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2015年10月 6日 (火)

村松暎「瞽説 史記」(中公文庫)

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 先日テレビで久方ぶりに村松英子を見た。面変わりがしていたが、その話し方や雰囲気で即座に村松英子だとわかった。もともと不思議な雰囲気の女優だったのが、年を経て妖女のおもむきがただよっていた。

 この人のお兄さんが村松剛で、この人の書いた「醒めた炎」はわたしの幕末についての見方におおきく影響を与えた。硬派の人である。学者バカの典型で、朝、考えごとをしながら通勤のために大学へ向かい、教えられて気がついたらズボンをはいていなかった、と村松英子が笑いながら話していたことを思い出す。

 村松暎がこの兄弟と関係があるのかと思ったら、関係なさそうである。作家の村松友視の叔父さんに当たるらしい。つまり村松梢風の息子であった。だから村松英子云々はこの本と関係がない。

 瞽説(こせつ)というのは著者の謙遜である。瞽とは盲目のこと。瞽女(ごぜ)というのをご存じの人もいるだろう。転じて道理が解らないことも言う。瞽言(こげん)はでたらめな言葉やつまらない言葉をいうので、そのニュアンスか。

 史記は歴史書ということになっているが、物語の要素を多分に持っている。その史記から、「呂不韋の奇貨」、当然秦の始皇帝の出生の秘密についても語られる。

 そして「陳勝の造反」、陳勝・呉広の反乱の話。

 「管鮑の交わり」、ここで先日管子の話を話題にした。

 「匈奴の男」、冒頓単于(ぼくとつぜんう)が主人公で、匈奴と漢民族との価値観の違いが語られる。

 「兵法家呉起」、天才・呉起の波乱の生涯を描きながら戦国時代とはどういう時代だったのかが見えてくる。

 「不遇な将軍」、漢の猛将・李広は功績大なのに評価が低く、生涯不遇だった、それはなぜか。李広には虎と間違えて石に矢を射たら矢が突き立ったという逸話がある。余談だがこの李広の甥が李陵である。李陵についてはあらためて語る機会があるだろう。

 「女帝呂后の執念」、漢の初代劉邦の正妻・呂后は希代の残酷な女帝として有名、なぜそのような女性が実権を持つことになったのか。

 「宰相李斯」、秦の始皇帝時代の宰相・李斯の話、李斯の優れたところとその人間的な限界が語られる。

 以上八話が収められているが、史記にはこれ以外にも山ほど題材があるので、何度読んでも面白い。もちろん原文からの書き下しは一部しか読んだことはないけれど。

 この本は1968年に中央公論から出版され、1996年に文庫で再刊された。

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コメント

おはようございます
私も『史記』が大好きでギボンの『ローマ帝国衰亡史』とともに座右の書にしています。
また、本を是方読む人にも勧めていて、これらの本は人間行動を知るにはまさに
良書だと思います。
では、
shinzei拝

shinzei様
全く同感です。
人間を知るのに、こんなに面白くてためになる読み物はないと思います。

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