クシャお婆さん
昔「クシャおじさん」というのがあった。あごの骨だかを自由に外せるようになったおじさんが、普通の顔から突然くしゃっと顔下半分を縮めてみせる。顔が縦方向に半分ぐらいにつぶれたように見える。
初めて見たときはびっくりすると同時に笑った。笑うしかない瞬間芸だった。
自分の老母をクシャお婆さんなどと言っては顰蹙を買うだろうけれど、まさにそのイメージがぴったりのように顔が縮んで来た。医者によると、人間の顔はあごを閉める筋肉と開く筋肉がバランスをとって安定しているらしい。ところがあごを開く筋肉は使わないとどんどん衰えていくのに対して、閉める筋肉は余り変わらないからあごがどんどん縮んで見えることになるのだそうだ。
老母は発語障害から嚥下障害と口を使うことが困難な筋肉の衰え方をしているので、ひときわそれが際立つのだ。
顔をじっと見て話しかけても、じっと見つめ返すだけで余り表情に変化がなくなってしまった。そして興味を失うとそっぽを向いてしまう。うるさいのかも知れない。昨日は妹が来ていたが、いつもは顔を見るとちょっと嬉しそうな顔をするのに、わたしに対してと同じような反応だったのでちょっとがっかりしていた。
口を開く筋肉を刺激するやり方を医者に教わったので、毎日五分くらい頬の筋肉をマッサージするのも介護の日課の一つになった。口の中側と外側からやるので本人はいやがる。
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