増加率は二年続けて鈍化しているのだという。増加の絶対数が同じなら相対的に増加率は低下するから、もちろん人口の増加が止まるというわけではない。

 いつも同じような事を云うのは恐縮だが、この調査結果がはたしてどこまで信じられるのか分からない。もしも当局がその居住を確認出来たものだけの数字であれば、補足されていないものがどれほどあるだろうか。この数字よりもだいぶ多いのではないかと思う。

 以前上海の人口が1500万人程度と言われていた時、現地で聞いたら、間違いなく2000万人を超えている、みんなそんな事は承知していることだ、と云われた。その程度の誤差は当たり前と思った方がいい。

 これだけの人口を呑みこみ、咀嚼しても北京は彼等を飢えさせずに養うことが出来ている(著しい貧富の差はあるのは別にして)。これは中国のパワーのなせるものであることは認めなければならないだろう。

 とはいえいくら北京の市域が広いと言っても、これだけの人口が集中すれば、交通渋滞や環境汚染は甚だしいものになるだろう。これは人為的な解決が可能なのだろうか。あらゆる手立てを尽くして改善することは可能だろう。しかしそのためにかけるコストは天文学的なものになるのではないか。そもそもここまでの人口集中は、既に限界を超えているのではないか。

 中国の大気汚染は大都市の住民の健康を蝕み始めた。北京は一月に立て続けに二回の激しい濃霧に蔽われた。二度起こったことはまた起こるだろう。そして頻度は増すに違いない。まさか当局は何年か先にこの健康被害によって人口淘汰が行われることを期待しているわけでもあるまい。

 北京市は、今後深刻な濃霧が発生した場合は一部自動車の運転停止を含む強制的な緊急措置をとる、と発表している。また周辺工場の排出する大気汚染物質に対して総量規制を行う、と云う。そして石炭依存を減少させるように取り組んでいく、と方策を述べている。

 中国が石炭依存からその外のエネルギーへの転換を図れば自動的に世界のエネルギー、特に原油などを貪り食らう事態となるであろう。日本への分け前が損なわれるかも知れない。代替エネルギーの確保、特にシェールガスやメタンハイドレードの実用化を急がなければならないだろう。そこにかける膨大に見えるコストは、それでも手遅れになった後で必要になるものよりははるかに少ないはずである。

 アメリカのメディアが、中国の大気汚染物質がはるばる太平洋を越えてカリフォルニアなどの西海岸に到達している、と伝えていた。飛来している有害物質は水銀、オゾン、硫黄酸化物、すす、砂塵などだという。これによって海産物が汚染され、呼吸器系の患者の増加、酸性雨などの被害が出ている。

 今や中国は世界に対して無視出来ない発信を行っている。いいことも悪いことも(いいことはあまりないが)。

神門善久「日本農業への正しい絶望法」

 悲憤慷慨の書である。日本の農業の再生が既に手遅れである、と云う絶望の思いを強く抱きながら、後世の人にこれまでに至った原因について何か書き残さなければならない、と云う思いで書かれている。

 農水省が悪い、JAが悪い、などという犯人捜しをしても何も改善されることにつながらない。JAなど今は何の力を持たず、罵声を浴びせる対象ではないのだという。日本人は多くの間違った認識を持っている。「有機栽培の農作物は美味しい」、「農業は成長産業だ」などとマスコミや「識者」はまことしやかに言うが、それは幻想であり、まやかしであることが徹底的に明らかにされている。

 養老孟司氏の対談集「本質を見抜く力-環境・食料・エネルギー」(PHP研究所)の中に納められている「日本農業、本当の問題」で、著者は日本の農業の惨状を語っていた。

 この本の帯でも養老孟司氏がこの本を推薦し「ちょっとでも食や農に興味がある人は読んでおいた方がいい」と言葉を寄せている。

 内容は・・・私の粗雑な能力では全ての文章を掲載しないと伝わらない。出来れば全ての日本人がこの本を読んで、日本の農業がどうであるべきか考えて欲しい。そしてそれは農業に限らず教育も社会もそして日本がどうであるべきか考え直すきっかけになる本だと信じる。

 これは瀕死の床にある日本農業について(そして日本そのもの)への真実のカルテである。

2013年1月22日 (火)

情報を流す

 韓国の東亜日報によれば、韓国・国家情報局がソウル市職員を脱北者の個人情報を北朝鮮に流した疑いで逮捕した。
 
  韓国には2万4600人の北朝鮮からの脱北者が在住しているが、その内少なくとも1万人以上の情報が流されたとみられる。

 個人情報が明らかにされれば北朝鮮に残っている家族がどのような仕打ちを受けるか心配である。しかもそれを楯に何か北朝鮮に都合の良いことを強要されないとも限らない。

 このような犯罪行為の悪質さは他のこととは比較にならないほど多くの人の不幸をもたらす。ところが逮捕されたこのソウル市職員も脱北者なのだという。このような犯罪行為を行った理由が利益供与だけではなく、彼の家族の安全と引き替えだとするとその悲劇に言葉がない。

 どんな大義名分があってもこのような国家の存続は国民の不幸であり、それに荷担する中国は正義ではない。

理想主義者はしばしば保守主義者である

 桜宮高校の入試について、教育委員会が今年の体育科の入試を中止して、普通科としての試験を行う、と発表した。ただし、試験日や試験科目については従来の体育科としての募集と全く同じに行うという。教育委員会の五人の委員のうち、委員長だけが「ただの看板の掛け替えに過ぎない」として反対したが、この案が決定され、橋下市長もこの決定を了解した。

 これをテレビで取り上げてコメンテーターに意見を聞いていた。意外なのはいわゆる教育評論家の尾木氏が今回はこれしか方法はないでしょうと云っていたことだ。この尾木氏、桜宮高校の事件について全面的に橋下氏の意見に賛同していた。多くの人が、桜宮高校の生徒がどうなる、生徒を、子どもを最優先に考えるべきで橋下市長は極論に過ぎる、と批判していたのに、である。

 もちろん教育委員会は世論の動向を見ながら、橋下氏への批判が強ければ現状維持で押し切ろうという姿勢を示していた。しかしどうもそのようなことでは収まらないとみるや、橋下氏に迎合する案を提示して見せたのだ。

 尾木氏の意見が正論だと思ったのは、彼が「この桜宮高校の部活動に体罰などの問題があることは以前から言われてきたことであり、既に別の部(バレー部)の顧問が処罰を受けていた。それらのことが繰り返し問題になっても先生達も父兄たちも見て見ぬふりをし続けてきた。学校ぐるみでこの体質を温存してきた責任がある。だから思い切った改革が必要なので、橋下市長の言っていることは極論などではなく、当然のことだ」と述べていたからである。

 繰り返し体罰という名の暴力を繰り返し、一人の生徒を追い詰めて自殺に追い込んだ、と云う深刻な事態を「生徒が優先」という言い方でその先生だけを処分して、現状を何ら変革しない、と云うのはいつもの日本の対処法である。そして第二、第三の同様な事件が起きてもその繰り返しに終わることだろう。

 現状に問題がある、と云う誰が見ても明らかな事実に関して、そんな極端なことをしたら生徒が可哀想、などと云って結局名目的な解決策しか行われずに終わる。こうして理想主義者は変革を先送りし、現状は維持される。

言動を慎め

 これは鳩山さんに対して発せられた言葉ではない。中国外務省報道官・洪磊氏がアメリカのクリントン国務長官に向けて発した言葉である。

 クリントン国務長官は「日本の沖縄県・尖閣諸島に対する中国の行動は、日本の施政権を損なおうとするもので、このような一方的な行為、行動に反対をする」と述べた。

 それに対して洪磊報道官は「強烈な不満と断固たる反対を表明」し、「責任ある態度で尖閣問題に対応し、言動を慎め」とアメリカに対して日中の問題に介入しないよう恫喝した。

 このクリントン国務長官も、間もなく交代する。オバマ大統領は鳩山元首相の功績で日本に対して不信感を持っているように見える。何せ「トラスト・ミー」と信義において最も重い言葉を吐いておいて裏切るという、人間としてあるまじきことを行い、アメリカ大統領を虚仮にしたのだ。

 安倍新首相はなるべく早くオバマ大統領と面談し、そのことを謝罪し、新たな関係を構築することを願わずにはいられない。

 クリントンさんご苦労様でした。養生してください。

勢古浩爾「自分に酔う人、酔わない人」(PHP新書)

 酒の酔いになぞらえて、人が自分に酔っている現代社会を痛罵する本だ。人は自分に酔わなければ生きていけない。だから著者はしらふの目で酔っている人々の姿を、その酔い方、酔いの程度に分けて語っているのだが、もちろん著者も自分の語る言葉に酔っている。

 とにかく文章が細切れで短い。決闘シーンを描く夢枕獏の文章みたいだ。短い文章の積み重ねはテンポが良くて読みやすいのだが、断定的な言い方になる。違和感を感じ出すと不快になる。さいわい語られる酔っぱらいたちに対しての痛烈な物言いが同感出来るものなので、それを乗り越えて読み進むことが出来た。

 この本は建設的なものではない。何かの提案が示されているわけでもない。この本を読んで、自分はしらふだ、と思ったり、そもそも下戸だ、と思ったら、かなりあなたは酩酊していると云う事だ。

 酔っ払いは酩酊すると必ず「俺は酔っていない」と云う。

 わたし?さあ。

ありがとう

 友よ、今日はつきあってくれてありがとう。毎回同じような話を繰り返しているのに聞いてくれてありがとう。一緒に酔っ払ってくれてありがとう。忙しいのにほんとうにありがとう。そしてパトリック・スウェジの名前を思い出させてくれてありがとう。今晩も本当に楽しい夜が過ごせました。お仕事がんばってね。

2013年1月21日 (月)

今晩の楽しみ、これからの楽しみ

 今晩は若い友だち(私にとって若いと云うこと)と二人で飲む。友人は仕事を持っているから当然飲み始めは少し遅くなる。今日の名古屋は晩から雨の予報である。天気はうっとうしいが、楽しみの方が大きいから待ち遠しい。

 ここしばらくは遠出をしていない。寒い季節であることも大きな理由なのだが、そのためにわざわざタイヤをスタッドレスに履き替えているのだ。もう一つの大きな理由は恥ずかしながら金銭的なことである。現金収入が厚生年金しかないから、わずかな蓄えが想定以上に減っていることに気が付いたのだ。計画では75才でなにがしか残れば良いという計算だったが、ちょっとオーバーペースのようである。だいたい65才からもらえるはずの年金がいくら出るのかさっぱり分からない。それに自家用車の走行距離も11万キロを超えている。二、三年のうちに買い換えなければならない。などと考え出すとちょっと出かけるのを控えようか、と云う気になる。

 じっとして本を読み、録りためた映画を見ているとほとんど金はかからない。金銭的には有難いのだがそれ以上にたまるものがあって自分を蝕んでくる。

 それを解消するにはまず人に会うこと、そして旅に出ることが私の復活法である。だから今晩はその第一歩。楽しみな所以である。

 そして二月の初めには毎年恒例の新酒の蔵開きがある。多くの友だちが集まってくるはずだ。そこで完全復活を行い、遠出の旅に出かけることとしよう。今年は島へ出かける旅をテーマに考えている。

物忘れ

 「田村隆一郎のブログ」というブログを久方ぶりに拝見したら、本屋で購入しようとした本をたまたま買わずに帰ったら、家にその本があった、と云う文章に出会った。

 私も同じ本をまた買ってしまうと云うことがある。昔は何年に一度だったのに今は年に二度三度に増えている。本屋に行くとひと渡り店内を一回りして、何となく感応した本を開いて中身を確かめる。それを繰り返しているうちにたちまち十冊以上の本が「俺を買って帰れ」と呼びかける。これを月に三四回やっているので、物理的に読むことの出来る量よりも購入する本の方が多くなる。もちろん本に呼びかけられたからといって全て買えるはずもないが、夢中になると懐と関係なしに買いすぎているのだ。だから読まずに積んである本もどんどんたまる。

 同じ本をまた買うのはこのような本である。読もうと思ったくらいだから買ったことを忘れていればまた買ってしまうのだ。

 この頃は書店の店頭で、かすかな違和感を感じたら安易に買わずに帰り、積んである本を確認する。十中八、九が既にそこにある。

佐伯泰英「木槿ノ賦」(双葉文庫)

 居眠り磐音 江戸双紙第42巻である。12月に41巻が出たばかり、この42巻はその時に1月に出版されることが予告されていた。これで「天明の関前騒動」三部作がひとまず終了したことになる。とはいえ既に坂崎磐音の旧藩である関前藩のお家騒動は前回でほぼ収まっており、今回は強敵らしい強敵もなく、関係者が次々に登場する顔見世興行みたいなものになっている。前巻の後書きで、このシリーズもそろそろ大団円を迎える気配である。多分五十巻くらいでようやく終了すると思われる。

 前巻でも述べたが、坂崎磐音に怨みを持ってしつこく付け狙う田沼意次だが、歴史的にも明らかなように最後は失脚する。失脚のきっかけは息子の田沼意知が殿中で佐野善左衛門に殺害されたことである。そしてその佐野善左衛門が前巻にも、そしてこの巻にも登場する。

 この佐野善左衛門という人、時代小説家は激情家で短慮であったように書く人が多い。そのように読めるような記録が残っているのだろう。だが殿中で時の政府の要人を殺した人間を、清廉で冷静沈着であったなどという記録を残すはずがないので、そのまま信じることは出来ないだろう。

 と云うのは、私のベスト時代小説である柴田錬三郎の「孤剣は折れず」に記述された佐野善左衛門が私のイメージとして強く残っているからである。主人公の神子上(みこがみ)源四郎が人里離れた一軒家で出会う姉妹の父親だったか叔父だったかが佐野善左衛門だったはずだ。ここで柴田錬三郎は、「赤穂藩藩主の浅野内匠頭は壮年の武士でありながら老齢の吉良上野介に何度も切りつけて討ち果たすことが出来ないと云う醜態をさらした、それにひきかえ佐野善左衛門は見事に本懐を遂げた、武士としてあっぱれである」と源四郎に語らせている。この姉妹の人生はこの物語の重要な部分を占めており、そのことを説明していくと柴田錬三郎論になってしまうのでそれは機会を改める。この「孤剣は折れず」は何度も読んでいる。実はこの本は私が生まれて初めて買った文庫本であり、柴田錬三郎との初めての出会いでもあった。

 と云うわけで佐野善左衛門についていささかの思いはあるが、多分彼が殿中で刃傷に及ぶシーンから一気に物語は急展開するものと思う。

2013年1月20日 (日)

ジニ係数

 社会における所得分配の不平等さを測る指標で、調査対象や条件によって結果が異なるが、一般的にその国の貧富の差を表すものとして用いられることが多い。ジニ係数は0~1の範囲であり、0は格差がゼロであると云うことで、数字が大きいほど格差も大きく、不平等な社会であることを表す。0.4を超えると社会不満が高まるとも云われる。

 欧米や日本は条件をそろえてジニ係数を算出し、発表している。中国は2005年以来ジニ係数の発表をしてこなかったが、このたび2004年から2012年までのジニ係数を再計算して発表した。

 中国の発表によると、2004年に0.472、それから2008年にかけて上昇傾向であったが、2008年の0.491をピークとして2012年まで再び下落し、2012年は0.474であった。

 細々と数字を上げて申し訳ないが、ではこの数字はどのような意味を表しているのだろうか。中国当局はこの数字は社会が不安定になる警戒ライン上にあるが、政府が格差是正に努めていることの効果が現れて、改善されていると述べている。へえ、中国の貧富の差は改善されているのか。意外だなあ、というわけである。

 ところが中国のいくつかの大学が共同で調査した結果を基に計算したところによると、中国のジニ係数は0.6を超えている。中国の実情から見て中国の発表したジニ係数はおかしい、と云うのが多くの内外の専門家の意見である。

 中国の統計値がおかしいことは先般も取り上げた。こうして中国は国の内外に明らかに不信を招くような統計数字を平然と発表し続けることで、中国そのものの信用を低下させている。中国にとって統計値とは自分が発表したいことの裏付けのためにつくられる数字にすぎない。

