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2016年1月13日 (水)

東野圭吾「ラプラスの魔女」(角川書店)

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 東野圭吾は映画化されたものをいくつか見ているのに、実際に読んだものはほとんどない。嫌いなのではなく、はまるといままで出版されたものを片端から読まねばならぬ気になってしまうのがこわいのだ。面白いに決まっているから我慢している、といった方が好いか。

 帯の後ろに著者自身のことばとして「これまでのわたしの小説をぶっ壊してみたかった。そしたらこんな小説ができました」とある。それならどうしても読んでみたくなるではないか。

 「空想科学ミステリ!」と謳っている。東野圭吾ファンから叱られそうだが、なるほどテイストは宮部みゆき風になっている。著者を知らなければ宮部みきの小説と言っても、私などはそう信じるだろう。

 最初に断片的なプロローグとなる話がいくつか提示されたあと、最初の事件が起こる。事件というより、当初は温泉場での突発的な硫化水素による事故死として扱われるのだが、その調査に携わった地質学の教授が、類似の事故にふたたび遭遇することで不審を感じ始め、しかも調査中の事故現場近くで同じ若い女性に出会うことでいっそう疑いを深くしていく。

 そのことを、最初の事故を事件ではないか、と独自に捜査していた刑事に話したことから、二つの事故に関連する事実が次第に明らかになり、被害者につながりがありそうなことが分かってくる。

 しかしこれが故意に引き起こされたものだとするとその手口はどのようなものなのか、それがどうしても解明できない。

 やがて六年前に起こった硫化水素自殺による悲惨な事件が浮かび上がってくる。少女が自殺してその母親と弟が巻き添えとなり、少女と母親は死亡、弟は脳の機能に障害が起こり、植物人間となっていた。

 残された父親がその事件のてんまつとそれを乗り越えていく状況をブログに切々と書き綴っていた。彼は家族のことを何も知らなかったことを悔い、娘がなぜ自殺したのか、それぞれの家族がどのように生きていたのかを、いろいろな人に出会って聴取し、家族を再構成していく。やがて息子に回復の可能性があるという天才脳外科医の申し入れに、手術を承諾するのだが・・・。

 こうして最初に提示されたプロローグの断片が次第につなぎ合わされ、全体が見えてきたとき、驚くべき罠が隠されていたことが明らかになっていく。

 たいへん面白いのだけれど、硫化水素で殺された被害者の、なぜ殺されなければならなかったのか、どうしてそれほどの憎悪の対象になったのかが、多少弱いような気がした。

 この物語も超能力ではないのだけれど、特殊能力がテーマとなっている。人間の脳の能力はまだまだ奥深いのだ。

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