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2014年11月28日 (金)

小林史憲「争乱、混乱、波乱!ありえない中国」(集英社新書)

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 前著「テレビに映る中国の97%は嘘である」(講談社+α新書)に続く著者の中国ルポである。帯に「拘束21回!」とあるように、リアルな中国を取材しようとすれば、中国にとって不都合であると見なされて官憲による介入が行われることがしばしばある。昔と違って外国人記者はよほどのこと(中国の法律に違反することなど)がなければ逮捕監禁までされることはなくなっているけれど、「あなたの身の安全のため」という理由でやんわりと取材が妨害されるのだ。

 このへんのことは前作をとりあげた今年の4月9日付の拙ブログを見てもらいたい。そこでも書いたけれど、拘束回数が多いと言うことはそれだけ核心に迫っていると云う事でもある。その取材はスリリングで、フィクションよりドラマチックであり、読んでいてどきどきする。

 しかしここまで突っこんだ取材をしたからと云って国外退去を強制されたりしないところは、中国が昔と多少は変わったことのあかしかも知れない。それよりも著者がここまで踏み込んだ取材で現場の状況を報道しているのに、大手新聞社などは相変わらず中国政府のスポークスマンのコメントと、大都市の通りがかりの人へのインタビューの報道に終始しているように見えるのはどうしたことか。自ら身を挺して取材していないとすればジャーナリストとしての堕落だろう。戦前、戦時中に海外から正しい世界情勢を伝えた記者の報告を握りつぶし続けた新聞社と同じ臭いがする。

 中国全体の動向を論ずる本ではないが、具体的な事件の現場への取材を通して、中国がいまどのような状況であるかを生で知ることが出来る貴重な本だ。

 著者は昨年までテレビ東京の北京支局特派員。現在は日本に戻って「ガイアの夜明け」のプロデューサーをされているようだ。

 実は先日、「テレビに映る中国の97%は嘘である」を取り上げた拙ブログに対して、著者からコメントをいただいた。感激であり、大変嬉しかった。そこに今回とりあげた著書についても読んで欲しい、と書かれていたので昨日本屋で購入し、早速読んだところなのだ。知らせてもらわなければ見落とすところであった。

 繰り返すが取材現場の様子はスリルに満ちた緊迫感があって、読んでいてどきどきワクワクする。是非それを感じながら中国の実像を垣間見て欲しい。

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コメント

中国、大きいだけに問題もいろいろありそうですね。
こちらに入って来ない事情もあるでしょうし。。。
なかなか難しい問題です。

正義とか悪とか言う価値観とは違うものの見方をしないと中国はなかなか理解しがたいものがあります。私は中国が嫌いで、しかも大好きという因果な立ち位置にいるので複雑な心境です。

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