菊池英博「新自由主義の自滅」(文春新書)
著者は経済アナリスト。統計数字とグラフがふんだんに掲載されていて、主張の根拠とされているが、それをじっくりと解析するには当方の根気と知力が不足している。
こういう本の場合、いいたいことを裏付けるためのデータを揃えていることが多い。データはもちろん検証も可能な事実であろうが、選ばれたデータと選ばれていないデータの両方を知らないと、そのデータを元にした主張をそのまま受け取って良いのかどうか疑わしいからだ。
新自由主義については批判も多い。詳しいことは不勉強でわからないが、その市場原理主義の論理は弱肉強食的な面が多くて問題があることはわたしも感じている。アメリカのグローバリズムというのはそのまま新自由主義のことである。
日本とアメリカが経済的に良好な時期と不調な時期を取り上げ、そのときにそれぞれの国の政府がどのような経済政策をとったのかが比較される。そして新自由主義的政策をとったときに国の経済が不調を来している、と断定する。新自由主義的政策は福祉を縮小し、格差を拡大する政策であり、それは決して財政を改善することにつながらないというのだ。
その観点から現在の安倍内閣の経済政策の問題点を指摘している。
著者は経済政策について国会に呼ばれて意見を求められるほどの経済についての権威である。だからその主張は経済学的に正しいと思う。
ただ、経済は社会的な現象であり、他国との関係や人口動態などの要素が加わると経済理論とは必ずしも異なる変化を示す。この本でももちろんその要素についても言及しているが、それを過小評価しているように見える。これは無意識に過小評価しているのではないか。
結果を解析して論の根拠にするのは学問の手法として当然だが、現在、そして将来についてもその手法にこだわりすぎているように感じるのは、わたしのほうが色眼鏡をつけているからなのだろうか。
繰り返すが、この本を読みこなすにはわたしは不勉強に過ぎていて、上っ面を読み飛ばしたに過ぎない。そんな人間のいっていることなので、興味のある人は実際に読んでみてください。
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