ちなみに日本のジニ係数はそれよりだいぶ低いが上昇傾向が続いている。アメリカは日本よりだいぶ高く、上昇も激しい。事実を反映しているのである。

イギリステレビドラマ「誘拐交渉人」2011年

 前後編を一気に見た。実はこの続編である「誘拐交渉人 裏切りの陰謀」の前後編は既に見ている。

 主人公の誘拐交渉人ドミニク・キング(トレヴァー・イヴ)は六十件以上の誘拐事件で交渉を行い、全て無事に救出してきた。このドラマの冒頭は犯人との現金引き渡しのシーンである。担架に乗せられた被害者をドミニクが確認すると死んでいるではないか。これは犯人が殺したのではないものであったが、彼が初めて被害者を無事に取り戻すことが出来なかった事件となった。

 そんな矢先に南アフリカで製薬会社に所属する女性科学者の誘拐事件が発生する。各企業はこのような事件に対して保険をかけており、その保険会社の依嘱を受けてドミニク・キングの勤務する会社が交渉を引き受けるのだ。休む間もなくこの事件の交渉役を命じられたドミニクは早速南アフリカに飛ぶ。交渉の中で犯人がプロではないことを察したキングは、支払金額を大幅に引き下げて妥結、引き渡し現場へ向かうのだが・・・・。事件は急展開を告げ、エスカレートしていく。そしてこの事件には裏があることが明らかになっていく。

 被害者一家の運命、そして初めて被害者救出に失敗したドミニクのトラウマ、そしてドミニク自身の家庭の危機、会社の方針との軋轢などが複雑にからんでいく。このようなドラマについてはイギリスのものは奥行きが深くて見応えがある。主演のトレヴァー・イヴの冷静沈着な姿がドラマに重みを与えている。この人、イギリスでは有名な名優らしい。

様子を見ることにしよう

 中国の経済はずっと右肩上がりを続けていて、今や世界は中国抜きでは立ちゆかなくなったように見える。総額としての国力は日本を既に凌駕して、さらにアメリカも射程圏内に入ったとも云われる。だが国民一人あたりで比較すれば、まだまだ日本や欧米諸国との差は大きい。この差が、さらなる右肩上がりの経済の原動力である。

 世界は貧しい者と富める者との差をエントロピーの法則に従って、それを平準化する方向へ動いているように見える。その差こそ経済のポテンシャルエネルギーだと私は思っている。アメリカなどが詐欺に近い金融操作でそれを押しとどめようとしても、一時的にしか奏効せず、その大きな流れには逆らうことが出来ないだろう。これがアメリカやEU、そして日本が凋落しているように見えるが、これは世界が平均化に動いていることの現れに過ぎないのではないか。

 豊かな国の人々に比べて貧しい国の人々の方が活気に満ちているように見えるのは将来への希望が有るから当然のことなのだろう。

 そして、世界に限らず、貧富の差も平均化する方向に動いていくのが自然の流れなのではないだろうか。現代世界は貧富の差が拡大している、とよく言われるが、そうだろうか。過去の歴史をふり返れば、貧富の差は昔の方がはるかに大きかった。そのような社会システムは時と共に差を解消する方向へ改変されてきている。

 問題は、平均化は下から上へ、と共に上から下へ、と云う流れも伴うこと、そして地球上の資源が無尽蔵にはないと云うことだ。限られた資産であれば、人口が増えれば一人あたりの分け前も減るのは道理である。上から下へ生活レベルを下げざるを得ない先進国の人々は常に犯人捜しをして政権を不安定にする。そして下から上を目指した人々は目指した高見の思ったより低いことに失望し、不満を抱く。

 多分神様が長い時の流れとともに人間世界を鳥瞰すればこのように見えているのではないだろうか。

 さて再び中国であるが、その人口と貧しさをポテンシャルエネルギーとして経済を伸ばしてきた。これは中国政府が旨く誘導してきたからではない。中国政府が行ってきたことはこの巨大な国を維持することだけであり、結果としてポテンシャルエネルギーの総量の力が巨大な力として働いたと云うことだろう。そのエネルギーはブラックホールのように世界の企業からの投資を呼び込み、製造工場を呼び込んだ。中国はそれを呑みこみ、咀嚼し、成長した。そして中国に進出した会社も恩恵を受けた。エネルギーは富でもあったのだ。

 中国メディアが、今まで増加を続けてきた15歳から59歳の労働人口が、2012年に初めて減少に転じたことを報じていた。前年に比べて349万人減少したという。そして少なくとも2030年までは労働人口は減少し続けるという。とはいえ中国の労働人口はなお9億あまりも居るので問題ないとの当局の見解を伝えた。

 やはり中国メディアが伝えた記事によると、日本企業の中国からの撤退が加速しているという。さらに2012年の世界の中国への直接投資額が前年比で-3.7%であったことも伝えていた。この大きな要因は日中関係の悪化に伴うリスク回避で日本企業が東南アジアなどへ生産基地を分散化させ出しているからだと分析している。

 中国の最大の輸出先は昨年秋までEUであった(その後はアメリカ)。そのためEUの経済不振の影響で中国への投資額は大きく減少したのだが、唯一日本だけがその投資を増加させたために、反日暴動までは投資総額はプラスであった。それが反日暴動以後の数ヶ月で一気にマイナスに転じたこと、そして日本からの投資が今後恢復するような見込みがないことを見れば、2013年は中国当局が楽観視するようなわけにはいかないのではないだろうか。

 世界が富の平準化をもたらすような社会システムに改変し続けている中で、中国は頑として王朝時代のシステムを維持し続けている。皇帝が一人ではなく、世襲ではないことを除いて共産党と官僚による王朝システムが続いているのだ。それが中国の富の再配分を阻んでいる。

 このような、時代に逆行した無理はいつかポテンシャルエネルギーに呑みこまれるだろう。私の寿命のあるうちに大きな変動があるだろうか。私はあると思っている。様子を見ることにしよう。

2013年1月19日 (土)

アニメ映画「ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵」2012日本

 監督・窪岡俊之、作画監督・恩田尚之、原作・三浦建太郎。

 百年戦争が続く戦乱の時代、長大な剣を携えた傭兵ガッツの物語である。ベルセルクは北欧の狂戦士伝説に由来する。

 原作の三浦建太郎の漫画は、ドン姫が持っていたので途中まで読んだ。その漫画のパワーは世界を突き抜けていて今まで見たことも無いようなものだった。現在も書き続けられていて、三十巻は超えているはずだ。残念ながら十数巻までで単身赴任してしまい、それ以降を読んでいない。かなりえげつないすさまじさになっているようだ。

 このアニメはその主人公・傭兵ガッツの若き日の物語で、グリフィスとの出会い以後が中心である。一部化け物が出てくるがおおむね尋常な戦闘シーンが続く。

 いつも思うが、日本のアニメは本当に素晴らしい。アメリカのアニメも機会があるごとに見るけれど、絵の美しさ、精緻さでは確かに良く出来ているのだが、物語世界の世界観の奥行きのレベルが違うような気がする。アメリカは未だにアニメは子ども向けのものだという考えにとらわれているようである。だからこのベルセルクのような漫画は作れないだろう。

 ところでこのアニメ映画はシリーズ化されており、第二作「ベルセルク 黄金時代篇Ⅱ ドルドレイ攻略」は昨年6月に公開されている。さらに第三作「ベルセルク 黄金時代篇Ⅲ 降臨」は今年早々に公開する予定の筈である。

 アニメに詳しいドン姫によれば、第二作はかなり刺激的なシーンが多くなって、雰囲気がエスカレートしているらしい。そして第三作は目を蔽うシーンの連続で見た後かなりショックを受けるようなものになるはずだという(第三作はR-15指定)。

 確かにこの漫画は子どもの見るものではないし(だから意外に子どもに人気があるかも知れない)アニメも子ども向けではない。だけどとにかく原作が良いからとても面白い。第二作がWOWOWで放映されるのを楽しみにすることにしよう。本当に日本のアニメはすごい。

映画「アズガルド・プロジェクト」2009年イギリス映画

 監督アラステア・リー、出演レオ・ホールディングほか。

 カナダ、北極圏にあるアズガルド山に登攀する登山映画なのだが、この山が尋常の山ではない。ほとんど全てが絶壁なのだ。その絶壁をフリークライミングで登ろう、と云うのが「アズガルド・プロジェクト」である。チームは六人、登攀するのはその内の四人である。

 天候が目まぐるしく変わり、絶壁の途中の唯一の岩棚でビバークすること十日以上、精神的にも折れそうになる中、ラストチャンスに賭けてついに四人とも登頂に成功する。

 そして・・・なんとその内二人は頂上の断崖から跳ぶのである。もちろんパラシュートをつけて跳び下りるのだが、見ているだけで足のすくむ映像である。

 この登攀の練習として、鼻歌交じりでヨセミテのあの1200mの大絶壁をフリークライミングする。ヨセミテには行ったことがあるが、その時にも何人か登攀しているのが望遠レンズでかすかに見えた。世の中にはすごい男たちがいるものだ。

 学生時代、米沢で暮らした。冬になると洋画のかかる映画館では二本が普通の映画でもう一本必ずスキー映画か登山映画が放映された。結構迫力があるのでそれ以来登山映画のファンである。もし見たことのない人は一度試しに見てみたらその迫力に驚くと思う。

岡本綺堂「中国怪奇小説集」(光文社文庫)

 中国の小説の始まりは志怪小説だという。小説の原型のようなもので、短い話が多く、物語のつじつまなどは考慮されていないものが多い。聞き語りを集めた形をとるものもある。

 この本には二百二十の話が収められている。個別に紹介していたら切りがない。原典がそれぞれ明記されていて、時代別の紹介者がそれについて語る、と云う形式がとられている。

 取り上げられているのは、捜神記(そうじんき・六朝時代)、捜神後記(そうじんこうき・六朝時代)、酉陽雑俎(ゆうようざっそ・唐時代)、宣室志(せんしつし・唐時代)、白猿伝・その他(唐時代)、録異記(ろくいき・五代時代)、稽神録(けいしんろく・宋時代)、夷堅志(いけんし・宋時代)、異聞総録・その他(宋時代)、続夷堅志・その他(宋時代)、輟耕録(てっこうろく・明時代)、剪燈新話(せんとうしんわ・明時代)、池北偶談(ちほくぐうだん・清時代)、子不語(しふご・清時代)、閲微草堂筆記(えつびそうどうひっき・清時代)である。三分の二は何らかの形で私も単独の本として持っている(もちろん全てを読んでいるわけではない)。

 とにかくどれも不思議な話ばかりであり、日本の今昔物語や、怪談のネタ本になったものも多い。一冊でたっぷり楽しめます。

書き換え

 鳩山由紀夫元首相(一私人を詐称)が南京大虐殺記念館を訪問した。展示品などを見て声涙を持って日本としての謝罪を行った(一私人として)。

 南京大虐殺についてはいろいろな説があり、真実は明らかではない。歴史の真実はそもそも明らかになることはないので、あるのは事実だけである。南京で一般市民を含めての多数の被害があったことを否定するような主張をするものなどないだろう。戦争というのはそういうものだ。国土で戦いがあれば必ず一般市民が大勢死ぬ。日本では沖縄がその惨禍を受けた。本土での決戦に至らなかったのはさいわいであった。それでも多くの都市が、空襲で万人単位、十万人単位の一般市民を殺された。その上の広島、長崎への原爆投下である。

 繰り返すが、南京で多くの市民が死んだことは事実である。だがそれをナチスのホロコーストのように日本兵が南京市民が皆殺しにしたというのは言い過ぎだろう。

 鳩山由紀夫元首相(一私人)が記念館(大虐殺を記念するというのも違和感がある)の館長に当時の市民の人数と殺された人数を確認したそうだ。館長が答えることには「当時の南京市民の人口は百万人以上、殺されたのは三十万人である。これは誰にも反論出来ない数字だ」。

 ここに中国の問題点があることにお気づきだろうか。

 当時南京市の人口が三十万であったことは過去ずっと中国自身が認めていることだ。そして世界的にも公知の事実である。そして日本も南京で一般市民が多く殺されたことを否定などしていない。ただ、三十万人の南京市で三十万人を殺した、それも虐殺し尽くした、と云うのは事実に反する、といっているだけである。

 三十万の市民が、日本軍の侵攻に避難もしないでとどまっていた、などと云うことはあり得ず、多くは逃げ出していただろう。それは他の街でも全てそうだったことだ。東京大空襲で、東京市民三百万人が全て殺された、と云ったら笑われるだけだ。原爆のような突然の、避難の余地のない(それだけ罪が重いがアメリカは正義の行為と強弁する)ものとは違うのである。

 中国側もその矛盾に気が付いたのだろう。三十万人殺されるためには三十万人の人口ではおかしい、と云うことで南京の人口は百万人に書き換えられたようだ。現在は七百万以上の大都市だからそのくらい問題ないと考えたのだろう。

 このようにして中国は歴史を書き換える。昔は皇帝に都合の良いようにその前の王朝の歴史を書き換えた。今は国の都合の良いように歴史を書き換える。これは中国では当たり前のことで、書き換えられたものこそが事実なのである。もし本当の事実にこだわって歴史を記述すると殺されるだけなのである(中国の歴代の歴史記述者にはこうして殺された人が沢山いる。今もいるのかも知れないが抹殺されてしまって存在していることすら知ることが出来ない)。

 その中国で鳩山由紀夫元首相(一私人)は云われるまま首肯して謝罪した。中国人でもよくしないことである。

 菅直人元首相が、盟友であった鳩山由紀夫元首相(一私人)に、一私人なのに政治的な行動をして中国に利用されている姿に苦言を呈していた。あのもと市民運動家にして中国大好きな菅直人元首相ですら苦言を呈する。もって瞑すべし。

2013年1月18日 (金)

怒りは長寿のもと

 ドイツの大学の研究によると、癇癪を起こしやすいひとは寿命が延びるそうである。感情を表に出すイタリア人やスペイン人の方が、感情を抑えるイギリス人よりも長生きするらしい、とイギリスの新聞が報じた。

 感情の表出を押さえると、高血圧や冠状動脈性心臓病、癌、腎臓病などの病気にかかりやすいのだという。感情をいつも抑圧している人は、心拍数と脈拍が速い傾向があることは事実らしい。

 私も歳と共に腹が立つことが多くなった。それを押さえずに癇癪を起こすことは良いことらしい。しかし私は独り暮らしだから良いけれど、家族と暮らしている人はまわりに迷惑なことだろう。

 記事には抑圧者は我慢することになれているので、かわりに自己回復能力が高く、ストレスからの回復が早い、と悪いことばかりでないことを補足していた。自律的なライフスタイルを送れるので適応能力が高いのだという。それはそうだろう。まわりの人にとってはその方が有難いことだ。

 「憎まれっ子、世にはばかる」とは真理であったか。そう言えばこの頃やたらと無意味に腹を立てている年寄りを見かける。理性的な年寄りは先に逝っているのか。癇癪持ちばかりが長生きするとは困ったことである。

領土問題

 一私人・鳩山由紀夫氏が中国で、尖閣諸島は領土問題であると公言したことがなぜ問題か、について言葉が足らなかったので追加する。

 北方四島については領土問題が存在する。これはロシアも認めていることである。

 ところで韓国の一部には対馬はそもそも韓国領だという主張がある。確かに過去対馬は韓国にも貢ぎ物を捧げていた時代があった。では対馬に領土問題は存在するか?

 中国の一部には琉球は中国に対して朝貢していた。だから沖縄は中国領だという主張が公人からも公言されている。では沖縄に領土問題は存在するか?

