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2015年10月31日 (土)

森本哲郎「生き方の研究」(新潮選書)

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 私が私淑している(勝手に師匠として仰いでいてその影響を受けている)人のひとりが森本哲郎。本で出会ってもう40年になる。

 この本では、古今東西の著名人の生き方から著者が何を感じ取ったか、それが自分自身の生き方にどう受け止められたかが語られている。ある意味では著名人の伝記の集大成のようなものである。

 中には実在の人物ではないロビンソン・クルーソーなども取り上げられているし、ファーブルが登場するかと思えば井原西鶴が、そして陶淵明や王安石が語られる。

 生き方とはその人の美学のようなものであろうか。何を最も大切なものと考えるのか、ときにそれは生命や財産よりも価値があると思えるものとなる。その美学に殉じた人を美しいと思えるかどうか。

 そこに価値を感じるかどうかが拝金主義に陥らないための分かれ目ではないか。

 環虫類のゴカイやイソメなどが毎年大量に繁殖する時期がある。ボラなどがその時期に飽食し、栄養過多になって目に脂肪がついてうるうるの眼になる。この時期のボラは警戒心が薄れ、目もよく見えず、荒食いするのでよく釣れる。これをバチ抜けという。最近はボラではなく、シーバスに同様の荒食いの時期があるので、バチ抜けはシーバスの荒食いのことだとされているようだ。バチとは魚のえさの環虫類に対する俗称である。

 私は物欲に目がくらんでいる人たち、特に中国の成金たちを見ていると、このバチ抜けのことを思い出す。

 自分がそういうものにならないことこそ自分の美学だと思っている。得をすることをそれほど嬉しいことだと思わないし、損をすることをそれほど気にしない。自分に不都合がなければ人に譲ってもかまわない。ただ、ばかにされるのは嫌いである。

 主に損得で考える人から見れば、この本に登場する人物たちにはなんの興味も湧かないだろう。こういう生き方はできなかったけれど、私はこういう人たちが好きであり、敬意を表する。

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