階上の不在
以前書いたことがあるが、私にとって階上の住人は騒人である。朝5時過ぎになると歩き回る気配があり、雨が降っていないかぎりベランダのガラス戸を開けたり閉めたりする音が聞こえる。その回数が尋常ではない。造りのしっかりしたマンションなので耐えられないほどの、騒音と言うほどのことではないものの、気になり出すと気になる。
その階上の住人の物音がしばらく前からぱったりと止んでいる。旅行にでも行ったのか、数日物音がしないことはいままでもあったけれど、今回は長い。所帯数の多いマンションなので引っ越しのトラックをしばしば見るが、もしかしたら移転したのかも知れない。
マンションの、私の属するグループは私の階の階層から下なので上の階は別グループとなり、行き来はない。こちらの天井とあちらの床とのしきりを挟んだ隣人なのに、引っ越ししたのかどうか知らない。男の独り暮らしは人に出会えば挨拶はするものの交流がほとんどない。こんな暮らしでは孤独死予備軍そのものだ。
だからといってマンションの回り持ちの役割の時以外は積極的に人と交流するつもりはない。わずらわしい気持ちが先に立つ。
こんな生活をしながら周辺の住人の気配だけを感じている孤独老人というのが多いのだろう。そこで妄想が働けば迷惑行動に出るものもあるだろう。これからますますそういう人が増える。階上の物音が絶えたことをきっかけにその一員であることをいささかながら感じた。
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