 尖閣諸島には日本人が住んでいた。敗戦後、沖縄の一部として米軍に支配されることになったが、沖縄の返還とともに日本に返された。日本が正式に領有を確認した後、中国は特に異議申し立てはしていなかった。公知のように国連の資源調査団が、東シナ海周辺に資源があることを確認した後、にわかに中国はその領有を声高に主張しだした。日本が強引に奪ったものだという。そもそも中国領だったことのない島をどうやって奪ったというのだ。

 こんな事実を中国は百も承知である。またかと思われるだろうが、中国には中華思想という思考の原点がある。日本人には理解不能の思想だが、これは中国人にとっては分離不可能な思想であり、論理を超越した思想だ。それをもとに尖閣諸島の領有を主張することに中国人は問題があるとは感じていない。

 話し合いで解決すれば、と云うことを云う人がいる。中国のことをあまりに知らなすぎる人である。中国にとって話し合いに応じると云うことは中国の領有を認めることである。だからこちらにとって理不尽であることは談じて応じないということでしか対応の方法はない。相手は百年、千年かけても言い続けるだろう。そういう国だから、百年、千年同じ対応を続けるしかないのだ。

 その中国に対して一私人の元首相・鳩山由紀夫氏が、あろうことか中国の要人の前で、尖閣に領土問題が存在する、と公言したことがどれほど犯罪的なことか、日本人は怒らなければならない。

 そもそも民主党政権ですら、尖閣に領土問題は存在しない、と云う当たり前の主張を貫いていた。その民主党の一員であった、しかも一時はその党首で首相でもあった、今は一私人の鳩山由紀夫氏が、領土問題が存在する、と公言したと云うことは、この人が異常であることを表している。

 そのことは、それ以外に枚挙にいとまがないほどの例(基地問題然り、トラスト・ミー然り)を抱えているから今更なのだが、何とかしなければならない。

 精神疾患の人でも、今は入院させたり、ましてや拘束したりすることはほとんどない。行動を制約するのは社会に何らかの害を及ぼすおそれが明らかな時だけである。精神疾患で入院している患者以上に社会に害を及ぼしている一私人・鳩山由紀夫氏は、拘束に値するのではないか。

 極論を述べてしまったが本音である。

なんとかしないと

 パソコンのウインドウズが立ち上がらなくなった。何が原因かよく分からない。接続しているものを全て外して何とかセーフモードで立ち上げることが出来た。そして復元ポイントに戻して復活出来たので一息ついた。慌ててハードディスクに大事なデータのバックアップをとった。古いXPパソコンは既に時々フリーズするようになってご臨終寸前であり、ゲームマシンとしてしか使えない。

 まあこれは機械のことだが、問題は中国の鳩山由紀夫氏のことである。心配していた通り、尖閣は明らかに領土問題であると中国の要人に対して公言して、中国のメディアが一斉にそれを取り上げていた。これを利用して中国が国際社会にアピールするだろうと想像される。本人は一私人として訪問したと云うが、それならなぜ次々に中国の要人に会うのだ。

 誰が考えたって中国に利用されていることは間違いないのだが、それに気が付かないのはご本人とそのご夫人だけであろう。誰かが忠告したところで、舞いあがっている本人は何ほどの痛痒も感じないことだろう。

 この一私人は南京虐殺の記念館に行き、「日本を代表」して謝罪した。

 このひとをなんとかしないと。

 

2013年1月17日 (木)

観測以来最高値

 中国気象局が「2011年中国温室効果ガス年報第一号」を発表した。これは世界気象機関が2012年11月に「2011年世界気象機関年報第八号」を発表したことを受けたものだという。

 それによると中国のグローバル大気バックグラウンド観測ステーションで計測された大気中の主要温室効果ガス三種類(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素)の年平均濃度はそれぞれ392.2ppm、1861ppb、324.7ppbであり、世界の平均値、390.9ppm、1813ppb、324.2ppbを上回り、1990年以来観測ステーションが観測してきた最高値を記録した。ただし、北半球中緯度の平均濃度とほぼ同水準だった、とまとめている。

 数字をもう一度よくよく見て欲しい。ほとんど全て世界の平均値の値と1%程度しか違わず、誤差範囲の値である。こんな見え見えのインチキ数字を公然と発表するというのは余程人を馬鹿にしている。ほんの少しずつ平均より高くしているのがご愛敬だが。

 世界で一番大気が汚染されていると自他共に認められる中国だ。誰がこんな数字を信用するというのだ。だから中国の統計値や測定値は信用出来ないと云われるのだ。

 考えてみればこの数字が今までの最高値だとすると、過去の測定値も信用出来ない。一体この観測センターは何を測定しているのだろう。

映画「世界侵略:ロサンゼルス決戦」2011年アメリカ映画

 監督ジョナサン・リーベスマン、出演アーロン・エッカート、ミシェル・ロドリゲス。

 いやはや凄まじい映画であった。宇宙人が地球を侵略していく話なのだが、もう少し良い勝負になるかと思えば、とにかく一方的にやられまくってしまう。何せ敵は話し合いも何もあったものではなく、一方的に攻撃してくるのだ。

 ロサンゼルス郊外、サンチャゴ空軍基地に所属する海兵隊のマイケル・ナンツ(アーロン・エッカート)二曹は退役を希望し(それには深い理由がある)、ようやく叶えられたと思ったら、この宇宙人襲来に遭遇し、急遽前線へ向かう命令を受ける。そこでさらに敵陣の中に取り残された民間人の救出の命令を受け、部隊とともに敵のただ中へ赴く。

 敵との戦いで初めて敵の姿を見るとともに、敵の圧倒的な強さを思い知るのだが、海兵隊魂でそれに屈することなく民間人の救出を果たす。救出後に敵陣に対して空軍が攻撃を行うことになっているのだが・・・。

 一息ついて反撃、などという余裕はない。敵の弱点に気が付いた彼等は改めて敵の中枢部へ乗り込むのであった。

 あり得ない戦いが続くのだが、嘘くさくない。それだけよくできているので興奮しながら夢中で見ることができた。ヘンな理窟が少しも語られていないぶん、文句なしに面白い映画だった。

 こう云う映画で出来の良いのは大好きだ。

抗議活動頻発

 春節(今年は二月十日)を前に中国各地の都市で農民工の抗議活動が頻発しているという。故郷を離れて都市部に出稼ぎに来ている農民工たちが、故郷へ帰る前に賃金を支払うよう要求しているのだ。

 昨年春からの一年の労働に対して賃金が未払いのケースなどもあり、建設請負会社やその役員宅などに押しかけて、警官とぶつかることも多い。

 労働に対する報酬を支払うのは当然のことで、それを払わずにおくという神経が分からない。そう言えば中国の企業などにものを売る時に最も難しいのが回収であるとよく言われる。納品した時に金をもらわないで後で払うことを了承したりしたら、ほとんど金をもらうことは出来ないと思わなければならないという。

 金を回収出来ないのは払わない方が悪いのではなく、その場で金を取ることが出来なかった方が悪いというのが中国式だ。友だち同士、身内通しの間以外に信用などと云うものは存在しないし、それが存在すると思い込んでいるのは妄想で、そんなことを信じるものは馬鹿者である。

 だから農民工たちは実力行使に出るしか金を取ることは出来ない。

 何処かでそんな理不尽な話があった、というニュースではない。中国中のあちこちで毎年繰り返されている騒ぎなのである。このような人々が結局金ももらえず、職も失い、故郷へ帰ることも出来ずに都市の貧民街などに沈殿して暴動などの大きな騒ぎを起こす人々へと変貌するのだ。

非常識

 オバマ大統領が、ホワイトハウスで会見して全ての銃の購入希望者について犯罪調査を義務づける新しい法律を成立させるように議会に求めたという。

 こんなあって当たり前の法律が今までなかったことに驚いた。しかも非常識なことに、共和党は銃規制に反対であり、新法が成立するかどうか不透明なのだそうだ。

 これではアメリカの国民は、自衛のために銃を購入しようと考える人が増えるのは当たり前だ。

宮本輝「命の器」(講談社文庫)

 ふと気がついて目を覚ます。気配から明け方にもう少し間がある時間だと感じる。なぜ起きたのか分からない。明らかに寝足りないと思われる場合以外はこう云う時は起き出すことにしている。そして読み出したのが読み掛けのこの本だった。昨年末に久しぶりに再読したばかりの本だ。それをたまたま出かける時に持って出てしまった。読む本がそれしかないので仕方なく電車の中でそれを読んだのだが読み掛けになっていた。

 こんなに短期間で同じ本を読むというのは久しぶりの経験だった。何だか下地の描かれた絵に今度は濃い色で上描きするような思いがした。一度読んだものだから飛ばし読みしてしまう、と云うことがなく、書いてあることが記憶の下地と塗り重なってより鮮明に心に響いた。薄い本だからたちまち読み終わったところだ。

 ひとつが長くて数頁の短いエッセー集である。最初が子どもの頃の大阪から父母と富山へ向かう列車の中の話である。この時父親は大阪で大借財を抱え、一家で大阪を逃げ出し、富山で再起を期すための旅であった。大阪では見ることのない吹雪の中を行く列車での一コマが語られる。結局富山での事業にも失敗し、たった一年で富山から大阪へ戻ることになるのだが、この富山での一年は宮本輝の原点となる。あの芥川受賞作「螢川」はこの富山での物語だ。

 そしてラストが蔵王の錦繍である。私の大好きな傑作「錦繍」の書き出し、「前略、蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」はここで啓示のように宮本輝の心に浮かんだ一節だった。手紙文だけで書かれたこの物語がこれ程胸に響くものになるというのは信じられないことだ。それを感じるために私は蔵王のダリア園に立ったこともある。

 この二つのエッセーの間に沢山のものが詰めこまれている。一つ一つに感じたことを書き連ねていたらそれだけで本になるほどの分量になってしまう。上に取り上げた二篇でさえ、思いの一部すら書けていないのだから。

2013年1月16日 (水)

映画「ミッション:8ミニッツ」2011年アメリカ映画

 監督ダンカン・ジョーンズ、出演ジェイク・ギレンホール、ミシェル・モナハン、ヴェラ・ファーミガ。

 いやあ面白い映画だった。理論的に可能性があるかどうかなどは突っこめばいろいろあるのだが、そんな事にこだわる暇もなく物語はどんどん進んでいく。

 主人公はどう云う訳かある装置の中に閉じ込められていて、意識だけ強制的に列車の中に乗車している人間として覚醒させられる。この列車はその瞬間から八分後にこの列車は爆破されることが分かっている(それは実は過去に起きた事実なのだ)。彼の指命はこの八分間の間に誰が列車に爆弾を仕掛けたのかを探り出すことだ。しかし一度でそんな事は不可能だ。と云うわけで彼は繰り返しその瞬間に戻され、また時間とともに爆発の瞬間を経験させられる。

 この繰り返しのうちに彼は手がかりを摑み、爆弾の仕掛けられている場所を発見するのだが犯人はなかなか分からない。彼に残されている時間は十分あるとは云えないことが分かってくる。そして彼自身がどう云うわけでそのような役割が与えられているのかも分かってくる。

 そしてついに犯人を発見した彼は最後の賭に出る。

 ラストはなるべくしてなるのだが、そこに大きな問題点があることにあなたは気が付くだろうか。

中国の大気汚染、対策とその効用

 中国のメディアが、大気汚染に対する対策についての質問に答えた専門家の回答を伝えていた。

マスクは有効か?・・・使い捨ての医療用サージカルマスクか12層以上のガーゼマスクが呼吸器疾患の予防に効果的だ。

キクラゲを食べると微小粒子の排出に有効と云うが本当か?・・・微小粒子状物質を排出する上で重要なのが肺胞の表面の活性物質で、肺の異物を排出する機能がある。その働きを高めるために、シロキクラゲ、氷砂糖、ハスの種、レンコンなどを食べると良い。キクラゲは毒素排出に役立つ。

窓を少しだけ開けて換気をしても良いか?・・・わずかな隙間でも微小粒子は空気とともに入ってきてしまう。窓は開けない方が良い。空気清浄機も有効だがフィルターの交換をこまめにする必要がある。

ということである。キクラゲは本当に良いのだろうか。

 ところで別の記事ではこの深刻な大気汚染が新たなビジネスチャンスをもたらした、としてその経済効果予想を報告していた。

 現在この大気汚染により、マスクや空気清浄機が飛ぶように売れ、関係メーカーはフル生産を行っている。実は中国政府は昨年12月に「重点地域の大気汚染対策をめぐる十二五計画(第十二次五カ年計画)」を発表し、総合的な大気汚染対策計画を進める方針を明らかにしている。

 この計画によれば環境モニタリング機器だけで百億元規模の市場が発生する。さらに電気事業に対しては各火力発電所への脱硫装置の設置が進められる。また自動車の排気ガス対策も強力に進められるとのことで、併せると数千億元の経済効果があるのだという。

 災い転じて福となればさいわいである・・・と云うより、そもそもがやるべきことをやらないからこう云うことになったのだ。日本が公害でどんな苦労をしたか知らないはずはない。遅ればせにしても手を打つことは良いことである。これで日本へ飛来してくる化学物質が減り、酸性雨も減少すれば何よりである。儲かるとなればとにかく物事は前に進む。中国の真理である。

 しかし投下資本の半分がどこか(たずさわる立場の、上から下全ての人の懐)に吸い取られる中国のこと、必要と思われる経費は倍に見て置かないと実効は上がらないから注意が必要だ。そのぶん経済効果も上がるし、何よりだ。

腹筋続く

 別に腹筋は続いたりしない。怠け者で三日坊主の私が珍しく朝晩の腹筋運動を今でも続けている(実は時々はサボる)と云う奇跡のことだ。最初は10回でもつらかった。今は30回なら簡単だ。それを超えると少し苦しいが、無理をすれば50回はいけるようになった。だから今は朝晩50回。一日100回が日課だ。時には40回で苦しくなるのでそこでインターバルを置き、さらに20回~30回やる。二、三ヶ月もすれば何とか朝晩100回ずつ出来るようにならないかと期待している。足に重い掛け布団を置いての腹筋だから、正しい腹筋から見れば軽度の運動なのだが、座高と頭の重さが人一倍(脳が重いのではなく、頭蓋骨が重い)の私にとっては腹筋は結構負荷がきついのだ。

 前にも云ったがこれで体が、そして足がほかほかしてくる。寝る前、起きる時にはまことに心地よい。冷え性の人は是非試みられるとよろしい。今のところ腹囲はあまり縮まらないのだが、ようやく体重は少しずつ減りだした。これで腹囲も縮まり出せばそれこそミラクルだ。

えっ、売国奴

 中国のメディアが伝えるところによると、有名女優が韓国で出産し、日本のネットで「売国奴」と罵声を浴びているのだという。

 一部ネットで特殊な言動をエスカレートしている人々がいることは知られている。決してお近づきにはなりたくない人々だが、その辺の反韓国意識からのそのような物言いがあったのかも知れないが、日本での一般的な意識では決して無い。

 それが日本一般の意識として中国メディアで報じられることに中国のメディアに病理的なものを感じる。だって日本で小雪さんを「売国奴」などと非難する報道など全く見られないことは日本にいれば分かることで、日本に駐在する特派員に確認すれば分かることのはずだ。ただしその特派員がネットの意見しか見ていなければ別だが、それなら日本にいる意味がない。

 こんなニュースは取り上げる意味がないと思ったがあえて取り上げたのは、今朝になってテレビで「小雪はなぜわざわざ韓国に行って出産したのか」という特集を流しているのを見たからだ。

 そんなもの日本にいたら報道やらコメンテーターというヤクザまがいのおかしな連中がうるさくてかなわないからに違いないではないか。せっかく韓国でゆっくりしているのにこうして追いかけられる羽目になった。有名人の運命とは云え哀れなことだ。

 これを見ていると中国のメディアが病理的なのではなくて、メディアそのものが異常なのが分かる。視聴者が理由知りたいと思っているから、と云うのが彼等の言い分なのだろうが、そんな事知りたがるのは一部のおかしな人だけで、普通の人はもっと知りたいことが別にある。それをサボってこんなことで時間つぶしをするのはやめてくれ!

