NHKBSで9月の29日と30日の二日間にわたって優れたドキュメントとして各賞を受賞したものを放映した。先日一日目の分を見て報告したが、今日は二日目の分を見た。何しろ4本取り上げられていて約5時間の長さである。そのうちの一本目に当たる「死刑弁護人」については申し訳ないがパスした。
残りは「メルトダウン 連鎖の深層」「メルトダウン 原子炉冷却の死角」「追跡 復興予算19兆円」の三本である。
「メルトダウン」二本は、福島第一原発の事故についてNHKが独自にあの原発の現場にいた人たちに直接取材して、政府事故調などの報告書に記載されていない事実を明らかにしたものである。
「連鎖の深層」では主に第二号機のメルトダウンに至る経緯が詳しく再現される。電源喪失により、原子炉格納容器内の冷却のための注水を行うことが出来なくなったのだが、外部から水を入れるためには内部の圧力を下げなければならない。そのための弁が何カ所もあるのにどれひとつとして開けられないで手をこまねいているうちにメルトダウンが起きてしまった。このときに電源を補助するためのバッテリーがあれば少なくとももう少し時間を稼げたことは報道の通り。
あのとき必要だったバッテリーは12ボルトのもの、ところが緊急要請で届けられたものは2ボルトのものばかりで使えなかった。そして12ボルトのバッテリーが大量にかき集められたのだが20キロだか30キロ圏の外側で足止めとなり、ついに届けられることが無かった。
間に合わなかったのでは無い。防護体制のある輸送手段が無かったのだ。事故発生の場合の物資の輸送が想定されていないという驚くべき事実が明らかになる。
「原子炉冷却の死角」では主に一号機と三号機について詳細に報告される。一号機については、冷却システムは電源を喪失しても稼働するシステムとなっていた。だから最も安全であると皆確信していたし、東京電力から政府にもそのように報告されていた。
そのICというシステムが実は遮断されたままであったことが明らかにされる。このシステムのスイッチを入れると原子炉に負荷が大きいということで、入れたり切ったりしながら安定化を図っていたのだが、その最中に津波に襲われ、管制室の電源がすべて落ちてしまった。ICシステムが稼働しているかどうか、確認するすべが無くなったのだ。皆は入っているものと盲信し、しかも別の方法で確認したとされたものが全くの勘違いであったことがあとで分かる。何せ一号機がいちばん早く水素爆発を起こしたのだから、冷却が出来ていなかったのは間違いない。
そして三号機の状況にも死角があった。消防車のポンプにより原子炉に注水するという方法で冷却を計ったのだ。そして注入量から考えて原子炉内の水の量は十分なはずだったのだが・・・結果的に炉内の水面はどんどん下がり続け、炉心がむき出しになり、ついにはこの三号機も水素爆発を起こす。
何が死角だったのか。実は消防ポンプからのパイプに小さなバイパス路があった。このバイパスは復水機という装置のポンプにつながっている。そして装置が稼働していればポンプから復水器への道へ流れることは無い。しかし電源が喪失しているからポンプは死んでいた。そのためにポンプを通して半分以上が復水器に送り込まれていたのだ。これはあとで復水器に無いはずの水が大量に存在していたことで確認されている。必要な水に足らず、ここも炉心がむき出しとなってメルトダウンし、水素爆発した。
どの事態も、もしそのときにこうしたら、とか、ここに気がついていたらと思われるものばかりだ。人為的なミスと言われてもしかたがない。
比較としてアメリカの状況が報告された。アメリカではどんなに万全を期しても事故は起こりえる、という考え方だ。だから事故が起きたらどうする、という点で過剰なまでの対策を講じている。たとえばICという装置が稼働するとどのようなことになるのか確認するために四年に一度装置を稼働させる。稼働の有無は誰が見ても一目瞭然で勘違いはあり得ないという。ところが日本では40年間装置を動かしたことが無いのだという。また事故対応の物資の備蓄、防護服と防護車による輸送についても過剰なまでの準備があった。
事故は起きるものだ、として起きた場合に対して万全を期すアメリカと、事故が起きないために万全を期したから事故は決して起きない、という日本。安全神話というのはこういうものだろう。安全神話を語らないと原発を作ることが出来ない日本。そして安全神話を語るうちに最もその神話を信じてしまったのが専門家であり東京電力だった。
日本人の国民性の中にこの安全神話を醸成する素地があるような気がする。
「追跡 復興予算19兆円」はやはりNHKが昨年放映したもので、わたしもリアルタイムで見た。だから二回目である。復興予算といいながら沖縄の道路建設やシーシェパード対策など、考えられないところに予算が割り振られた。NHKのスタッフや専門家がそのうちの9.5兆円についてチェックし、2兆円以上が明らかに被災地と無関係としか思えないところに予算を配分していた。この番組のあと国会でも追及されたので記憶されている方も多いだろう。
しかも被災地の人たちのグループでの仕事の再建案に対しての予算は60%が却下された。予算が限られているから優先順位があり、やむを得ないのだという。
実はこの番組を見て民主党に対する堪忍袋の緒が切れた。
復興予算を明らかに理屈の合わない名目で予算をぶんどった各省庁の課長に対してNHKがインタビューしている。まともな神経なら恥じ入らないといけないと私などは思うが、恬淡として何の後ろめたさも感じている気配が無いことに驚いた。
蓮舫議員が予算を精査して無駄をなくす、と鳴り物入りで吠えていたが、それならこのような理不尽な予算は徹底的に糾弾するのが当時与党だった民主党政府の役割だろう。
ところが国会でこのことを追及されると自らの不明を恥じるどころか官僚を擁護し、いいわけに終始していたのだ。これが自民党の無駄遣いをなくすと公言して政権を執った民主党の正体か、と怒りを覚えたのだ。
とにかく一気にこれだけ中身の濃いドキュメントを見ると疲れる。少しハイテンションになってしまったのでアルコールで散らすことにしよう。長文を読んでいただいてご苦労様です。
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