シェールガスが埋蔵されているのは有史以前の太古の時代に大河だった場所だとみられている。だから大陸の大河のある場所には全てその可能性がある。現在それを実用的に採取出来ているのはアメリカだけであるが、ヨーロッパにも中国にも巨大な埋蔵量があることが分かってきており、アメリカよりも中国の方が埋蔵量が多いらしい。残念ながら日本には実用化出来るほどの埋蔵量はない。
特筆されるのはこのシェールガスは、原油の極めて偏った局部的な場所ではなく、世界のあちこちに埋蔵場所があると云うことである。しかしながら掘削技術も含めてかなりハードルが高く、今のところ実用化出来ているのはアメリカだけである。
シェールガスを天然ガスの代替として使用開始してからアメリカの天然ガスの単位購入価格は3ドルである。現在日本の購入価格は18ドルである。シェールガスは勿論この天然ガスより安い。1バレル100ドルを大きく超えていた原油価格が昨年後半から80ドル台に下落したのはなぜか。アメリカの状況から高値を維持出来なくなったのだ。
同時にヨーロッパの天然ガス価格も、今まではロシアの言いなりで毎年10%ずつの値上げを飲まなければならなかったのが、ついに昨年から値下がりし始めた。ロシアの独占的なやり方について各国が提訴したことを受けたのだが、実際は原油価格に連動してロシアも天然ガスの値段を下げざるを得なくなったのだ。値段が10%下がるとロシアの利益は30%下がると言われる。
ロシアは資源で国が運営されているに近い。製造業は競争力のあるものが少ない。利益が減れば国民の生活が一気に急迫する危険がある。強権で国を支配し続けたプーチンも、いったん国民生活が破綻すればその反発は恐ろしい。だから日本にすり寄り、日本にガスパイプラインを引いて高値で売りつけたいのだ。既にサハリンまではパイプラインが引かれている。まず北海道までつなげればいいので実現性は極めて高いのだ。ヨーロッパへ送られている天然ガスは、西シベリアで採掘されたものである。現在東シベリアでの天然ガスの採掘が始められようとしている。供給先として想定しているのが日本であり、韓国なのだ。現在中国向けとしては計画されていないようだ。それは中国が世界一のシェールガスの埋蔵量であることが明らかになっていること、そして中国が契約を守る国ではないことを嫌っているからだと言われる。値段も高く売れるし、交渉の楽な日本がまずターゲットというわけだ。
シェールガスを採掘するには地中深くにパイプを下ろし、シェール層で横に掘り進まなければならない。このパイプの強度が問題で、長谷川慶太郎によれば日本の鋼管しか使えないのだという。さらに土木作業用の重機なども多くが日本製だそうだ。
アメリカはこの掘削技術をEUには開示していくだろう。ヨーロッパでもシェールガスが採掘されるのはそう先ではないかも知れない。そうすればさらに原油も天然ガスもだぶつくことになる。これはドイツなどが進めている再生エネルギーへの転換に大きなダメージになる。再生エネルギーのコストがますます割高になり、関連産業が立ちゆかなくなる事態になるだろう。それでなくともドイツの太陽光発電の最大手は中国のメーカーとの競争に敗れて破綻してしまったところだ。石炭や原油での発電を天然ガスやシェールガスに転換することで二酸化炭素の排出量は削減される。しかもコストが安いのだから原子力発電も減らすことが可能となるのだ。
アメリカは決して中国にはシェールガスの採取の技術を開示しないだろう。もちろんあらゆる方法で中国はその技術を入手するだろうけれど。
ただ中国にとって不幸なことは、最も埋蔵量の多い場所は新疆ウイグル自治区などであることだ。もちろん黄河や揚子江周辺にもあるだろうが、人が住んでいてなかなかプラントを立てにくい。ご承知の人もいると思うが、シェールガスは地上から高圧の地下水を地下に送り込んで、シェール層を破砕させ、その水と共にガスと油をとる。新疆ウイグル自治区には悲しいかな水かないのだ。しかも中国は国策で原子力と再生エネルギーに全力投球してきた。多分急には方向転換が出来ないと思われる。
ところで巨大な資本投下が必要なシェールガスの実用化がこんなにも急ピッチで進んだのはなぜだろうか。これを進めたのは実はメジャーと言われる国際石油資本、大手の石油会社たちだったのだ。中東や北アフリカがアメリカのコントロールを離れてしまい、民族主義の台頭によってそれぞれの国に取り込まれてしまっているという事態、そして中国による世界の資源あさり、原油やガスを背景にしたロシアの復活など、メジャーの存在を脅かす状況に対して回生案としてシェールガスの実用化に資本投下したのだ。
アメリカはこれで復活するだろう。多分今最もその事態を憂えているのはイスラエルではないかと思われる。なぜなら原油に対する依存度が低下すれば、アメリカは中東に巨額の費用をかけて軍事的な配備の必要がなくなってくるからだ。もちろん日本のタンカーの護衛もおろそかになる危険がある。ただ中期的に見れば中東そのものの資本が低下することになるので武器弾薬もふんだんに買うことが出来なくなるからいつかは静かになることだろう。ただの砂漠の貧しい国に戻るだけだ。
しからば日本は?まずアメリカからシェールガスの購入の交渉をすることだ。既にある程度の了解の感触を摑んでいるとの情報もある。ただしアメリカからTPP参加などの条件がつけられる可能性は高いだろう。韓国も既に打診を開始しているようだ。一部でも購入が始まればすぐに天然ガスの購入価格が現在の18ドルから10ドルくらいになるのではないかと試算されている。これこそ脱原発への最も近道なのだ。日本国内の電気代やエネルギーコストが大きく下がれば、何もカントリーリスクだらけの中国などで工場を操業しなくても良くなるのだ。最優先に進めるべきだろう。
さらに合わせて行うべきはメタンハイドレードの実用化だ。あれだけ困難と言われたシェールガスが短期間に実用化出来たのだ。メタンハイドレードも集中的に取り組めば必ず成果が上がるはずである。そうすれば、日本復活はますます加速するだろう。
以上はこの本を読んだものに加え、NHKの情報やその他の情報を加味したものです。新年の初夢として景気のいい話を楽しんでもらえましたか。でもこれは嘘ではありません。実際の話です。
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