2013年1月15日 (火)

鳩山元首相、中国を訪問する

 何を考えているか分からないあの鳩山元首相が15日(つまり今日)中国を訪問したと云う中国のニュースを見て驚いた。

 この人は首相時代にも中国を訪問している。中国では日中の関係改善を進めようとした人との認識でいるらしく、この時期の訪問にどんな意味があるのかいろいろと憶測しているらしい。

 まあ常識的に云って安倍総理が鳩山さんに何かを託すなどということがあるとは考えられないから意味などないのだろうけれど・・・。

 一体鳩山さんは何を考えているのだろうか。宇宙人の考えることなんか分かるわけがないか。

映画「オーメン」1976年イギリス・アメリカ合作

 監督リチャード・ドナー、出演グレゴリー・ペック、リー・レミック。

 2006年にリメイクされているがこちらはオリジナル。この映画はシリーズになり、「オーメン2 ダミアン」「オーメン 最後の闘争」と続く。第二話と第三話は映画館で見ているのに、この最初の映画はちゃんと見ていないのだ。「オーメン4」というのもあるが、女の子が悪魔らしいし、違う話かと思って見ていない。

 物語のほとんどと関係者の殺され方は全て知っているのだが、改めて通しで見てみるとそれなりに面白かった。ただし、「エクソシスト」のシリーズと比べると怖さがだいぶ違う。西洋の悪魔は関係ないから正直あまり怖くないけれど(考えてみると不思議だ。キリスト教を信じている人ほど悪魔に襲われるみたいだ。異教徒はキリスト教の神とは無関係だから祟られることもないのだ)。「エクソシスト」のシリーズは全ての作品を映画館で見た。特に名優リチャード・バートンが悪魔払いに扮する「エクソシスト2」が大好きだ。あまり怖くないし。

 グレゴリー・ペックは大好きな俳優だ。いわゆるロードショーというのを高校生の時に生まれて初めて見たのが、グレゴリー・ペック主演でヒロインがソフィア・ローレンの「アラベスク」という映画であった。その外思いつくだけでも「ローマの休日」「白鯨」「レッド・ムーン」「ナバロンの要塞」「マッケンナの黄金」「キリマンジャロの雪」「渚にて」「アラバマ物語」といくらでも出てくる。劇場でほとんど見ているし、そうでないものはLDやDVDを持っている。彼が出ているだけでうっとりしてしまう。ちょっとおかしいか。でも好きだからしょうがない。彼が出ているからこの「オーメン」も合格。

名古屋・大須

Dsc_0035_4大須のアーケード街の中に万松寺がある。織田家の菩提寺であり、織田信長の時代には広い寺域を誇っていたが、今は写真の奥にひっそりと信長の父親の墓が残っている。信長が、ここで行われた父親の葬儀の時、焼香を握って投げつけてうつけ者と呼ばれたことは有名である。この辺りは電気街などが軒を並べている。

Dsc_0042大須観音。浅草のミニチュアみたいなたたずまいで好きなところである。

Dsc_0049

ここから白川公園に行って美術館かプラネタリウムでも見ようかと思ったが、歩き疲れて腰が痛くなったのでこの次にした。

熱田神宮

 一月十五日はある理由があって余程のことがなければ熱田神宮に必ずお参りすることにしている。それを三十年近く続けている。

Dsc_0002大鳥居を入ったすぐの参道。きのうまでの三連休は参拝客でごった返していたものとと思われる。鳥居のあたりはテントなどの解体を行っていた。

Dsc_0014清めの手洗場のそばにお馴染みのお酒のコモ樽が並んでいる。

Dsc_0015本殿側には大楠の木が聳えている。いつもならこのあたりは鳩だらけなのだが今日はほとんどいない。

Dsc_0020信長が桶狭間の闘いの前にここで戦勝祈願をしたという。勝てた御礼としてこの築地塀(ついじべい)を奉納した。日本三大土塀だそうだ。

Dsc_0022正面奥が本殿。2009年に新しいものに建て替えられた。

Dsc_0028祈祷殿。息子はここで七五三の祈祷をした。ここも新しくなっている。

そのあと地下鉄の駅の方へ向かい、金山のボストン美術館を見ることにしたのだが、心配していた通り

Dsc_0033連休の後とあって休館日であった。残念。と云うわけで大須へ行くことにした。大須は小型の浅草と秋葉原、アメ横が同居しているような街だ。

矢月秀作「もぐら 闘」(中公文庫)

 賢いはずの人間があまりにバカな行動をする、と云うことは現実でもあることだ。そして警察は馬鹿ばかり、と云うのは探偵小説のパターンでもある。しかし現代のこのような小説で、警視ともあろう人間がバカな行動を見せると腹が立つ。そしてそうでないと話がつながらないし、盛り上がらないというなら小説としては失敗だろう。

 このもぐらシリーズは、主人公も含めて登場人物が、鋭く賢いかと思えば次には考えられないほど大事なことを見過ごしてしまって窮地に陥ったり、身近な人を危機に陥れると云う事の繰り返しだ。だからもう読むのをやめよう、と思っているのについ買ってしまう。他にも読むものがあるのに。本当にもう新作が出ても買うのはやめよう。

 そういうわけで内容を語る気にもなりません。それほど内容もないし。

 さあ天気も良いし、熱田神宮にでも行ってこよう。

核心技術

 中国は再生エネルギーの先進国で、太陽光パネルなどの生産量やシェアは世界一だ。あまりにメーカーが乱立して乱売になり、各国の同様のメーカーは太刀打ち出来ずに撤退を余儀なくされているが、中国のメーカーも過剰設備と過剰生産で大変だという。しかしほとんど国営企業みたいなものだからいくら赤字でも倒産することはない。

 とはいえ再生エネルギーは設備投資のわりに得られる電気量はそれほどでもなく、豊富な電気量を必要とする中国にとっては十分とは云えない。だから中国は原子力発電に主力を置いており、原子力発電所の新増設が進められている。昨日報告したように中国では今まで見つかっていなかったウランが、新疆ウィグル自治区で発見された。めでたいことである。

 そんな中、中国の経済誌が次のような記事を掲載した。
中国は日本の福島原発の事故を受け、原子力発電所の安全性の確認を行ってきた。そして再び原発の建設にゴーサインが出たところだ。今後の原発については第三世代と云われる安全性の高い原子炉を導入することになった。ところが原子炉を収める圧力容器の鍛造技術は中国にはまだないものである。その技術は日本にしかなく売却を要請したが、日本は拒否している。中国の原発の前進には課題が残されている。

 今まで中国はこのような核心技術を世界の好意や巧妙な盗み出しで我が物にしてきた。世界の企業と競合しながら価格で優位な位置に立ちシェアを上げている現在に至って、このような核心技術を安易に売却してもらおうという甘えの姿勢は変わらないようだ。中国の「確信的利益」は他国から収奪するものらしい。レアアースでやってきたことの結果を見ても気が付くことが出来ないのか。そのうち、日本が血のにじむ努力で積み上げた技術を、売ってくれない、と云って今に日本を非難するであろう。日本から購入するか、自分で技術を確立するしかないのだ。

 中国の近年の年間あたりの特許申請数は日本の倍だという。しかし実用的なものは日本よりはるかに少ない。今まで他国からの技術を安易に取り込むばかりで基礎技術を持たない国だから最先端技術については脆弱なのだ。物まねの国は中身が空っぽだ。

大気汚染の害

 中国では北京をはじめ多数の都市で深刻な大気汚染による濃霧の害が続いている。交通渋滞や事故の多発もあるが呼吸器系の疾患も急増しているという。

 さらに中国のメディアでは海外の大気汚染の健康被害に関しての研究を報道していた。

 アメリカで多数の高齢者を対象に行った調査では、大気中の微小粒子状物質(今回の濃霧の主原因とされている)は思考力を低下させる可能性があると云う。この粒子は非常に小さいので体内に取り込まれると脳や肺に蓄積されてしまう可能性があると云うのだ。さらに心臓や肺へ影響を与え、平均寿命を縮めると云う。

 イギリスでの同様の研究では1立方メートルあたりこの微小粒子が10mg増加すると3年老化するほどの影響を受けるという。喫煙などの習慣、呼吸器系の疾患の有無などでもその老化の程度は加速されることもある。

 脳の働きに悪影響を及ぼし、寿命を縮めるとは恐ろしい。多分花粉症やアレルギーの疾患者も増えて行くに違いない。まるで「ブレードランナー」の世界みたいだ。

2013年1月14日 (月)

映画「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」2011年アメリカ・イギリス合作映画

 監督ガイ・リッチー、出演ロバート・ダウニー・Jr、ジュード・ロウ、ノオミ・ラパス、ジャレッド・ハリス。

 私の好きな、ダークでパンフォーカスなイギリス風の映像。単なるハリウッド映画だと思っていたらイギリスも製作に加わっていたのだ。

 ハイスピードカメラを多用し、観客はホームズ(ロバート・ダウニー・Jr.)の常人を超えた思考が視覚化されているようなイメージを持つようになっている。

 前作同様敵はホームズの宿敵・モリアーティ教授(ジャレッド・ハリス)。物語は「ホームズ最後の事件」がベースになっている。原作者のコナン・ドイルはこの事件でホームズの物語を終わりにするつもりであったことはシャーロキアンならみな知っている。

 シャーロック・ホームズが変装が好きだったこと、変人だったこと、単なる推理ばかりの探偵ではなく、武闘派だったことは知られていることだが、ここまでアクション豊富な生き方をしていたわけではない。

 本来のホームズとは違うが、この映画のホームズの物語も文句なしに楽しめた。大戦前夜のヨーロッパという味付けが物語にリアリティをもたらしている。

 蛇足だが、ワトソン博士(ジュード・ロウ)がこの物語の中で結婚する。昔はベイカー街のハドソン夫人の家で同居していたが、当然別れて暮らしている。ホームズはワトソンを友人以上の存在として意識している。もちろんホームズはホモセクシャリストではない(その証拠に、モリアーティに使われている、悪女でありながら憎めないアイリーン・アドラーを愛している)が、それに近い思いを抱いていることは、ワトソンの結婚をあまり喜ばず、焼きもちを焼いているとしか思えない行動からうかがえる。

 だいたい探偵のコンビにはこのようなケースがしばしば見られる。明智小五郎と小林少年などはその典型的なものだ。バットマンとロビンもその口か。上げていくと切りがない。まあ男の友情には少なからずそのような要素があるのかも知れない。

レアアースで首を絞める

 レアアースについては以前にも言及した。中国のレアアースは世界の埋蔵量の30%を占めているが、生産量は一時は世界の90%を超えていた。これは中国が世界のシェアを獲得するために価格を下げたためである。レアアースは精製時に環境汚染物質を大量に生み出す。その対策のコストがかかるのでなかなか安価にすることは困難だ。しかし中国は環境汚染対策を行わないことでコストダウンを行った。各国のレアアース生産企業は採算が合わずに閉鎖に追い込まれた。そのため日本をはじめ、レアアースを必要とする企業は中国から購入するしかなくなった。そこへ中国は突然の値上げを実施(十倍以上に価格が跳ね上がったものもある)、なおかつ供給量を一方的に減少させた。レアアースは中国の戦略資源と位置づけられ、日本に対しては特に供給量を絞ることで力を見せつけた。これは世界中の反発を浴びることとなり、日本、及び欧米は相次いで世界貿易機関に提訴を行い、中国は不当であるとの裁定が下されている。

 世界中は中国に頼ることのない方法を必死で模索、中国以外での生産が再開されだした。特に日本ではレアアースをなるべく使わない技術、そしてレアアースを回収して再生使用する技術が進み、使用量が半減している。さらに日本近海でレアアースが発見されるに及び、中国からの購入量が激減している。中国は輸出量のピークだった年よりも2012年の実績は三分の一以下に減り、価格を半値にしても売れない状況のようだ。価格が少しくらい高くても中国から買わない、と云う国がほとんどとなってしまったのだ。

 と云うのが日本側から見たレアアースの状況なのだが、中国のメディアがそれをどう捉えて報道したのか。

 中国は世界のためにコストを度外視して供給に努めてきた。しかし資源量にも限界があり、資源保護の意味から生産量を制限せざるを得なかった。さらに環境対策のためにも生産量を減らさざるを得なかった。それに対して各国は中国からの輸入をやめるという手立てに出た。各国は中国のレアアースを狙って価格を下げさせ、供給量を増やさせようと結託して圧力をかけている。中国の資源を他国が支配しようとするのは不公平なことであり、不当である。

 中国の論理は相変わらず自分勝手で、笑わせてくれる。

 今の中国のレアアース生産業者は過剰生産がなかなか止まらずに供給先を求めて苦戦している。中国国内のレアアースの需要を高めるように政府に強く求めているようだが、今でも飽和状態なのに急に需要が増えるはずもない。鄧小平は中東に原油があり、中国にはレアアースがある、とその戦略的な意味を語っていた。尖閣をめぐって、報復のためにレアアースの最大の輸出先である日本への供給を大幅に制限したことで、レアアースの戦略的意味を失うことになってしまった。

 金の卵を産むはずのガチョウが今瀕死のようだ。香港の新聞は、レアアースで日本の首を絞めようとしたが成功しなかった、と論評している。

 代わりに新疆ウィグル自治区で大量のウラン鉱脈が見つかったというニュースがあった。これまで中国はウランが取れない国とされてきたが、原子力発電の燃料はこれで一息つけそうであるという。しかしそのことが中国にとって将来的にしあわせかどうかは分からない。

ウォン高

 自民党が衆議院選挙で大勝し、安倍首相誕生が明らかになって以来、円安が進んでいる。今のままなら90円を超えるのは間違いないように見える。10%以上の円安であり、輸出企業は海外の製品価格について10%余裕が出来ることになる。

 当然円を売ってドルを購入する動きがあるからこのような事態になっているのだが、たくさん印刷されたドルがドルとして戻ってもアメリカも投資家も利益にならない。当然どこか割安で値上がりが期待出来る通貨を購入する。そのターゲットが韓国のウォンだ。

 円安が進むのに合わせてウォンが買われ、今のままだと20%のウォン高は確実だと云われている。日本は狙い撃ちされて1ドル110円台から80円まで値上がりしたため、輸出企業は大打撃を受けた。それに反してウォンは相対的に安いままであり、30%以上のハンディがあれば競争にならない。韓国メーカーはこのハンディを生かして世界中で日本製品に打ち勝ち、席巻した。

 安倍首相の、不退転の日本再生の姿勢表明は既にこれだけの結果を出している。この状況はまだ一月足らずのことであるが、このまま半年、一年続くようなことになれば、ウォンは実力に応じた価格に高止まりする。韓国経済の凋落が始まるだろう。日本は韓国が苦難の時に常に助けてきた。それに対しての昨今の仕打ちである。竹島問題の強硬姿勢に対し、日本政府は新たなスワップを停止する、と通告したが、韓国はせせら笑った。そんな事では韓国はびくともしません、と云うわけだ。

 韓国は人口が日本の半分しかないから、輸出でしか経済を伸ばすことも維持することも出来ない。その国の通貨が値上がりしていることの恐ろしさを思い知ることになるだろう。おごる者は久しからず。

限界突破

 12日、13日と中国各地で濃霧が発生している。この霧は気象上の要因だけではなく、大気汚染によるものだ。

 中国中央テレビは、大気汚染の状況をトップニュースで伝えるとともに、車両の利用を控えるよう呼びかけた。

 この濃霧により、道路の渋滞や車両事故が多発、航空機の運航への支障が発生している。それよりも深刻なのは健康被害である。中国では大気汚染を空気品質指数、と云う形で数値化しており、最高値が500に設定されている。これ以上は観測器の限界を超えてしまい測定出来ないのだという。要するにあり得ない数値なのだ。

 ところが河南省の一部地区ではこの指数が500であったという。つまり実際は500以上であったということであり、限界を突破してしまったというのだ。現在各地で呼吸器系の異常を訴える市民が病院に殺到しているという。晴れない霧はないから風の向きが変われば文字通り雲散霧消するのだろうが、原因物質は拡散しただけである。再びみたび同じ事が起こるだろう。

 中国の大都市は人口集中により、ますます巨大化している。インフラがそれに追いつくために必死で整備されているが、人口集中は限界を超えている。このような濃霧の発生は起こるべくして起きている。あまりに巨大な国の宿命かも知れない。

2013年1月13日 (日)

マドンナ

 あの歌い踊るアメリカのマドンナのことではない。夏目漱石が「三四郎」で、そして「坊ちゃん」で描いたマドンナのことである。

 そんなものは実在しないことは女だけではなくて男だって分かっている。そして男にとってマドンナは存在する。

 マドンナは男に冷たい。と云うより、マドンナに憧れる男に対して冷たい。マドンナは理解しがたいことに愚物には優しいのだ。

 マドンナの魅力は何より賢いことである。美醜は関係ない。男が馬鹿であることを知っていること、そしてバカな順番から許せる人である。そして自分自身を知らない人である。

 マドンナに憧れて悶々とした夜もあった。今一人であることに無上の喜びを感じながら、マドンナに欲望する。

深町秋生「ダブル」(幻冬舎文庫)

 かなり切れている女刑事八神瑛子が主人公の「アウトバーン」「アウトクラッシュ」は過激で楽しい小説だった。その作者によるちょっと変わったハードボイルド小説。

 このような小説で見せられる主人公や犯人の凄まじい生い立ちは息を呑むほど凄まじい。ここに作者の全精力が傾けられているのかと思うようなものもある。この小説でも主人公はそのような凄まじい生い立ちを弟とともに生き抜いて立派な犯罪者になっている。

 彼等が所属している組織は鉄の規律をもとに統率され、わずかなほころびも許さない。そして彼等兄弟をそこまで引き上げた師であり、兄貴分の抹消の指示が兄弟に下される。首尾よく仕事を終えた後にその理由が明かされて、兄弟は自分自身の存在そのものに懐疑を覚えるほどの心の傷を受ける。

 そしてその組織のトップは肉体的にも最強にして知能、胆力も群を抜いているという人物である。そして当然ながら血も涙もない。

 そして弟が壊れ出す。そして弟を分身と思う主人公の目の前で弟は殺され、自分を愛する人を殺され、自らも銃弾を受けて死んだはず、の主人公が、新たな生を受けて選ばされた文字通りの修羅の道こそが、この物語の後半である。

 ハードボイルドのクールに見える男ほど実は熱い、と云うのは定番なのだが、これでもか、と云うエスカレートした描写こそ、そのテーゼを飾るアクセサリーなのだ。一気に読んだというのは面白いと云うこと。

 ちょっと酩酊しているのでごめんなさい。サントリーの角をストレートで飲みながら、チェイサーでビールを飲んでいるところであります。

日本は危険か?

