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2015年8月15日 (土)

佐伯泰英「意次ノ妄」(双葉文庫)

 時代小説作家の佐伯泰英にはシリーズがたくさんある。人間業とは思えないほどの多作ぶりだが、それがどれも面白い。一時期は四シリーズくらいを並行して読んでいたけれど、読む方が書く方に追いつけないので、いまはこの「居眠り磐音」シリーズのみにしている。

 今回読んだのはそのシリーズの第四十九巻。だいぶ前から五十巻で完結させると公言していたので、いよいよだと思っていたら、何と五十一巻で完結させることになったとあとがきで明らかにしている。このシリーズは山本耕史が主人公の坂崎磐音を演じてNHKの時代劇ドラマになったので、愛読している人も多いだろう。

 これだけ長いと数多くの登場人物にもなじみができて、まるで知人のように感じられてしまう。ただ主人公の坂崎磐音が強くなりすぎて、敵役がだんだんいなくなってしまった。

 宿敵の田沼意次が失脚して二年、ついにその意次も死ぬ。しかしその意次の妄執は死後も残され、磐音たちを倒そうとする七人の武芸者たちが意次の死とともに山から下りてくる。

 それにそなえる尚武館の面々、そして磐音の息子空也の成長。

 田沼意次の死後幕府の実権を握ったのは松平定信。彼はその危機をひそかに救った坂崎磐音を取り込もうとしたが、磐音は距離を置こうとする。そのことで松平定信は、磐音をかえって危険な存在とみなしている気配だ。なかなかたいへんなのだ。

 活字が大きいので読みやすいけれど、夢中になって読んでいるとあっという間に読み終わってしまう。またしばらく次を待ち続けないといけない。

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