森本哲郎「日本語 表と裏」(新潮社)
外国語に翻訳しにくい言葉というのがある。これは日本語に限らず、どんな言葉もそうだろう。その言葉を使う人々に特有の性格が刷り込まれていると見ることもできる。
外国人に理解しにくい、日本語特有と思われる言葉をいくつか取り上げて、その言葉の成り立ちやその意味を分析し、そこに日本人の思考様式を読み取ろうというのがこの本のテーマである。つまり日本人とはどんな人たちかを言葉を通して考えようということだ。
ふだん何気なく使っていた言葉に意外な日本人のメンタリティが含まれていることを知ることができる。
取り上げられている言葉のいくつかをあげれば、「よろしく」「やっぱり」「虫がいい」「どうせ」「いい加減」「いいえ」「お世話さま」「どうも」「もったいない」「もの」「気のせい」「かみさん」「こころ」等々。
「もったいない」などという言葉は、そのまま世界で通用する言葉になりつつあるようだ。つまり日本語のまま使わないとそのニュアンスが表現できないということを示しているのだろう。
一つの言葉について多数の使用例、外国語に置き換える試み、語源的な考察、そしてどこが日本的な心性であるのかが述べられていて興味深い。
人は言葉を使ってものを考える。というよりも言葉を使わずに考えることはできない。その言葉によってあるメンタリティが根源的に刷り込まれているとすると、違う言葉を使う人との交流は誤解を生みやすいのは当然であろう。だから自分の国の言葉のそういう個性を認識しておくことには意味があるのだと思う。
最近「もの」という言葉をワープロ変換するとき、「者」「物」「もの」のどれが選択されるかわからず、こちらの思いと違うことがしばしばあってわずらわしいと感じていた。そしてどうしてそれが全部「もの」という言葉なのかな、と思っていた。この本で多少はその疑問が解けた。そういう言葉はいくつかある。これからそういうことにも少しこだわったら面白いかも知れない。
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