 中国のネットで、中国人が現在に日中関係の状況下で日本に行くことは危険かどうかという設問が立てられ、寄せられたいろいろな意見が紹介されていた。

 「当然危険だ」「地震や津波は避けられない。分かっているのに行って何かがあればバカにされる」「危険だから絶対にいくべきではない。中国車を見たら破壊される」などという意見が圧倒的に多かったようだ。

 日本人が反日感情を持つ中国人により、何人か中国で奇禍に遭ったように、日本でも中国人に対する反中感情があるから危険だ、と思い込んでいる人が多いからだろう。

 もちろんあの反日デモや暴動を見聞きし、尖閣での理不尽な中国の行動を見続けていれば、中国に嫌悪を抱いている日本人は数多くいるだろう。中国人の留学生がアパートを借りようとしても断られる、などという話は良く耳にする。そして日本人全てがまともだとも言い切れないから、中には中国人に危害を加えようという馬鹿者がいないとは限らない。

 しかしながら中国で日本人が奇禍に遭う確率よりも日本で中国人が奇禍に遭う方が遥かに少ないだろうことは間違いがない。日本のことが分かっている回答者たちからは「日本人は親切で、日本の方が遥かに安全だ」という意見が寄せられていたようだ。ナショナリズムの暴走は正論を押しやり、最も危険である。中国政府は保身のためにナショナリズムを煽り、危険な方向へ自国民を、そして周辺諸国へ導こうとしている。これこそが最も危険なことだ。

 別の設問では「もしも日本国籍が取得出来るとしたら、欲しいか?」という問いかけがあった。そんなものは要らない、と云う回答よりも取れるものなら欲しい、という回答が圧倒的に多かったようだ。そして日本国籍を取得したら中国に住みたいという意見が多かった。理由が面白い。

 「日本国籍を持っていると周囲の待遇がずっと良くなる」「結婚相手を捜す苦労がなくなる」などというのだ。なんと日本人は特別扱いされる存在らしい。思っても見ないことであった。それにひきかえ日本で中国人が優遇されている、と云うことはあまりない。この辺は日本に来た留学生などには不満を持たれることにつながるかも知れない。優遇はしなくてもせめて対等につきあえるようになれるといいね。

「名探偵ポワロ」

 アガサ・クリスティが造形したベルギー人の名探偵、エルキュール・ポワロの解決した数々の事件の物語はたくさんテレビや映画になっている。ピーター・ユスチノフ主演のイギリス製作の映画が特に有名で、私もいくつか映画館で見た。

 そのイギリスで、1989年以来不定期でテレビドラマが製作されている。昨年、衛星放送で最新の4作が放映されたので録画しておいたのだが、昨日その4話を一気に楽しんだ。ポワロ役はデヴィッド・スーシュ。アガサ・クリスティの造形したイメージにはピーター・ユスチノフよりもずっと近い。

 ネットで調べたらこの4話は第62~65話に当たるらしい。
 第62話 三幕の殺人
 第63話 ハロウィーン・パーティ
 第64話 オリエント急行殺人事件
 第65話 複数の時計

 BSでは「三幕の殺人」「複数の時計」、「ハロウィーン・パーティ」、「オリエント急行殺人事件」に順番が変えられている。この変更には私も賛成だ。特に一気に見る場合にはその方が好い。

 「三幕の殺人」はポワロも自然死とみなしたものが実は毒殺だった、と云う話。「複数の時計」はドイツのスパイの話。ポワロが活躍していたのは第一次大戦と第二次世界大戦の狭間、ナチスが台頭しつつある時代である。「ハロウィーン・パーティ」は地方の村で起きた、子どもが殺された事件。金田一耕助か関わるような土俗的イメージがある。「オリエント急行殺人事件」はあまりにも有名な密室殺人事件である。

 画面の色調は毎度云うが私の好きなイギリス調のややダークなもの。しかもパンフォーカス(画面全体にピントを合わせる撮り方)を基調にしながら、必要に応じてバックだけでなく画面全体のピントをアウトフォーカス(わざとピントを外す)という巧妙なものだ。全て面白かったのだが、特に何度も見てトリックも知り尽くしているオリエント急行が、出色だった。解っているのに面白い、と云うのは傑作の所以である。

 1話が正確に90分、4話全てで6時間である。間に食事をしたり風呂に入ったりしていたので、昨日は夜遅くまでこれにかかり切りになった。しかも興奮して寝付けなくなって、久しぶりに大好きな「大戦略」ゲームをしていたら夜が明けてしまった。その後一眠りして起きたのだが、喉が痛くて体がだるい。熱はなさそうだが風邪のおそれがある。本日はおとなしく一日過ごすことにした。

2013年1月12日 (土)

公式見解

 ホワイトハウスにはインターネット請願サイトがあり、特定の事案について一ヶ月以内に25000人以上の署名が集まった場合、それに対して公式見解を出すことになっているそうだ。

 「日本が独島(竹島)領有を主張して国際司法裁判所に提訴することに反対します」と云う署名が25000人を超えた、と韓国メディアが次々に報じている。

 実はある日本人が昨年九月に「竹島に関する日韓の領土紛争は、国際司法裁判所で解決しなければならない」という嘆願書を出したことに対して3万人以上が署名したいるのだそうだ。今回はこれに反論するものなのだ。

 韓国メディアによると、今回の請願を出したグループは「独島は韓国領土であるということは歴史的、地理的に日本との紛争の対象ではなく、独島紛争はそもそも日本が領土拡張の目的で韓国を侵略したことから始まったことだ」として「この紛争は法廷では解決出来ない」と主張しているという。

 何だか中国との尖閣問題の裏返しみたいな主張に聞こえるが、論理的ではない。どうも裁判をしたら明らかに負けるから、裁判をやらないためのお墨付きを下さい、と云っているようにしか聞こえない。

 韓国は日本に正しい歴史認識をせよと主張する。しかし竹島が李承晩という当時の韓国の大統領の一方的な線引きのもとに自国に不法に取り込んだことは隠しようのない歴史的事実である。日本に歴史認識を求める前に歴史をもう一度見直したらどうだろうか。戦後のどさくさに紛れてこのような違法なことをしたことを韓国民は知らされていないのだろう。

 現在であればそのような無法は通らないはず、と思っていたら中国が平然と同じ事をしようとしている。これに関して云えば確かに韓国の方がウリジナルだ。

 さてホワイトハウスはどんな公式見解を出すのだろうか。

矢月秀作「もぐら 醒」(中公文庫)

 もぐらシリーズはこれが四作目。前作の「もぐら 乱」で打ち止めにしてもう読まない、と決めていたのについ買ってしまった。ところがこれが思った以上に面白かった。

 今回はヴァーチャル世界から人を犯罪行為にそそのかす犯人ともぐらとの戦いである。敵ははじめは特定の人物ではない。そしてプロでもないから一人一人であればもぐらの相手にもならない。だが不特定多数が次々に果てしなく襲ってくる恐怖、しかも自分の個人情報を全て知られて、関係ある人々まで巻き込まれていく恐怖は想像を絶する。今回も凄惨な犠牲者が出る。

 さいわい敵がだんだん実態として見えてくるとともにもぐらは生き生きと戦いにのめり込むことが出来る。

 ヴァーチャルと現実の境目を見失ったゾンビのような人間たちという新しい敵の造形は私にはユニークで面白かった。

2013年1月11日 (金)

四方田犬彦「人間を守る読書」(文春新書)

 映画批評家にして大学教授であり、サブカルチャーなどにも深い造詣のある著者の書評とブックガイドの本である。

 著者はマイナーなものを通して文化を、そして世界を解釈しているようである。だからユダヤやパレスチナ、同性愛者などの視点を重視する。これは私のような常識人にはついていくのがつらいのだが、あまりにも説得力があるのでそういう見方、そういう世界もありか、などと今まで考えたこともない考え方を識ることになった。

 取り上げられている本は日本映画に関するもの以外、私がほとんど出会うことのないものばかりだ。この中には結構詩の本も紹介されている。私には苦手な分野なのだが、著者のおかげでその輝きのようなものを感じることが出来た。

 紹介されている一冊一冊についてずいぶん考えさせられたりしたので読み終わるのに時間がかかったが、それは充実した時間でもあった。ただしかなりエネルギーが必要なので、もう一度読もうとは思わない。

 昔から書評の本は好きだ。久しぶりに読み応えのあるものを読んだ。この何分の一かの書評が出来れば有難いのだが・・・。書評好きな人にのみお勧め。

北方領土

 二月に森喜朗元首相がロシアを訪問することが内定している。北方領土返還を交渉するのが大きな目的だが、既にロシア側からまず二島乃至三島の返還を提案していることをテレビの番組(BSプライムニューらしい、時々見ているのだが、ちょうど見そびれてしまった)で森喜朗氏が明らかにしたらしい。

 それに対してマスコミは、日本政府はあくまで四島一括返還の方針だからおかしいのではないかと報道した。それに対して、管官房長官は、日本政府が四島一括でなければ交渉しないなどと決めたことはないと明言した。そのとおりであって、それにこだわって交渉をぶちこわしたのは当時の田中真紀子外務大臣であった。このようなゼロか100かしか考えられない人間が交渉に関与すると何事も前進しない。少しでも前進したらそれを良しとし、さらに次の目標に向かってさらに粘り強く進める努力こそが交渉である。

 管官房長官は、北方領土四島の主権が日本であることを前提に返還が段階的に行われることはあり得ることだ、と述べている。今現実にそれぞれの島に生活している人々がいて、経済活動が行われている。手順が必要であることは当たり前のことである。

 ロシアは極東情勢を鑑み、またガスパイプラインの設置をもくろんで、何よりも日本との平和条約を結びたがっているように見える。千載一遇のチャンスなのだ。対中国、対韓国を考えれば、いまロシアのアプローチに乗らない手はない。このことがTPPも含めてのいろいろな交渉に必ずプラスに働き、中国に対する牽制にもなる。

 本日中部電力は天然ガスを韓国の会社と共同で一括購入する契約を結んだ。韓国は日本よりも安く天然ガスを購入しているし購入量も多い。こう云う努力が、中部電力のみ電気代値上げを行わないという結果をもたらしている。他の電力会社は努力が足らないのではないか。このような行動が、ロシアへの牽制にもなり、日本のガス購入価格の引き下げにつながってくる。リスクをとらなければ危機は打開出来ないのだ。

国家ブランド指数

 韓国国家ブランド委員会(!)とサムスン経済研究所が2012年度の国家ブランド指数(初めて聞いた)の調査結果を発表した。この調査は26カ国のオピニオンリーダー13500人を対象に行ったものだという。

 それによると国家ブランドは、第一位がアメリカ、第二位がドイツ、第三位がフランス、四位が英国、五位が日本であり、ブランドイメージは一位がアメリカ、二位がドイツ、三位が英国、日本が四位、五位はスイスだそうだ。日本のブランドイメージは前年が一位だったが、大きく後退した。

 韓国は前年から2ランクアップして13位だそうだ。これについてPSYが歌う「江南スタイル」が世界的にヒットしたことにより、大きく国家のイメージが上がったことが寄与しているとしている。

 あの「江南スタイル」というのは欧米で大ヒットとなり、アメリカのヒットチャートでも一時は第二位を獲得、坂本九の「スキヤキ」以来だと騒がれていた。しかし日本では全く流行らなかった。マスコミなどはもしかしたら流行らせようとしたのかも知れないが、多くの人はそんなものに乗せられなかったことは、日本人として欣快に堪えない。

 もちろん発表では理由を江南スタイルのみを上げているわけではなく、オリンピックのめざましい成績も上げているのだが、ロンドンオリンピックの判定に対する抗議のほとんどに韓国が関わっていたような印象が世界中の人々に残されたことも間違いない。さらに表彰式での政治行動もあった。

 韓国の調査であるから韓国に好意的な結果が出るのは当然だろう。それでも13位だと云う事にいささかでも反省するのであればこの調査も意味があるだろう。しかし前年そのような調査にもかかわらず日本が一位だったことを意外に感じる。こんな調査で急落してもどうと云うことはないのだ。何せあの「江南スタイル」で順位に変動が出るような調査なのだから。

飛び級

 世の中には頭の使い方が格段に旨く出来る人というのがいる。ヘディングがうまいというのもそうだが、今は中身の話だ。

 人間の脳というのは大きさや重さは人によって何倍も違うわけではない。また知能が優れている人の脳が特にそれに見合って大きく重いというわけでもない。車のエンジンのように排気量や馬力が違うわけではないのだ。私のイメージではそのシステムが生まれつき効率の好い人がIQの高い人なのだと思う。そして効率が良ければそれを使うことが快感であろうから、その道具としての知識を取り込む努力も効率よく行うことが出来てどんどん差が出来ることになるだろうと推察される。天才や秀才というのはこう云う存在なのだろう。

 テレビの番組で、このような人並み優れたIQの持ち主を先進国では飛び級などで特別扱いし、その能力を国家の財産として生かそうとしているのに、日本ではせいぜい大学の一部が高校二年生からの入学受け入れを実施しているに過ぎないことを取り上げていた。安倍首相はこのような教育現場の状況を変えようという意思表明でもしたのだろう。

 残念ながら、というか、さいわいにと云うか、私自身も子ども達もそのような効率の良い頭の持ち主ではないので、このような話は人ごとでしかないのだが、ここで番組の雛壇のコメンテーターの意見や街頭インタビューの意見に興味を覚えたからだ。

 そのように優れた子どもと言っても全ての科目が優れているわけではないのだから、全人教育として他の子どもと同じように育てて特に優れたところが伸ばせるようにしたら良いという意見が多かった。中に、同じ年齢の子どもの中にいる方が本人にとってしあわせだから特別扱いしない方が好いという意見があった。

 世の中にゆとりがないとそのような英才教育というシステムを取り入れることは難しいだろう。だからそれが云々されるのは平和な証拠だ。

 また横道にそれそうになった。問題はそういう話ではない。テレビで語られるコメントのほとんどに、結果の平等を判断の基準にしているようなものが多い事が気になったのだ。

 乱暴に云えば、民主主義は機会の平等、社会主義は結果の平等を社会正義の基準にしていると私は考えている。このことを説明していると議論が果てしなくなるからこれから時々小出しにすることにしておく。

(結果の平等こそ社会正義の基準である、と云う思想を文字通りに国家で実験したのが毛沢東だった。今「毛沢東の大躍進」という本を読み始めたところである。それがどれほど悲惨な結果を生んだのか、この本を読んでいるとよく分かる。ヨーロッパでベストセラーになり、数々の賞を取った本なのだが、店頭で購入して初めて知った。)

