映画「ザ・ディープ」2012年アイスランド
監督バルタザル・コルマキュル、出演オラフル・ダッリ・オラフソン他。
珍しいアイスランド映画。監督の名前に見覚えがあると思って調べたら(こう云うときにネット検索は便利だ)最近観た「ハード・ラッシュ」という、アメリカ・イギリス・フランス合作映画の監督だった。もともとこの人はアイスランド出身らしい。この映画はラストが爽快な犯罪映画だったが、「ザ・ディープ」のほうはだいぶ異色の映画である。
とにかく冷たい映画だ。冷たい、というのは精神的なものではなくて、物理的、身体的に冷たいのだ。アイスランドの冬と言えば極寒の世界である。そのアイスランドの冬の海で漁船が転覆する。船員たちは夜の海に投げ出される。気温はもちろん零度以下で、水温も5℃以下。最初励まし合っていた船員たちは体温を奪われ、次々に力尽きていく。夜明けまでは六時間以上あり、陸地までは5キロ近くある。他の漁船の灯がちらりと見えたりするのだが、それが現実か錯覚なのか分からない。
最後に一人生き残ったグッリはひたすら泳ぎ続ける。そしてついに夜明けと共に陸地を見る。しかしそこは・・・。
そもそも人間は極寒の海で20分以上生きることが出来ない。ところがグッリは6時間以上泳ぎ続ける。
これは1984年にあった実話だそうだ。この寒さ、冷たさは夏の暑いときにこそふさわしいかも知れない。
単純な話で、ひたすら夜の海をカモメを相手に話しながら泳ぎ続ける話なのに最後まで緊張感が途切れない。監督の腕力が素晴らしいことがよく分かる。不思議な映画だ。
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