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2016年1月27日 (水)

曽野綾子「流される美学」(3)(興陽館)

 引き続き引用する。

 ほんとうにその対象に興味をもてば、一人でうちこむものである。恋愛や、情事を、友だちと連れ立ってする者はいまい。
 一人で遊べる習慣を作ることである。
 年をとると、友人も一人一人減っていく。いても、どこか体が悪くなったりして、共に遊べる人は減ってしまう。だれはいなくとも、ある日、見知らぬ町を一人で見に行くような孤独に強い人間になっていなければならない。

 私は強い人間ではないけれど、普通の人よりは孤独に強いと思う。もちろん淋しさを知った上でのことである。淋しさを感じなければ孤独も平気だろう。しかしそれは孤独に強いとは言えない。淋しく思いながら見知らぬ町に立つ、そのことに心の底からわき上がる、震えるようななにかが、一人旅に私を誘う。

 ものごとが見えないので健康な人と、ものごとが見えるので病気になっている人だけが増える。

 ものごとが見えて、健康な人でありたい。

 人間、自分の欲しいものしかほんとうは要らないのだ。

 身の廻りは、ほんとうに欲しいものでないものにあふれている。そしてほんとうに欲しいものは手に入らない。

 中島みゆき「シュガー」から

  欲しかったものは 手に入れたわ なにもかもさ

  ほらこんなに光ってる 靴もネックレスも

  人生は二番目の夢だけが叶うものなのよ

  ほら だってあの人はあたしに残らない

 これでこの本の紹介は終わり。

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