冷たい人間
「お前は冷たい人間だ」。そんなストレートな物言いではないけれど、ほとんどそう取るしかない言い方で、死んだ父がわたしに言ったことがある。わたしが若い頃のことだから父もそんなことを言ったことを覚えていなかっただろうし、じつはそういう意味ではなくて、もっと一般的な、わたしだけを評したものではないものだったのかも知れない。
それでわたしが傷ついたかというと、それほどでもない。うすうす感じていたことでもあったから、それが父の言葉ではっきりと自覚されたことだけが記憶にある。そうなのか、わたしは冷たい人間なんだ、と思った。
冷たい人間を自覚したからとことん冷たく生きる、ということもなく、冷たい人間と思われたら生きにくいだろうな、という思いのもとに、他人に冷たいと思われないように多少気は遣った。それが奏功しているかどうかは自分では分からない。
ただ自覚があるからそういうことが意識出来たので、父には感謝している。いまでも、あっ、これか、と思うようなことがあるけれど。


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