「知らねえよ!」
この言葉はフーテンの寅さんの言葉だ。どんな場面でこの言葉を発したのかは覚えている。でも第何作目かは覚えていない。ただおいちゃんが森川信だったからシリーズ初期の頃だ(多分第一作か)。
いろいろ屈折することがあって、寅さんがおいちゃんの大事にしている角(サントリーのウイスキーの角瓶)をこっそり飲み出したところへがやがやとみなが登場して、慌てて押し入れの中に隠れる。
家族やタコ社長が寅さんを口々に非難する。そういわれても仕方がないことがあったあとだから、寅さんも押し入れの中で黙って聞いているしかない。
そのときおいちゃんが頭を抱えて「横になりたい」という。そしてさくらに「まくら、さくらを出してくれ」というのだ(ちょっとみんながずっこける)。
枕は押し入れにある。寅はぎょっとする。さくらは言われるとおりに枕を出そうとして押し入れを開ける。
寅の悪口を口々に言っていた面々は押し入れの寅を見て、絶句する。「寅、そこにいたのか」というおいちゃんに、「知らねえよ!」と答える寅の気持ちが分かるだろうか。
私の中ではこの「知らねえよ!」が時々突然聞こえる。
生きているとそうとしか言いようのないことが何回かあった。そのことが突然夢で思い出されたりすると、まことに引っ込みのつかない追い詰められたような思いがする。
そんなときは開き直って「知らねえよ!」と言う。
そして、夢だと気がついて、そんなことを言わなくても良いんだ、と思って涙がこぼれるような安心な気持ちになったりする。
« 月村了衛「機龍警察 自爆条項」(早川書房) | トップページ | 大沢在昌「雨の狩人」(幻冬舎) »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 何をやっているんだか(2026.09.10)
- これからまた降る?(2026.09.09)
- 線状降水帯の中(2026.09.08)
- 雨が恨めしい(2026.09.08)
- 縁(えにし)(2026.09.07)



コメント