百田尚樹「大放言」(新潮新書)
「永遠のゼロ」の大ヒットで作家デビューし、次々にベストセラーを出しているこの人の本を実はまだ一度も読んだことがない。映画の方の「永遠のゼロ」もまだ未見。息子から、好い映画だったと聞いているので観てみたいと思っている。
百田尚樹はまた「放言」がマスコミにたたかれていることでも有名だ。テレビでその風貌と豪快な笑い方とともに「放言」を聞いたこともある。あの早口のしゃべりの中での言葉を一部だけ捉えれば、マスコミが狂喜するようなところを拾い出すことは容易だろう。マスコミは文脈で捉える、ということをしない揚げ足取りが得意(というよりそれに終始している)だから、この人などは格好の餌食になる。
この本はそれを逆手にとって、自分の言いたかったことを思うさまぶちまけた本であり、痛快である。当たり前のことが当たり前に書かかれているような気がするが、これではまた叩かれるだろう。
しかしいくら叩かれても、本業で実績を積み重ねていれば、マスコミのバッシングなどこの人にとって屁でもなかろう(本音はしんどいのはわかっているが、それをあえてするのがこの人の生きがいみたいなもので、ある意味たのしんでもいるのだろう。強い人だ)。
おかしな揚げ足取りでへなへなと崩れ去る政治家と違って、マスコミも勝手が悪かろう。
この本では、最初に「コスパ」という言葉がやり玉に挙げられる。この言葉、私も不動産会社のCMで初めて聞いて、イヤな言葉だな、と感じていた。なぜイヤな感じがするのか、明快に指摘されていて、その通りだなと思った。コスパになじむものとなじまないものがあるのだが、それをわきまえない人が多すぎる。
図書館についての著者の意見に大賛成。そもそも新刊のベストセラーくらい自分で買え!というのが私の考えだ。図書館は手に入りにくい、高価だったり古い本を置く所で、新刊をただで読ませるところではないと思う。これでは本屋や出版社は成り立たない。
最後にいままでの放言のいきさつと、とりあげられた部分を含むその文脈全体が書かれている。もちろん著者も認めているように「放言」であることは間違いないが、マスコミが正義の味方を気取って騒ぎ立てるようなものだとは私は考えない。
この本を読んで、マスコミに与するか、著者に与するか、なにかの識別によさそうだけれど(うっかりとんでもない「放言」をしそうになるではないか)、そもそもマスコミに与するような人は、図書館でただで読めるとしても、まずこの本を読まないだろうなあ。
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