やさしさ
音楽を聴きながら、内田樹老師のブログ(いま2007年頃の部分にさしかかった)をハードコピーをしたものを読みながら、フィルムスキャンを続けている。
音楽はCDを整理するために端からすべて聴き直している。久しぶりに渡辺真知子のアルバムを聴いた。そこである歌詞が気になった。
「朝のメニュー」という明るい曲の中の部分
失敗作の半熟玉子は今日もかたゆで
そんな時は「こうするのさ」
って頭でわって
美味しそうに食べてくれるの
いつも失敗するけれどそれを咎めずにいてくれる彼は「やさしい」という歌だ。二人の朝はしあわせいっぱいである。
ところで彼女は、半熟玉子が固ゆでであることが失敗だとわかっている。普通失敗したらつぎにはどうするか考えて、ゆで時間を短くしてみるだろう。今度はまた失敗して黄身はほとんど固まっていないかも知れない。そうして前回の失敗と今回の失敗の間に半熟玉子のゆで時間があると考えるだろう。繰り返すうちにおおむね半熟玉子らしきものができるようになる。
それがなんたることか、「今日も固ゆで」。
彼はいま、やさしい。女性の求めるやさしさとはこういうものだ、という歌なのだろうか。しかし彼は固ゆでの玉子が好きなのだろうか。「そういうときは」というからには、彼も「固ゆで」は失敗であると思っている。本当は「半熟玉子」を期待しているということだろう。
いつか彼も「固ゆで玉子」ではなく、いい加減に「半熟玉子」を作るように彼女にいうだろう。我慢し続けていたぶん、ちょっと虫の居所の悪いのをきっかけにして、きつい言葉でいうかも知れない。
そのとき彼女は「彼がやさしくなくなった」、と嘆くのだろうか。
この歌は二人の風雲をはらんだ未来を暗示している。
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