デービッド・アトキンソン「イギリス人アナリストだからわかった日本の『強み』『弱み』」(講談社+α新書)
著者は前作で、日本の観光資源が豊かであること、それが活かされていないことを指摘し、観光業の振興を訴えていた。それがきっかけでもないだろうが、政府は年間来日観光客の目標を2000万人にした。それが早くも今年達成する可能性が高い。
然らば観光振興は成功しているといえるのか。著者は観光客の内訳を分析して不十分であることを指摘している。
日本に暮らして25年、元ゴールドマン・サックスの金融調査室長として、日本の銀行の体質改善に取り組んできた。同社を退社後、「小西美術工藝社」の社長を委嘱され、会社の建て直しを行った。現在も同職。
この本のキーワードの一つが「面倒くさい」。関連して「面倒なことになる」という脅しの言葉。
日本人が日本の「強み」であると思っていること、日本の美点として考えていることが、海外からは必ずしもそう思われていない日本人のひとりよがりであることが辛口の言葉で語られる。
日本はまだまだ非効率で生産性が低いと指摘する。無駄な会議、経営者の無能などを自分の経験した具体例で述べる。つまり無駄なことが山のようにあるのだ。だから日本にはまだの伸びしろがある、とも言える。だからその生産性を上げるための方策をとるべきなのだが、そのときに出てくる言葉が「面倒くさい」であり、それを突破しようとすると「面倒なことになるぞ」という脅しである。
自分が仕事をしていたときのことを思い出した。この本にあげられている非効率な会社よりははるかにマシだったが、無駄なことは確かにしばしばあった。そしてそれをなくすのは面倒なことであった。
日本人について書かれたものを読むのが日本人は好きだ。この本はそのようなものの一つであるけれど、日本人を持ち上げるよりも勘違いを指摘するところが多く、良い気持ちにさせてくれない。しかし本当に日本人に必要なのはこのような本だろう。これをきっかけに少しでも日本が良くなれば、この本は日本人へのすてきなプレゼントとなる。
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