藤沢周平「ふるさとへ廻る六部は」(新潮文庫)
新聞や雑誌などに載った小文を集めたもの。久しぶりの再読。
東北の庄内に生まれ育った著者は、意外なことに東北をあまり歩いていないという。作家になって取材も含めて東北各地をたずねるようになり、東北にルーツをもつ者として、そして若くして東北を離れ、そのままもどることのなかった者として東北を見つめ直している。
私も、父が山形県の最上郡の生まれなので東北がルーツであるし、大学四年間を山形に過ごしたので、この小文集に登場する地名はなじみのあるところが多い。その場所の映像を思い浮かべることができるのだ。
仕事をリタイアしてからは年に二三度東北に足を運んでいる。芭蕉についての入門書などを読んだりして、奥の細道の旧跡などを一度丁寧にたずねたい思いがつのっている。この本はその気持ちをさらにかきたてる。
そういえば「しずかさや岩にしみいる蝉の声」のあの山寺へは学生時代にたびたび行き、一度は母とその友人を連れて登った。母もまだ四十代だから途中一度休憩して力こんにゃくを食べただけで、すいすいと登った。
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