この数日、夜は録りためたドラマを見た。
WOWOWドラマ「誤断」
主演は玉山鉄二、「マッサン」以来の主役だろうか。製薬会社の広報部の若手社員が主人公。たまたま地下鉄の駅で遭遇した轢死事故を含めて、いくつかの事故や自殺が自社の薬の薬禍であるかないか調べるよう、副社長から特命される。
折しも会社は存命のために外資系の会社と合弁の話が進められていた。薬禍の疑いがあることを感じた主人公だが、それを金で解決するよう指示される。隠蔽を命じられたのだ。主人公は不本意ながらなんとか金で解決することに成功する。
やがてこの隠蔽体質の会社が秘匿してきた四十年前の公害事件が主人公の知るところとなり、結婚間近い身の保身と正義の意識との軋轢に苦しむことになる。そして主人公はこの過去の事件の隠蔽をも命じられる。彼がそれに対してどう取り組んでいったのか。
最後まで緊張感があって面白かったけれど、そもそもあれほどの公害事件が隠蔽され続けることなど現実にあり得ない。そうなると全体のリアリティが損なわれてしまう。あまりにその公害の恐ろしさがひどすぎるのだ。こんなことが世の中に知られないはずがないではないか。マスコミはそこまで無能ではない。
その肝心のことを除けば物語としては良くできていて面白かった。ほんの少し出てくるだけの、主人公の父親役の泉谷しげるがとても良かった。
北欧サスペンス「凍てつく楽園」(WOWOW)の第四シーズン「島に沈む記憶」全三話
何度も言っているが、北欧のドラマが好きだ。特に映像が落ち着いていて色彩が渋いのが好みだ。
スウェーデンのリゾート地、「サンドハムン島」が舞台のシリーズである。島に滞在していた男子学生が首を吊って死んでいるのを訪ねてきた母親が発見する。状況はあきらかに自殺なのだが、関係者は、彼が自殺するはずがないと口を揃えて言う。やがて自殺した場所の近くで不審な足跡が発見され、殺人の疑いが生ずる。
それなら学生はなぜ殺されたのか。彼は研究レポートを作成中で、そのために三〇年ほど前の特殊部隊の訓練時の心理学的研究をしていたことが判明する。やがて彼が訪ね歩いた特殊部隊の人物が次々に殺されていく。
特殊部隊とはどんな存在だったのか、そこでいったい何があったのか。刑事トーマスとミアのコンビが隠された謎を解いていく。そして判明した過去の事件、そして意外な犯人が明らかになる。
このシリーズにはサンドハムン島の人々の人間関係や、刑事トーマスの私生活などが丁寧に描かれて、ただの物語というよりもっと親和性が高いものになっている。だからシリーズは最初から観る方が良いけれど、独立して観てももちろん面白い。
「ローズマリーの赤ちゃん パリの悪夢」(WOWOW)全四話。
これは映画「ローズマリーの赤ちゃん」のリメイク。映画ではミア・ファローが迫真の演技で、いまでも強烈に記憶に残っている。
映画が主人公のマタニティ・ブルーの妄想なのかそれとも現実なのか、あいまいに進行したような覚えがあるのに、こちらのドラマでは主人公は意識が明確で、しかも強い。その分怪奇性が弱い。
これが全四話でよかった。もう少し長かったら途中で観るのをやめていただろう。まわりのオカルトかぶれの金持ち連中の怖さが全く感じられない。これではこのドラマが生きない。
WOWOWドラマ「海に降る」全六話。
亡き父にあこがれ、跡を継ぐべく女性初の有人潜水艦「しんかい6500」のパイロットとなった天谷深雪(有村架純)が主人公。
このドラマにも一部政治家や企業の陰謀で海洋研究開発機構(JAMSTEC)の存続が危機に瀕するという事態が進行する。しかもそのきっかけは深雪の最初の潜行での失敗が原因であった。
なぜ失敗したのか。潜行前日に彼女のロッカーにひそかに収められていた、父が死ぬ前の最後の潜行のときのビデオテープの映像を見たからだった。
この映像の謎を解くべく、彼女は若い地質技術員(井上芳雄・好演)の助けを借りて調査を開始する。そして明らかになっていく父の死についての事実と、隠されていた秘密。しかしJAMSTEC解体は着々と進行しつつあった。
メンバーたちが調べた事実を元に起死回生の手段に出る。そしてついに深雪はふたたび潜行が認められる。父が日ごろ良く口にしていた「深海にも宇宙がある」という言葉の謎を彼女は解くことができるだろうか。それはJAMSTECの存続に寄与するのだろうか。
しかし思わぬことで彼女に危機が訪れて・・・。
有村架純という女優がどうして人気があるのか分からなかった。当たり前の女の子にしか見えないからだ。ところがドラマを見終えるころにはとても魅力的な女の子に見えていた。役柄がいいから、というのはもちろんだが、それなりの彼女の魅力があるからその役柄を演じられたはずだ。
このドラマが全六話というのはちょっと長い。しかし期待以上に面白かった。一番リアリティを表現するのが難しいテーマなのに、成功している。たいへん良くできたドラマだと思う。悪役の竹中直人が怪演していて憎々しい。遠藤憲一のクールさの中の哀しみの演技はいつもほれぼれする。
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