 人は生まれつき平等ではない。どんな家に生まれたのか、容姿や身体能力、知的能力も違う。だからシンプルに機会の平等を謳うだけではハンディがありすぎる、と云うことで、そのハンディを緩和する方策がとられてきた。日本が中国や北朝鮮以上に社会主義社会だと云われる所以である。

 ただそのような緩和策(社会保障制度など)の充実はあくまで機会の平等を目指すための補完的な制度なのだが、人は何時の間にかそれに慣れ、結果の平等を正義であると勘違いする。これは日教組の長年に亘る努力の成果(彼等は社会主義が正義だと信じていた)でもある。またマスコミも少数者や弱者をことさらに取り上げることでそれに荷担してきた。フェミニズムや同性愛者を支持する過激な一部の人々にもその価値観が強く感じられる(突っこみすぎると怖いのでやめておくが)。

 まず機会の平等を前提に考え、機会があまりに不平等ならその緩和策を考えるべきで、結果の平等を基準にするべきではないことに気が付いて欲しい。

2013年1月10日 (木)

財閥

 韓国の上場企業(製造業)1345社の2012年第一~第三四半期の売上高と営業利益、純益が発表された。

 売上高の合計が909兆3000億ウォン、営業利益の合計は56兆8000億ウォン、純利益は47兆3000億ウォンであったという。(100ウォンが約8.3円)

 問題はその内の10大財閥の占める割合である。10大財閥に含まれる企業は1345社のうちの80社である。

 売上高に占める割合が54.2%、営業利益の占める割合が74.5%、そして純利益は78.1%だったそうだ。つまり上場企業の6%の財閥系の会社が、8割近くの利益を独占しているということである。

 これはサムスンをはじめ、財閥を国家をあげて最優遇して盛り立ててきた李明博元大統領の功績に他ならない。

 財閥にあらねば人にあらずという気風が懸念される。財閥が栄えて国も栄えているが、分け前にあずかれない国民も多いだろう。世の中は何があるか解らない。右肩上がりはいつか終わる。その時に国民はこのことに不満を感じるだろう。

 成る程、これを回避するために李明博は竹島問題をことさらに取り上げてナショナリズムをあおり立てたのか。国内に不満がたまりそうなら外部に敵を作れというわけだ。財閥に命令されて李明博は竹島上陸を強行するというパフォーマンスを行ったのかも知れない。

最新河野洋平談話

 前衆議院議員議長で、日本国際貿易促進協会の会長である河野洋平が、新年会で日中関係改善を強く政府に求めるとともに「日本経済は中国経済無しでは発展出来ない」と述べたと中国のメディアが報じた。

 この人は慰安婦問題でも韓国に迎合する意見を公言して結果的に日韓関係を損なったと私は思っている。今回の発言も中国に迎合する言葉で、日本を中国の風下に捉えるものだ。

 中国との関係が日本にとって重要であることを否定する人間などいない。しかし中国がなければ日本が発展出来ない、と云う言い方はあまりにひどい。中国と日本はあくまで対等である。中国がなければ困るから中国の前に拝跪せよとでも云うのか。今言いがかりをつけて理不尽なことをし続けているのは中国であることは中国人でも知っている。

 今日本人は万一を考えて、中国なしでもやっていける日本にすることを必死で考えるべき時だ。手立てを尽くし、覚悟を決めれば自ずから道は開かれ、助ける国も出てくる。最も忌むべきは、みずから妥協を繰り返し、世界中からさげすまれる国に成り下がることだ。世界は見ている。この河野洋平の言葉が中国で報道された通りであるならば、このような時に、中国メディアが嬉しそうに報道するような文言を軽薄に吐いた人間として彼を軽蔑する。これは精神の問題である。

映画「ザ・レッジ 12時の死刑台」2011年アメリカ映画

 監督マシュー・チャップマン、出演チャーリー・ハナム、リブ・タイラー、パトリック・ウイルソン、テレンス・ハワード。

 いやあ見る前には予想もしなかったほど良い映画であった。LEDGEと云うのは建物の水平に付き出した出っ張りのことを云う。その通り建物のその出っ張りの上で飛び降り自殺しようとする男(チャーリー・ハナム)とそれを説得してやめさせようとする刑事・ホリス(テレンス・ハワード)とのやりとりが物語の縦筋である。刑事の問いかけの中の「飛び下りようとするのは自分の意思か?」に対して男は首を横に振る。ではなぜ飛び下りようとするのか、それが延々と語られていく。

 そして同時に刑事のホリスにも実は抱えている大きな問題があった。

 詳しい説明はこの物語をこれから見ようとする人にとっては大変な迷惑となるのでやめておく。それほどこの映画は最後までその理由と結末が見えない。それなのに緊張感と共に全く緩むことなく観客を惹きつけ続ける手腕は見事なものだ。

 久しぶりに良い映画を見た。リブ・タイラーがほとんど化粧なしに近い状態で演じている。大柄な女優でやや色気に欠けると思っていたが、何の何の、まことに官能的であった。

 主演のチャーリー・ハナムはブラピ似のハンサムで、ホリス役のテレンス・ハワードともども演技が素晴らしく、好きになった。

 この映画が評判にならないのはおかしいくらいだが、ちょっと宗教論的なところやテーマが重いことが災いしているのだろうか。それでこれだけ面白いのだから文句なしに良い映画だと思う。こう云う期待していなかった映画が良い映画だととても嬉しいものだ。

映画「インモータルズ 神々の戦い」2011年アメリカ映画

 監督ターセム・シン、出演ヘンリー・カヴィル、スティーヴン・ドーフ、ミッキー・ローク。

 ギリシャ神話を題材にした物語で、テセウス、ミノタウロス、ティタノマキア、さらにオリンポスの神々が登場する。

 テセウスの物語は、ユリシーズの物語に負けず劣らず壮大で、その冒険譚の中に、ミノタウロスという迷路の中に住む牛頭人身の怪物を退治する話がある。これを助けたのがミノス王の娘アリアドネーであることは有名だ。

 ティタノマキアは地底人で、タイタンの由来でもあるのではないか。そもそもは天上での闘いでゼウスに負けた神々だとも云われる。テセウスの話には出てこない別の話だ。

 この映画では、ミノタウロスを神を恐れぬ暴虐な王(ミッキー・ローク)として描いている。アメリカ映画らしく、アテネを攻めるミノタウロスとそれを守るテセウス(ヘンリー・カヴィル)の戦いをスペクタクル映画として描いているので、本来のギリシャ神話(と云うほど知らないけれど)とは全く違うものになっている。

 そしてその戦いの最中に、地下に封じられていたティタノマキアたちがミノタウロスに呼び出され、天上の神々との戦いへと転じていく。何せもと神様だから猛烈に強くて人間では全く歯が立たないのだ。神々の戦いは3年続いたとも10年続いたとも云われている。

 映像の色調はダークでパンフォーカス、あの傑作「300」とよく似た絵づくりだ。だがあまりにも膨大な話をつまみ食いしたためにやや展開がわかりにくくなってしまった。やや残念な映画だ。

 息子に、この映画の続編はつくられるのだろうか、と聞かれたが、多分続編はないだろうと答えておいた。

つらいこと

 日本で暮らしていた中国人が中国に帰って一番つらいことはトイレだと云う。

 中国のトイレは、昔は扉がなかったり、あっても鍵がなかったりした。けれど掃除は大抵キチンとされていたから不潔ではなかった。今は田舎はいざ知らず、都市部は公衆トイレも新しくきれいになってほとんど日本と変わらない。

 ただ私も最近感じることだが、ウォシュレットのトイレがないことがつらい。これは自宅のトイレをウォシュレットにしてからだ。どうも肛門が軟弱になってしまったようだ。今は日本では高速のサービスエリアをはじめ、ビジネスホテルや民宿でもウォシュレットのトイレが大抵ある。でも海外でウォシュレットのトイレのあるホテルに泊まったことはない。

 外国人も日本でウォシュレットを経験すれば、その清潔さと快適さを実感して次第に普及するかと思ったら、一部の成金が据え付けるだけでほとんどまだ世界には広まっていないようだ。これは日本人の清潔感がちょっと過剰なのかも知れない。そして水がふんだんに使える日本だからこその文化なのかも知れない。海外ではそこまでトイレにコストをかけることが異常に見えているような気がする。外国人は意外にケチである。

 自国のトイレがつらいと感じることはその人がそれだけ日本化したことに他ならない。

視線を感じる

 一人暮らしをしている娘のドン姫が風邪でダウンして家に帰っていたが、ようやくきのう復活して自分のアパートに帰っていった。仕事もきのうから復帰。こんなにまとめて休んだのは初めてだ。かなり丈夫な娘なので、数日間も寝込むなどと云うのは珍しいが元気になって良かった。

 いなくなると正直寂しい。でもずっといるとお互いにうっとうしくなる。どん姫のいる間はそちらに気をとられて読書も映画を見るのも少し少なくなくなった。ところで彼女がいないのに彼女の視線を感じてしまう。これはどう云う精神的働きであるのか。普段は自分一人で暮らしているが、彼女がいたことで心の一部が彼女を常に意識していた名残のようだ。

 ドン姫よ、時々帰って来てね。美味しいものつくるから。

2013年1月 9日 (水)

映画「忍者狩り」1964年東映映画

 監督・山内鉄也、出演・近衛十四郎、佐藤慶、山城新伍、天津敏。

 江戸時代初期、徳川幕府は外様大名(豊臣の臣下だった大名)の取りつぶしを次々に行っていた。折しも外様大名の伊予松山藩主の余命がいくばくもなく、嫡子相続願いが幕府に提出された。特に瑕疵もなく、間もなく認可され、お墨付きが下される。これを機に何とか取りつぶし出来ないか、幕府の画策が始まる。嫡子が正式のお目見えをしてしまえばチャンスを失う。その前にお墨付きを奪うよう命を受けたのが甲賀忍者の闇の蔵人(天津敏)であった。お墨付きを失うという失態を理由に取りつぶしをしようというのだ。

 松山藩は既に取りつぶされた藩の腕利きの浪人四人を忍者狩りに雇う。忍者がどう云う手段で動くのか知悉しているとみたのだ。ここから闇の蔵人の集団と、四人の浪人による虚々実々の戦いとなる・・・のだが、物語の展開が極めてのんびりしている上に殺陣に迫力が全くない。特にラストの闇の中での天津敏と近衛十四郎の闘いがかったるい。

 白黒であることは特におもしろさを削ぐものではないが、時代劇の殺陣の迫力がないのはいただけない。

 天津敏はテレビの「隠密剣士」の時の風魔小太郎などの悪役をしていたことを懐かしく思い出した。この人は顔だけで迫力がある。「燃えよドラゴン」の時のあの片腕の親玉によく似ている。

 山城新伍が敵のくノ一の色仕掛けにコロリといくのがとってつけたようでもあるし、さもありなんとも云えて笑わせた。

 NHKBSで放映したので楽しみにしていたのだが、90分の映画なのに長く感じた。ちょっと時間の無駄であった。NHKBSもなんでこんな作品を突然放映したのだろう。

辰巳渚「『捨てる!』技術」(宝島社新書)

 ベストセラーにもなった本なので特に女性でこの本を読んだ人は多いだろう。ではその人たちがはたしてものを捨てることに成功しているのだろうか。

 もちろん捨てることが目的なのではない。ものがあふれていることが豊かな生活だと思い込まされて、気が付いたらものの中で溺れている自分を発見する。整理しよう、片付けようと思い立ち、収納にいそしむのだが、しょせんただものを分類して置き場所を移動しているに過ぎない。

 自分が片付けが苦手なのだと諦めかけていた時にこの本が登場したのだ。ものは捨てなければ片付かない、我々の生活には不要なものがあふれていることをこの本が教えてくれたのだ。

 ところがところがはてさて私はものを捨てることが出来ただろうか。
思い立って多少のものを捨てたのはいつの日か。気が付けば以前よりものが増えている。

 購買心を煽るコマーシャルのせいにばかりするわけにはいかない。ものを死ぬまでに使い切れないことが見えてきた今日この頃、そろそろもう一度真剣に「捨てる」ことを実践しなければならない。

 というわけでこの本を読み直した。とりあえずこの本を参考に何を捨てるのかについての大まかな優先順位、つまりスケジュールを立てることにした。幸い金はないが時間だけは沢山ある。本については一巡したので、次は衣類と靴箱にまず手をつけることにしよう。さあ、成果のご報告が胸を張って出来るかどうか、あしたのこころだあ(小沢昭一風に)。

民主化と腐敗撲滅

 南方周末の新年の巻頭記事が地元(広東省)共産党宣伝部の部長の指示で書き換えられたと云う事件が明るみに出てから、マスコミ関係者たちがそれに対して抗議行動を行い、同調した市民もそれに加わっている。

 それに対して「南方周末」などの関連キーワードがネット検索出来なくなっている。さらに抗議デモに参加していた一部市民が警察に連行されたとの情報もある。

 さらに環球時報は社説で「メディア管理における共産党の原理原則は変わらない」「改竄を指示したとされる広東省共産党委員会の宣伝部長はこの件に関与していない」「この件には国外の敵対勢力が関与していた」と報じ、さらに中国共産党の宣伝部は、全国の各メディアに対してこの社説を掲載するよう命じたという。

 明らかに無理筋の強硬な態度なのだが、この件で共産党が妥協することは多分あり得ないことなのだろう。これが習近平新体制の方針の、ある意味では中国国民へのお披露目なのであろう。

 これからしばらくもぐらたたきのもぐらのように民主化を求める意見が報じられ、それを規制する、と云う対応が続くことだろう。中国は経済的に右肩上がりを続けてきたが、それ以上に貧富の差が大きくなっている。そして富が著しく偏在しつつある。その原因は中国全体に蔓延している腐敗の構造である。そして中国共産党の一党独裁体制が、腐敗の源であることを国民も共産党自身もよく分かっているから「腐敗撲滅」が叫ばれる。

 しかし「腐敗撲滅」は自分が権力の立場に立って、その利益にあずかる機会があっても拒否する人たちによってこそ可能なことである。その機会のない人たちが嫉妬で叫んでいても、その立場になれば平然とその利益を享受する人たちばかりの中国で、そんな事はあり得ない。腐敗体制は中国四千年の歴史そのものだからだ。

 中国が経済的に停滞した時こそ大きな変動が起こるだろうことは誰もが解っていることだから、中国政府は他国などお構いなしになりふり構わず自国の利益のために突き進むだろう。この変動は多くの犠牲者を生む。これは歴史を見れば明らかだ。何しろ共産党は命がけなのだから「信義」や「正義」、「公正」などと甘いことなど言っていられないのだ。

2013年1月 8日 (火)

長谷川慶太郎&泉谷渉「石油からガスへ シェールガス革命で世界は激変する」(東洋経済)

 シェールガスが埋蔵されているのは有史以前の太古の時代に大河だった場所だとみられている。だから大陸の大河のある場所には全てその可能性がある。現在それを実用的に採取出来ているのはアメリカだけであるが、ヨーロッパにも中国にも巨大な埋蔵量があることが分かってきており、アメリカよりも中国の方が埋蔵量が多いらしい。残念ながら日本には実用化出来るほどの埋蔵量はない。

 特筆されるのはこのシェールガスは、原油の極めて偏った局部的な場所ではなく、世界のあちこちに埋蔵場所があると云うことである。しかしながら掘削技術も含めてかなりハードルが高く、今のところ実用化出来ているのはアメリカだけである。

 シェールガスを天然ガスの代替として使用開始してからアメリカの天然ガスの単位購入価格は3ドルである。現在日本の購入価格は18ドルである。シェールガスは勿論この天然ガスより安い。1バレル100ドルを大きく超えていた原油価格が昨年後半から80ドル台に下落したのはなぜか。アメリカの状況から高値を維持出来なくなったのだ。

 同時にヨーロッパの天然ガス価格も、今まではロシアの言いなりで毎年10%ずつの値上げを飲まなければならなかったのが、ついに昨年から値下がりし始めた。ロシアの独占的なやり方について各国が提訴したことを受けたのだが、実際は原油価格に連動してロシアも天然ガスの値段を下げざるを得なくなったのだ。値段が10%下がるとロシアの利益は30%下がると言われる。

