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2014年11月13日 (木)

藤原智美「暴走老人!」(文藝春秋)

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 著者は芥川賞作家でエッセイスト。男性である(念のため)。

 この本は小説ではない。著者が見聞きした暴走する(ほぼ暴力を揮うと同義で)老人の姿に、なぜ老人が暴走するのか、数々の事例をもとに考察を重ねた文章だ。かなり歯ごたえがあり、中身も濃い上に飛ばし読みができない。結果的に老人の問題と言うよりも現代社会のありようの問題として老人の暴走も捉えられている。

 著者が取り上げた事例を読むまでもなく、私もしばしば感情的な老人の姿を目にすることがある。突然激高して、しつこくて、しかも何が理由なのかがよく分からない。もちろん昔だって腹を立てる年寄りがいなかったわけではないが、大抵その理由は筋が通っていて理解可能だったように思う。

 乱暴にこの本の分析をまとめれば、老人の疎外感、孤独感、世の中について行けないことへの理不尽な怒りだ、ということになろうか。

 だからことは老人だけではなく、誰にでも起こりえる感情の爆発であり、個に分解してしまった人々のコミュニケーション不能の結果であると言うことだろう。

 そのことがまことに丁寧に詳細に手順を踏んで語られていて、それを短い文章にまとめると大事なことが全て漏れてしまいそうなので、ここまでとしておく。興味のある方は探して読んで欲しい。現在は文庫にもなっているらしい。多分、文春文庫であろう。

 しばしば周りが見えない人、自己中心的な人が切れることが多いのではないか、と私は感じている。世の中が自分が思っているものとは変わっていることが分からないし、言われても理解することができない。

 行列で、そういう老人の後ろに並んだときはため息が出る。その視線を当の老人もひしひしと感じていて、それが爆発につながっているのだろう。

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