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2016年1月24日 (日)

宇江佐真理「糸車」(集英社文庫)

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 女流の時代小説作家の作品は優れたものが多い。私が「優れた」、というのは、面白い、ということである。そのおもしろさは、情景描写、季節感、登場人物の心の動きが、観念的ではなく、読んでいるこちらに、主観的に感じられるところにある。

 ときに汗や女の匂いが直接感じられて、どきりとする。これは女性の感性のわざによるものだろう。

 宇江佐真理は、昨年惜しくも亡くなってしまった。歳は私のひとつ上、66才、乳がんであった。この新刊の文庫本の帯に、「追悼 宇江佐真理さん」とあるのだもの、買わずにはおれないではないか。宇江佐真理の本は、「髪結い伊左次捕り物余話」のシリーズの初期のものなど何冊か読んだが、全体のほんの一部である。これからときどき追加して読んでみたい。

 今回読んだ「糸車」は、松前藩の家老の元妻で、夫が藩の江戸屋敷で不慮の死を遂げ、同時に行方不明になった息子を探すために、単身で江戸に出て、小間物の行商をしているという、三六才のお絹という女性が主人公である。

 自分の人生に悲観的になることなく、それなりの人付き合いもしながら、日々の暮らしを一生懸命生きている。人の難儀にも手をさしのべ、関わりを拡げていく姿に、しずかだけれど、勁い女を感じる。まことに「悲観は気分であり、楽観は意志である」。

 ときどきふるさとの松前を思う。松前と江戸をくらべることで、いっそう江戸の情景が鮮やかに浮かび上がる。ラストのお絹が糸車を廻す情景を想像したら、涙がにじんでしまった。だれも見ていないから良いが、ちょっと恥ずかしい。私は涙もろいのだ。

 しみじみとした好い時代小説だ。

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コメント

本を読んで泣ける…良いですね。
感受性が豊かだということですよね。
素敵ですよね。
物語の世界に浸れるOKCHANさまも、
読者を浸らせるその本も

自分も不安なのでぜひ読んでみようと思います

イヌイカ様
よろしければこの本を読んでみたらいかがでしょう。
ラストが好いですよ。

イッペイ様
時代小説だからこそ現代の世相を反映させやすい、と解説にあります。
そこまで深読みはしませんでしたが、いささか感じました。
人生は流れに流されていくのに似ていますが、いささかでもそれに意志をもって自分の行方にかかわりたい、そんな勇気を与えてくれます。

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