 ロシアは資源で国が運営されているに近い。製造業は競争力のあるものが少ない。利益が減れば国民の生活が一気に急迫する危険がある。強権で国を支配し続けたプーチンも、いったん国民生活が破綻すればその反発は恐ろしい。だから日本にすり寄り、日本にガスパイプラインを引いて高値で売りつけたいのだ。既にサハリンまではパイプラインが引かれている。まず北海道までつなげればいいので実現性は極めて高いのだ。ヨーロッパへ送られている天然ガスは、西シベリアで採掘されたものである。現在東シベリアでの天然ガスの採掘が始められようとしている。供給先として想定しているのが日本であり、韓国なのだ。現在中国向けとしては計画されていないようだ。それは中国が世界一のシェールガスの埋蔵量であることが明らかになっていること、そして中国が契約を守る国ではないことを嫌っているからだと言われる。値段も高く売れるし、交渉の楽な日本がまずターゲットというわけだ。

 シェールガスを採掘するには地中深くにパイプを下ろし、シェール層で横に掘り進まなければならない。このパイプの強度が問題で、長谷川慶太郎によれば日本の鋼管しか使えないのだという。さらに土木作業用の重機なども多くが日本製だそうだ。

 アメリカはこの掘削技術をEUには開示していくだろう。ヨーロッパでもシェールガスが採掘されるのはそう先ではないかも知れない。そうすればさらに原油も天然ガスもだぶつくことになる。これはドイツなどが進めている再生エネルギーへの転換に大きなダメージになる。再生エネルギーのコストがますます割高になり、関連産業が立ちゆかなくなる事態になるだろう。それでなくともドイツの太陽光発電の最大手は中国のメーカーとの競争に敗れて破綻してしまったところだ。石炭や原油での発電を天然ガスやシェールガスに転換することで二酸化炭素の排出量は削減される。しかもコストが安いのだから原子力発電も減らすことが可能となるのだ。

 アメリカは決して中国にはシェールガスの採取の技術を開示しないだろう。もちろんあらゆる方法で中国はその技術を入手するだろうけれど。
ただ中国にとって不幸なことは、最も埋蔵量の多い場所は新疆ウイグル自治区などであることだ。もちろん黄河や揚子江周辺にもあるだろうが、人が住んでいてなかなかプラントを立てにくい。ご承知の人もいると思うが、シェールガスは地上から高圧の地下水を地下に送り込んで、シェール層を破砕させ、その水と共にガスと油をとる。新疆ウイグル自治区には悲しいかな水かないのだ。しかも中国は国策で原子力と再生エネルギーに全力投球してきた。多分急には方向転換が出来ないと思われる。

 ところで巨大な資本投下が必要なシェールガスの実用化がこんなにも急ピッチで進んだのはなぜだろうか。これを進めたのは実はメジャーと言われる国際石油資本、大手の石油会社たちだったのだ。中東や北アフリカがアメリカのコントロールを離れてしまい、民族主義の台頭によってそれぞれの国に取り込まれてしまっているという事態、そして中国による世界の資源あさり、原油やガスを背景にしたロシアの復活など、メジャーの存在を脅かす状況に対して回生案としてシェールガスの実用化に資本投下したのだ。

 アメリカはこれで復活するだろう。多分今最もその事態を憂えているのはイスラエルではないかと思われる。なぜなら原油に対する依存度が低下すれば、アメリカは中東に巨額の費用をかけて軍事的な配備の必要がなくなってくるからだ。もちろん日本のタンカーの護衛もおろそかになる危険がある。ただ中期的に見れば中東そのものの資本が低下することになるので武器弾薬もふんだんに買うことが出来なくなるからいつかは静かになることだろう。ただの砂漠の貧しい国に戻るだけだ。

 しからば日本は?まずアメリカからシェールガスの購入の交渉をすることだ。既にある程度の了解の感触を摑んでいるとの情報もある。ただしアメリカからTPP参加などの条件がつけられる可能性は高いだろう。韓国も既に打診を開始しているようだ。一部でも購入が始まればすぐに天然ガスの購入価格が現在の18ドルから10ドルくらいになるのではないかと試算されている。これこそ脱原発への最も近道なのだ。日本国内の電気代やエネルギーコストが大きく下がれば、何もカントリーリスクだらけの中国などで工場を操業しなくても良くなるのだ。最優先に進めるべきだろう。

 さらに合わせて行うべきはメタンハイドレードの実用化だ。あれだけ困難と言われたシェールガスが短期間に実用化出来たのだ。メタンハイドレードも集中的に取り組めば必ず成果が上がるはずである。そうすれば、日本復活はますます加速するだろう。

 以上はこの本を読んだものに加え、NHKの情報やその他の情報を加味したものです。新年の初夢として景気のいい話を楽しんでもらえましたか。でもこれは嘘ではありません。実際の話です。

シェールガス

 シェールガスについて長谷川慶太郎&泉谷渉の「石油からガスへ シェールガス革命で世界は激変する」を読了したばかり(後で取り上げます)のところに、昨晩NHKの特集番組で、レポートされ、興味深く見た。

 シェールガスの存在は以前から知られていたが、アメリカで採掘が可能になったのはわずか3年前のことだ。そのためにエネルギーの将来の選択肢の一つ、として捉えているマスコミや学者が大半である。

 ところが長谷川慶太郎の本によるとアメリカの天然ガスの25%前後は既にシェールガスへ転換されているという。さらに昨日のNHKの番組では既に35%がシェールガスに代替された、と報じていた。掘削が始まってわずか三年で三分の一も転換が進んだと云うことだ。アメリカの天然ガスは日本の6分の1の価格であるが、シェールガスは更にその半値である。転換が進まないわけがない。

 さらに現在確認されている埋蔵量とその可採量からみて100年はまかなえることが分かっている。アメリカは原油や天然ガスを海外から購入しているが、大幅に購入量が削減出来るとみられる。アメリカの貿易収支の赤字の一番大きな要因はエネルギー購入費だが、それが大幅に削減出来る。そして低コストのエネルギーはアメリカの製造業復活の原動力につながるとみられる。他にもいろいろメリットがあるのだが、それについては長谷川慶太郎の本の紹介のところで触れることにする。

 週刊ダイヤモンドと週刊東洋経済の新年特集号は共に2013年予測である。ざっと流し読みをして見てもこのシェールガスのことにあまり触れていない。これはシェールガスはまだ大きな問題ではない、と云うとらえ方を両誌がしていると云うことだ。しかしNHKの番組を見て私は世界が大きく変わる可能性が大きいと確信した。

 ロシアのプーチンがなぜ日本にすり寄り、北方四島の交渉再開に可能性を匂わせたのか、NHKでも絵解きしていた。田中真紀子(亡国)外務大臣がつぶしてしまったが、北方四島の返還交渉を良いところまで持って行った森喜朗が、再びプーチンと交渉に出かける意欲を示している。

 アメリカはシェールガスを日本に売ることをTPPの参加のための条件に持ち出す可能性が大きい。トータルで日本にとっての国益を真剣に今から考えておく必要がある。

 はっきり云って再生エネルギーがメインのエネルギーになるためにはまだまだ長い時間と多くのイノベーションを必要とすると見られる。急がれている日本の景気回復に寄与するエネルギーは当面はシェールガスを含む天然ガスだろう。ついでメタンハイドレードであり、この採掘実用化のための人的技術的資金的投入を早急にしかも大幅に進めるべきだと思う。

2013年1月 7日 (月)

奪い合い

 雲南省の昆明の国際空港で、観客による騒動があった。

 濃霧のため、航空機が離発着出来ず、多くの利用客が足止めされて空港はごった返していたという。その濃霧は翌日も晴れることがなく、掲示板はダウンして表示が消えた上、状況説明のアナウンスもなかったのだという。乗客たちのストレスがかなりたまったその時、航空会社から提供された弁当をめぐって小競り合いが始まり、ついには奪い合いとなった。さらに弁当が積まれた台車をひっくり返して騒いだという。

 その後当然のことながら弁当も水も二度と配布されることはなかった。

 さらに晩になって乗客同士が口論を始めたと思ったらついには殴り合いにまで発展、乗客たちによってチェックインカウンターが占拠される事態となった。乗客たちはカウンターのパネルを勝手に操作して運行状況を調べようとしたらしい。

 その上並んでいた外国人旅行客の列に勝手に割り込むものがあり、それをめぐって警備員との小競り合いも発生、一晩中騒ぎが続いたが、翌日ようやく霧が晴れると共に運行が再開され、ようやく騒ぎは収まったという。

 これも民度の低い農民の起こした騒ぎだったのであろうか。はたして「農民」の民度は上がることがあるのだろうか。

 そう言えば日本の空港でも中国人の団体客が騒ぎを起こしたことがあった。その時は弁当が冷たいというのが騒ぎの理由だった。

雪つぶて

 中国浙江省の杭州市の動物園で、屋外の飼育場所にいたライオンに観客が雪玉を投げつけたところ、それを見ていた他の観客が次々に真似をして雪玉をライオンに投げつけたという。狙われたのは雌ライオンで、最初は何事かと驚いていたが、やがて雄ライオンのそばに身を潜めたという。雄ライオンは雌ライオンをかばうようにたちながら観客を見ていたそうだ。

 何だか反日暴動を見ているようだ。誰かがやってみせるとみなが真似をして同じ事をする。

 これがネットで取り上げられたところ、やっていたのは服装から見て民度の低い農民だ、との書き込みがあったのだそうだ。民度が低いのが農民だけなのか、中国人全体かどうかはともかく、日本はもちろんのこと、他の国ではこんな話は聞いたことがないことは間違いない。

椎名誠「でか足国探検記」(新潮文庫)

 南米の南端に近い地方、パタゴニアは「でか足族の住むところ」という意味なのだという。椎名誠はこの一体が好きで何度もやってきて滞在しているが、この本で書かれているのは第二回目の旅(1991年)である。第一回目が1983年で、この時には南米最南端のビーグル水道へ行っている。

 今回の旅は予定通りに進まない。チャーターした帆船は、そもそもがもっと穏やかなところで観光船として使われていたもので、強風が吹き荒れ、高波が逆巻く海を行くこの旅には向かない代物だった。この船についての顛末は本文を楽しんで欲しい。

 全ての歯車が狂いだし、無為の時間だけが過ぎていく。しかしその無為の時間こそ、人は過去を回想し、記憶の中をめぐり、時に空想に耽る。世界とは何か、自分とは何か、これこそ哲学でなくて何であろうか。そう、この本の中には時に哲学としか言いようのない思念が繰り返し語られる(もちろん、ちっとも難しいことは書いていないのでご安心を)。旅は人を哲学的にさせるのだ。

 珍しい動物たちとの出会いの光景も楽しい。人間が動物に出会ったというより、動物たちが人間に出会ったと言うべきか。

 この本で椎名誠は蘊蓄を傾ける。その好奇心による、付け焼き刃ではない広範かつ詳細な知識はこの本に奥行きを与えている。この本は、彼としてはリキを入れて書いたもののようである。それだけ読み応えがあるし、楽しい。

HA1c

 本日は内科の検診予約日。糖尿病の指標であるHA1c(ヘモグロビンアイワンシー)は5.9でこの半年ずっと6を切っている。これは正常値である。正月前後の一週間は毎日飲んでいたが、セーフであった。以前飲んでいた薬に泌尿器系の癌を引き起こす可能性がある、と云うことで薬が弱いものに変更になってのこの結果なので、医師も良くコントロールされている、と太鼓判を押してくれた。泌尿器系の精密検査でも異常なしだったことで医師も安心したようだ。栄養相談の先生も体重がほとんど減っていないことに苦言はあったが、体脂肪率がはっきりと減ったことを褒めてくれた。続けている腹筋運動が少しは効果をあげているようだ。

 ところでドン姫は本日もダウン中。ただ体温を測ったらほぼ平熱になったのでこれで食欲が出てくれば復活するだろう。

2013年1月 6日 (日)

澤田ふじ子「血は欲の色」(幻冬舎時代小説文庫)

 公事宿事件書留帳の文庫版最新刊、第十九巻である。以前にも書いたが、澤田ふじ子は好きな女流時代劇作家で、ユニークなことに京都が舞台の作品が多い。このシリーズも京都の公事宿(現代なら弁護士というところか、少し違うけど)に居候している田村菊太郎が主人公である。今回は六編の物語が収められている。

「闇の蛍」。サイコミステリーの様相の物語である。人間の心の闇の深さの故に、この作者には珍しい結末が描かれる。

「雨月の賦」。暴れ馬に足蹴にされそうな子どもを救ったのは飴細工売りの初老の男であった。それが縁で菊太郎はその男の正体を告白されることになる。その男は昔盗賊をしていたことがある、と語る。その生い立ち、その後の人生とその生き様を知るに及んで菊太郎は不問に付す。その菊太郎のもとを、仲間の息子の危難を救うためにその男が思いあまって訪ねてくる。そして菊太郎と異母弟・同心の銕蔵ともどもの大捕物となる。

「血は欲の色」。表題作。捜査の上での冤罪はあってはならないことながら、人のすることだから皆無というわけには行かない。しかし真実が明らかになればそれは正されなければならない。それがあろうことか無実を承知で巧妙のために犯人に仕立て上げるなどと云うことが許されて良いはずがない。それを確認するために菊太郎は自ら奉行所の牢に無頼浪人として入牢する。明らかになった事実に菊太郎の怒りは沸騰するが、奉行所の非ばかり責めてはことは収まらない。全てが解決した後、菊太郎は父(もと同心で隠居中)がこの事件の解決を菊太郎に託したことを知る。そしてそれは父の過去の事件に対する悔恨のなせることであったことも知る。

「あざなえる縄」。菊太郎が居候している公事宿・鯉屋に持ちかけられた借用証文に関する依頼についての物語。四百両という大金の借用証文なのに期限も利子も記載されていない。その貸した側と借りた側の二つの大店の先代二人の話からその理由が明らかになる。そしてその理由の背景にたかる蠅のような輩が現れるが、菊太郎が鮮やかに解決する。

「偽の正宗」。世には天才という者がいる。天才が全て世に出るわけではない。一生日の目を見ず、消えていくものも多い。中にはその才が人に利用されて贋作者になってしまうこともある。しかし如何に優れたものであっても、贋作には本物に対するひがみや怨みがこもる。それを見分ける人間にかかれば化けの皮が剥がれるのだが、目利きはそれほどいないから贋作がはびこるのだろう。

「羅刹の女」。自分の快楽だけを追い求め、子どもを虐待する母親が出てくる。まわりの貧しい人たちは子どもを必死にかばうのだが、事態はますます悪い方向に向かう。たまたま菊太郎がそれを聞くに及んで、心ある人々がその解決に一気に動く。もちろん現代の子殺しの事件の頻発を意識しての物語である。最後の奉行所の裁きや菊太郎の制裁の苛烈さはそのまま作者の怒りの表れであろう。

 以上、今回も心が揺り動かされる物語ばかりで大変に面白く読んだ。このシリーズは素晴らしいので、是非読むことをおすすめしたい。

政治犯

 日本は、靖国神社の門に放火した韓国系中国人の引き渡しを要求していたが、韓国政府はその判断を裁判所にゆだねた。裁判所は「政治犯」との認定を下したため、直ちに犯人は中国へ出国した。

 この犯人の男は日本大使館に火炎瓶を投げ込んだ現行犯で、逮捕されて服役していたが、刑を終えた者で、日本と韓国の間に結ばれている犯罪者の引き渡し協定にもとづき、本来は日本に引き渡されるはずであった。

 中国は中国人民を守るため、と称して、繰り返し韓国に圧力をかけ続けてきており、政治犯なら協定の例外である、と入れ知恵をしたと云われる。

 政治犯なら犯罪行為も許されるのが中国らしいが、韓国も中国の圧力に屈して同じ基準で行くらしい。韓国民のプライドも日本に対してだけみたいだ。もちろんこの措置に対して韓国の中にも批判的な意見があるようだ。当然だろう。

ところでこの中国に引き渡された犯人の運命を危惧するのは私ばかりではないようだ。一時的には英雄視されるが、何時の間にか家族共々行方が分からなくなる可能性がある(あの海上保安庁の船に体当たりした漁船の船長はその後家族共々行方不明と言われる)。

