今年8月までの訪日外国人は対前年比49.1%増の1287万5400人と急増している。8月だけ見ても前年同月比64%増の181万7100人、そのうち中国人はなんと2.3倍の59万1500人だったという。
たしか2020年までに年間2000万人を目標としていたはずだが、早くも今年中にその数字を達成しそうだ。観光による収入は日本経済に貢献することが期待されていて、それが順調に増えていることは経済的に見ればめでたいことだ。イギリス人のデービッド・アトキンソンが「イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る」という本で書いていたのは、観光という日本の資源の経済活用への提言であったが、それがたちまち実現しているのは驚きである
それに反して韓国訪問の外国人観光客は一時の勢いを失っている。MERS問題による急減がその理由だとみられていたが、それが終息してもあまり回復していない。
観光の要諦は口コミとリピート客だろう。「行って好かった」という口コミが広がり、「もう一度行きたい」と思われれば観光客は増加し、しかも持続する。
MERSによる一時的な観光客の減少ではないらしいことで、韓国には反省の声があるようだ。悪評は一度立つと回復にはたいへんな努力が必要で、時間もかかる。その例はくだくだしく書かなくてもすでによく知られている。
さいわい日本は今のところ評価は良好で、リピート客も増加している。中国の経済が減速している、などと言われながら、中国からの観光客が減るどころか増えているのは、欧米など遠方で高額の旅行より、近場の日本への旅行の手頃さが受けているからであろうし、中国の元高、日本の円安で、日本での買い物が値打ちであること、資産の換金の意味もあるなどとも言われる。
だから中国の観光客は不測の事態がないかぎり、当分増加し続けるだろう。
問題は受け入れ体制である。急激な観光客の増加は想定を越えている。受け入れ体制の対応がそれに追いつかない事態が起きていないだろうか。そこに不備があると観光客に不満が生ずる恐れがある。悪評の口コミは恐ろしい。しかしその受け入れ体制を万全にするためのコストは、万一観光客の増加が止まった時には大きな負担として残される。経済とはそういうものだといえばそれまでだが。
このようなことはすでにいろいろいわれてきたことなので、いまさらだけれど、わたしの心配はそんなことではない。普通の日本人が皆感じ始めていることだ。
観光地に中国人観光客が増えすぎて、ゆっくり観光できないことだ。とにかくやかましいし、邪魔である。最近の日本人もそうなってきたから中国人ばかりではないが、とにかくまわりに対する気くばりというものが欠けている。
15年前。いまはこんなものではない。もっと混雑。
今回の友人との旅行では、あまり中国人がひしめいている観光地へ行かなかったので幸いであったが、京都などへ行くとうんざりする。静かに歩きたい哲学の道などを中国人観光客が占拠していると、幻滅する。いま観光地に対する悪評は日本人に生じ始めていないだろうか。
大好きな中国旅行に行かなくなったのは、案外旅行の代金が高額なこともあるが、なによりどこの観光地に行っても中国人が佃煮にするほどひしめいていて、観光どころではなくなっているからだ。
昔は中国が好きな外国人が九割に中国人の観光客が一割だったのに、いまは逆である。だから外国人観光客が全く優遇されない。外国人観光客を優遇しなくても観光地は中国人観光客だけで商売が成り立つからだ。
日本人がうんざりするくらいだから、いまに中国人自身が自家中毒のように「日本に行って中国人を見てきた」とうんざりするかも知れない。そして中国以外から来た外国人観光客が同様な不快感を持ったらこれも悪評につながってしまう。
近場に中国人観光客という大きな資源を持つ日本が、その資源を生かし続けられるかどうかが、中国人自身の精神的成長にかかっているというのも悩ましいことだ。願わくば、日本に来て多少は気配りを覚えてもらいたいものだ。それなのに日本人自身が劣化しはじめている。これでは中国人観光客から却って悪い影響を受けてしまうかもしれない。
蛇足だが、中国人は長い歴史の中で徹底的な利己主義をたたき込まれた上に、一人っ子政策で甘やかされて育っているから、ほとんど精神的な成長をしていない子供みたいなものだというのがわたしの見立てである。相手の立場に立って考える、などということは思考の中にほとんど存在しない。だから日本に来ると驚くのだ。
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