おじいさんの時計
弟と毎晩飲んでいる。弟はまだ仕事をリタイアしていないので毎日朝七時前に出勤する。だからあまりたくさんは飲まない(普通の人から見たら結構飲んでいるけれど)。でも昨日は週末なので夜中までビール、日本酒、芋焼酎とたっぷりと飲んだ。
寝たきりの老母は無線のコールボタンを押す。そうすると結構大きな音でメロディーが鳴るようになっている。そのメロディーは「おじいさんの時計」だ。母は頻繁に押す。だから頻繁に「おじいさんの時計」が鳴る。ときには五分おきに鳴る。「おじいさんの時計」にせき立てられて母の元へ行く。
介護はほとんど弟の嫁さんがやっているから私が出来ることはわずかだ。それでも弟の嫁さんはパートで幼稚園の仕事をしているし、買い物や他の用事で出かけることもしばしばある。そのときは介護ヘルパーが一時間とか二時間手伝いに来てくれるけれど、私が全面的にやらなければならないこともある。
いちばんイヤなのは「うんち」の処理だ。何度やっても慣れない。
ところが母がコールするときの用事は多くがこれだ。ちょっと異常に神経質になっているようで、わずかな汚れも「始末しろ」とコールされる。極力言われるとおりにやっているけれど、次第に「いい加減にしろ!」という気分になってくる。本を読んでいてもあまりに頻繁なので集中できない。
弟の嫁さんも適当に対応しているけれど、私がいる手前、あまり手抜きも出来ず、多分無理をしているように見える。昨晩は、弟と二人でそのコールのメロディーをいちばん静かなブザーに変更し、音量も小さめにした。そしてコールの対応はこちらのペースでやることにしよう、ということにした。弟の嫁さんはちょっと嬉しそうだった。
日曜の朝からこちらに来ているから一週間経った。明日には名古屋に帰る。それでもちょっと疲れた。弟の家といっても母が仕切っているわけではないから今は私にとってよその家だ。それなりに気疲れするし、介護の精神的な疲れもあり、このくらいが限度だ。
でも弟の嫁さんはエンドレスで自宅介護を続けなければならない。あんまり負担が重そうなら別の手立ても考えなければいけないかな、とも思って、もしそのときは了承するよ、と言っておいた。
今日は弟もいるし、気楽だ。都合がつけば妹も来る、と言っていた。あと一日頑張ろう。
「おじいさんの時計」がちょっと嫌いになっている。
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