アーナルデュル・インドリダソン「湿地」(創元推理文庫)
大晦日に、読みかけのミステリーを読了した。
アイスランドはそのむかし無人島だったといわれ、ノルウエーのバイキングやアイルランド人やケルト人が移住してきて、後に定住するようになった。十三世紀以降はノルウエーとデンマークの支配下に置かれたが、十九世紀に独立運動が起こる。十九世紀後半にアイスランド自治法が制定されたが、その後もデンマークの支配が続いた。完全な独立を果たしたのは1944年である。
国土は日本の三分の一ほど、人口は三十万人あまり。首都はレイキャビクである。
このミステリーはそのレイキャビクが舞台。主人公は刑事のエーレンデュル。古い小さな集合住宅の半地下にすむ老人の他殺死体が発見される。状況から行きずりの発作的な犯行に見えたのだが、そこに残されていた不可解なメッセージに、エーレンデュルはこの犯罪の背景に根深いものがあることを直感する。
このミステリーの読みどころは、エーレンデュル刑事の地道な捜査で次第に明らかにされていく老人の過去である。最後に明らかになる犯行動機に、この世の不条理と人間の業の深さを強烈に思い知らされる。
エーレンデュル自身が抱える家族の悩みもこの小説に深味を持たせている。北欧ミステリーのおもしろさを堪能できるけれど、このような陰鬱な物語が苦手な人にはつらいかもしれない。
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おめでとうございます
今年もよろしくお願いします
紹介された何十分の一冊でも
楽しめればと思っています
投稿: イッペイ | 2016年1月 2日 (土) 10時01分
イッペイ様
こちらこそよろしくお願いします。
貴ブログも楽しみに拝見していきたいと思います。
投稿: OKCHAN | 2016年1月 2日 (土) 11時12分