横山宏章「中国の愚民主義」(平凡社新書)
副題は「『賢人支配』の100年」。中国は過去一度も民主主義を採用したことがない。そのことを忘れると中国について勘違いする。
読みかけていてそのままの諸星清佳「中国革命の夢が潰えたとき」(中公新書・副題は「毛沢東に裏切られた人々」)では、中華人民共和国成立は共産党と民主諸勢力の協力で成立したが、どうして共産党独裁政権になったか(かたちとしてだけは民主諸勢力はいまでも全く当時のままで存在する。ただし何の権限も発言力もない)、民主諸勢力の人々がどのように挫折させられていったのか、詳細に検証されているが、この「中国の愚民主義」では辛亥革命以後の中国が、民主主義を取り入れることができなかったのは孫文の愚民主義が出発点であるからだと断定している。
1989年にベルリンの壁が崩壊し、東ヨーロッパは雪崩を打って民主化した。続いてソ連が崩壊した。そのまさに1989年、ベルリンの壁崩壊より早く、中国は民主化の夢を見た。それを徹底的にたたきつぶしたのが天安門事件であり、弾圧を指示したのが鄧小平である。
プラトン(だったと思うが)の理想とした哲人政治は、それが理想的にかなえられれば最も優れた政治のように思える。そして民主主義はしばしば過ちを犯し効率も悪いことは身に沁みて経験するところだ。ところが世界はおおむね民主主義に移行している。それはもし過ちを犯しても修復することが可能なシステムでもある民主主義が、最善でなくとも最悪ではないことを皆気が付いているからだ。
眠れる獅子と言われた中国が再生するのにあるいは現体制は貢献したかも知れない。しかしすでに共産党独裁のマイナス面が顕在化し、成果より害悪の方が大きくなりそうな事態となっている。これを修復しようと習近平国家主席は努力しているようだが、果たして可能か。
何千万という国民を「大躍進」や「文化大革命」などで死傷させた共産党独裁体制は、果たして今度もその危機を乗り越えることができるのか。多くの中国ウオッチャーは(私も)さすがに今回は無理ではないかと見ているが、韓国・朴槿恵大統領や朝日新聞は可能だと見ているようだ。
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