 犯人はその時日本に引き渡された方がどれほど良かったか知ることになるだろう。

刺腹

 昨日のニュースで安倍首相の特使として額賀氏が朴新大統領を訪問し、安倍首相の親書を手渡す様子が報じられていた。朴新大統領はやや前屈みで何となく覇気が感じられず、体調が悪いのか、心配事があるのかのように見えた。ただそのような話は何も伝えられていないので私の印象だけだが。朴新大統領は、日本の正しい歴史認識が最優先である、と切り出していた。韓国内向けのセレモニー的決まり文句であろう。とはいえ前の大統領のように親書の受け取りを拒否する、などという歴史上世界的に例のない非礼をせずに丁寧な受け取りをしたことはまず慶賀に堪えない。噂では朴新大統領は早々に日本訪問を行う意向のようであり、両国の関係修復を目指す方向に舵を切りそうだ。

 その額賀特使が金浦空港に降り立つ時に空港内である事件があった。韓国の右翼団体の男が自分の腹を刃物で刺したのだ。この男は昨年7月にソウルの日本大使館に小型保冷車で突っこむ、と云う事件を起こして執行猶予中の62歳の男だという。

 刺腹などという言葉はないが、切らずに刺したので切腹の代わりに刺腹とした。病院に担ぎ込まれたこの男の傷は軽かったそうだ。

 韓国の裁判所は政治的動機の犯罪(特に日本に対して)は免罪することにしているようだから、執行猶予中のこの事件も執行猶予の停止には当たらず、傷が治れば放免され、再び何か事件を起こすだろう。ただの○違いが韓国では愛国者らしい。

普通の行為

 インドネシアは「汚職大国」と呼ばれることがあるくらい社会の中に汚職体質がしみこんでいると言われる。ユドヨノ大統領は汚職撲滅を最優先課題に掲げているが、昨年与党の元幹部が汚職で逮捕され、現職の大臣が収賄容疑で辞任に追い込まれた。

 このたび中央統計局が汚職に関する国民の意識調査した結果を発表した。目についたのは「警察官に賄賂を渡すのは普通の行為」と回答した人が32%いたことだ。

 これを伝える記事では、この数字をもって汚職撲滅が進んでいない、と云う立場に立っているが、はたしてそうだろうか。公務員、特に警察官に限って言えば先進国以外はほとんどが賄賂を受け取る。なぜか。生活出来るような給料をもらっていないからだ。生活費は自分の才覚でかせがなければならない。だから賄賂を払う方も必要経費として払っている。社会の中に汚職体質がしみこんでいる、と云う指摘は正しいが、警察官の生活が成り立つようにした上で、賄賂を禁止することが必要なことは云うまでもない。

 インドネシアは警察官の待遇を改善したのだろうか。改善せずにスローガンだけで、32%と言う数字であればめざましい数字である。多分何らかの改善が行われたのだろうと拝察する。

2013年1月 5日 (土)

ドン姫ダウン

 正月を過ごした親元から、3日の早朝に名古屋に帰った。名古屋は雪がちらついていた。

 夜遅くに仕事を終えてドン姫が帰ってきたので初めてわが一家が揃った。夕方から息子とちびちびやっていたのでドン姫が帰ってきた頃には酩酊していた。息子は早々に就寝。正月から飲み続けだからやや飲み飽きたのだろう。

 そして4日にはドン姫が自分のアパートに帰り、本日5日には息子も広島へ去った。

 あんまり話すことがないからただ親子でぼんやり顔を合わせているだけだが、まあそんなものかと思っている。それでもまた一人になるとさみしいものだ。

 そうしたら午後ドン姫から電話。まず電話などかけてくることのない娘なので何事か、と思ったら、風邪でダウンしたから病院へ連れて行ってくれ、と云う。土曜の午後で大丈夫だろうかと心配したら電話でもう確認して頼んであると云う。車で飛んで行った。

 診察の結果、幸いインフルエンザではないらしい。吐き下しもあったらしいがノロウイルスでもないでしょうとのことで、薬を処方してもらって、我が家へ連れてきて寝せたところだ。

 風呂上がりにへそを出して寝ていても風邪などひかない丈夫な娘だが、不特定多数の人と接しているからうつされたのだろうか。

 あまり頼られたことがないので(この娘はまず親に頼るなどと云うことがない)正直とても嬉しい。親バカであるがそれでいいのだ。

 今夜はシチューを作った。

没落都市

 中国のあるメディアが、中国国内の「没落都市ランキング」を発表したそうだ。ランキングのトップは陝西省の省都・西安だった。

 西安は中国の古都としてかつては栄華を誇ったが、現在はGDPが中国の都市では40位以下と凋落し、一人あたりの年収も新疆ウイグル自治区のウルムチ以下だという。

 西安はNHKのシルクロードシリーズ第一回でシルクロードの出発点として紹介され、日本人には憧れの街である。私も生まれて始めて行った中国はこの西安だった。西安は明代の城壁を今でもそのまま残している数少ない都市で、西安市内や近郊に遺跡や博物館が多い。

 都市を経済的な尺度のみで比較したランキングのようで、西安は工場地帯を持たないからどうしても不利なのだが、そのことが観光地として訪問する街としては利点でもあるのだ。

 西安は北京や上海に次いで大学の多い街である。そのため反日デモなどはかなり激しいので、その時期には日本人は身の危険を感じざるを得ないことがある。そのために日本人のあこがれのはずの西安を訪問する日本人が激減しているとも聞く。残念なことである。

反響

 このブログで、映画の「ショーシャンクの空に」を取り上げたら反響が多かった。見たことのある人は同感と、そしてまだの人は是非みたい、と云うコメントやメールを頂いた。やはり良い映画は違う。

 もなさん。コメントをありがとう。ところで今読んでいる本によると、アメリカのシェールガスの実用化によってエネルギー革命が起きるそうです。そうすると世界が大きく変わるかも知れません。その影響で、中国にも大きな変革が起きると予想する人もいます。云った者勝ちのところはありますが、あながちオーバーであるとも云いきれない気がします。良い方向に変われば良いのですが、悲観的です。

敏感な内容

 中国広東省の有力紙「南方周末」の最新号(3日発行)の記事が共産党の指示で大幅に書き換えられた。

 同紙の関係者が明らかにしたところによれば、記事は「中国の夢、憲政の夢」と題した巻頭記事で「憲政の夢が実現されて初めて国家や人民の自由を守ることが出来る」などという民主的な立憲政治を主張する部分を含んでいたため、書き直しを命じられたのだという。さらに尖閣の日本国有化に対しての反日行動についても「理性的に行動する者が真の愛国者」などと書かれていたのだという。

 特にこのような部分が「敏感な内容」だとして削除を命じられたそうだ。中国が共産党による独裁国家であることを良く日本人は認識すべきだろう。決して日本と同じような民主的な国家ではないのだ。こうして「敏感な内容」の主張は国家に封殺されるのだ。

2013年1月 4日 (金)

映画「スネーク・アイズ」1998年アメリカ映画

 監督ブライアン・デ・パルマ、出演ニコラス・ケイジ、ゲイリー・シニーズ。

 この映画は封切りで見た。主人公に感情移入が出来なくて、何となく中途半端な印象しか残っていなかったのだが、ストーリーの記憶も薄れたので、改めて見直した。

 アトランティックシティの汚職刑事リック・サントーロ(ニコラス・ケイジ)はボクシングのタイトルマッチの警備に当たるが、ここで見せる彼の行動は刑事にあるまじきものだ。いやな奴だ、と観客が思うように仕向けられていく。折しも国防長官がこの試合を観戦するというので、国防省から護衛のためにリックの親友のケヴィン・ダン少佐(ゲイリー・シニーズ)が試合場にやってくる。

 不審な人物があちこちで目につく。さらに試合が始まると、圧倒的に優勢とみられていたチャンピオンが、一方的に相手に打ち込まれる。そしてチャンピオンが相手の強打でノックダウンされた直後、観客がそちらに目を奪われた瞬間に国防長官が狙撃される。さらにすぐそばの女性も腕を撃たれるのだが、続けて撃たれた弾丸からリックがかろうじて彼女をかばう。ところがその女性は会場の騒ぎに紛れて姿をくらましてしまう。

 ここから先はネタばらしになる可能性が高いのでストーリーを説明出来ない。ただ、なぜ、リックは汚職刑事でなければならなかったのか、それには大きな理由があったことが途中から分かってくる。それが分かればこの映画全体の構成も見えてきて成る程、となるわけであるが、初めて見た時は恥ずかしながらそこまで見えていなかった。ちょっとお馬鹿さんであった。

 100分をわずかに切る短い映画なので、映画を見た後の疲労も少ない。それが取り柄の映画だ。

 エンドロールのラストのところでコンクリに埋め込まれた赤い宝石が映る。この意味が最初分からなかった。皆さんもそれを確認して理由を考えてみてね。私は多分こう云うことか、と云う答えは摑んだつもりだが、正解は知らない。

長谷川慶太郎「2013長谷川慶太郎の大局を読む」(李白社)

 年末と新年には新しい年の予想が書かれた本を何冊か読むことにしている。日下公人の本に続いてこの本を読んだ。

 この本が出版されたのが10月だから、書かれたのはもっと前だ。尖閣問題があんな風にエスカレートすることは想定していなかったようだ。のっけからオバマとロムニーの戦いはロムニーの勝ちだ、と云いきっている。これも季節外れのハリケーンがニューヨークを襲ったことがオバマの追い風になったことなど、長谷川慶太郎には予想の外で会っただろう。

 だが予想が外れたからと云って中身がみんな読むに価しない、と云うことはない。アメリカのシェールガスの実用化によるエネルギー革命の予想は、そのまま鵜呑みには出来ないものの世界がこれをきっかけに大きく変わるかも知れないと感じさせる。これにより、原油価格が下がり、ロシアの天然ガスの価格も下がり、ロシアは資源による利益を大きく減少させることになる。実際にロシアの天然ガスのヨーロッパ価格は初めて下がりだしている。そしてアメリカは中東の原油依存を下げることになればあの地区に無理に軍隊を送り込む必要がなくなる。世界が大きく変わる、と云うのだ。

 日本はアメリカのシェールガスを少し分けてもらう約束を取り付けるだけでカタールの天然ガスの価格も下げることが出来るのではないか。ブラフでもかまわないのだ。だからプーチンもにわかに北方四島返還交渉に応じる姿勢を見せていると云える。日本に天然ガスを売ることがプーチン延命の大きな鍵になるかも知れない。今回はあのおバカな田中真紀子が外務大臣ではないからまさかお膳をひっくり返されることはないだろう。

 などと初夢は膨らむ。

 いつもはオプティミストの長谷川慶太郎がやや世界に対して悲観的なのが目新しい。この予想によれば2013年は激動の年のようだが、日本には希望もある。ただし企業によっては現在以上に厳しい年になると言い切っている。正月に読むにふさわしい本であった。

2013年1月 3日 (木)

映画「ショーシャンクの空に」1994年アメリカ映画

 監督フランク・ダラボン、出演ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン、原作スティーヴン・キング。

 この映画はあまりに有名なので今更内容を紹介するのも気が引ける。この映画を息子が見たことがない、と云うので久しぶりに見た。初めて見た時、映画館であまりに感激して終わってからすぐ立てなかった。この映画を見てからティム・ロビンスが好きになり、モーガン・フリーマンが好きになった。見終わって、息子も良い映画だった、と頷いていた。私も三回目なのに感動した。

 もし映画が好きなのに見たことがない、と云う人がいたらビデオ屋に借りに行くかDVDを購入して、じっくり見ることをおすすめする。見て良かった、と思って戴けるはずだ。ただし、子どもと一緒に見る映画ではないので、その辺はご注意を。

2013年1月 2日 (水)

酩酊

 今年の正月は(大抵毎年だが)お酒を昼間から飲んで酩酊した。

 「奥丹波」という兵庫の酒、新潟の「吉乃川」、「八海山」の原酒しぼりたて、それに「越の寒中梅」と云う名前だけすごい酒を飲んだ。

 やはり「奥丹波」と「八海山」が美味しく感じた。ほとんど弟とわが息子の三人で飲んだので酩酊した。天気も好くて良い正月であった。

 ところで東洋大学は残念であった。明日の復路で挽回がなるであろうか。早稲田もがんばれ。明日は名古屋へ帰る車の中で応援だ。

ウリジナル

 何でもかんでも中国や日本の文化は韓国が起源である、と主張することを「ウリジナル」という。例えば日本のものでは桜、剣道、寿司、日本酒、空手、武士、柔道、日本刀、など。先日は茶道は韓国が起源だと言い出した。さらに歌舞伎も韓国が起源なのだそうだ。

 こうなるとほとんど病気だ。何か取り上げれば全て韓国起源だと云うだろう。

 しかしそれならばなぜそれらのものが韓国で発展せずに日本で花開いたのだろう。他国で定着し、独自の文化だとして世界が認めたものをあれはそもそも・・・などとさもしそうに云うのはみっともない限りではないか。

 それよりも韓国が現在世界に誇るべきもの、進化発展させたと云えるものを列記して、これが韓国文化だ、と主張したら良いのに。

 まさか何もなくて仕方がないからよその国のものをあれは自分の国のものだ、などと云っているわけではないだろうが(まさに言っているとしかみえないのだが)そんなみっともないことをするはずはない(はずだ)。

 今のままだと人類の起源は韓国人だ、と言い出すだろう。もうほとんどそれに近いことを言っているように見える。中国人は笑っている。日本人も笑うしかないだろう。まさか文化に特許を主張したりはしないはずだ。・・・いや、韓国のことだから主張するかも知れない。

 韓国の心ある有識者は自国が笑いものになる、このような主張をメディアが繰り返しているのをなぜやめさせようとしないのだろう。まさか心ある有識者がいない、と云うことはないだろうに。

2013年1月 1日 (火)

日下公人「日本と世界はこうなる」(WAC)

 サブタイトル「日下公人が読む2013年~」。

 経済学が統計学という数学に堕した時、経済活動は人間の現実の行動とは違うものを前提にした幻想の世界に突入した。経済が心理学的側面をそぎ落としたと思っていたら、西洋思想に影響されて心理学も科学という名のグローバリズムという宗教に取り込まれてしまって、人間そのものの行動と乖離して科学という名の妄想の世界にはまり込んでいた。

 科学は理想とは異なり、西洋思想では一つの宗教である。
 
 「空想から科学へ」という一文が、社会学を科学に取り込んだ。

 今、日下公人は西洋思想の裏付けによる民主主義そのものの正誤を問う。アメリカがグローバリズムを正義とする根拠は何か。民主主義である。民主主義を懐疑する、という日下公人の提案は、我々にとってアメリカの思想、正義の思想からの脱皮を促す問いかけでではないのか。

 彼は世界はこうだった、そして世界はこうなるであろう、と大胆に予想する。その予想が正しいかどうかが問題ではない。普遍性を最も高位におく思想そのものが問われている。思想はそもそも普遍的でもなく、絶対的でもない。そんな当たり前のことを西洋思想は見失って二百年が過ぎた。

 著者はその迷妄から抜け出すために、日本的な価値観を世界が受け入れる時、初めて世界が新しいパラダイムを獲得するだろう、と説く。

 この論は日本人の私には納得しやすいもののように思えるのだが。

 どうも正月の酒に酩酊して書いた文章なのでわかりにくい。後でゆっくり考えて書き直したいと思う。そうでないとこの本が何を書いている本なのかさっぱり分からなくて著者に申し訳ない。

初春

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

 今年が良い年であることを願いたいのですが、激動の年になるような予感がします。しかしそれはまた私などの傍観者にとっては不謹慎ですが、ドラマチックで心ときめく年でもあります。

 昨年は200冊の本を読むことを目標として居りましたが、昨晩読み終わった(後で取り上げます)日下公人の「日本と世界はこうなる」という本で198冊、残念ながら僅かのところで及びませんでした。

 今年は同じく年間200冊以上を目標とすると共に、映画を150本以上見ることにします。そう度々映画館にも行けませんので大半がWOWOWの録画を見るのですが。

 では皆様にとって、世界がどうあれ、今年が良い年であることを祈念いたしまして挨拶とさせて戴きます。

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