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2016年2月19日 (金)

山口瞳「禁酒 禁煙」(中公文庫)

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 山口瞳はサントリーの宣伝部に在籍していた。つまり開高健の後輩である。そのことを知っていて山口瞳を読み始めたわけではない。それに開高健と山口瞳は文章の肌合いが全然違う。けれど、私にとって、二人ともとても肌合いが合う。さらに山口瞳が「先生」として敬愛している高橋義孝先生(ドイツ文学者で、エッセイスト)も、私は大好きだ。高橋義孝の影響をおおいに受けているのだから、山口瞳が面白くないわけがない。酒に飲まれるほど飲んで、稚気あふれる失敗(はたの人間にとって、ときに迷惑だが)をするところまでよく似ている。

 この本は「男性自身」シリーズのなかからのアンソロジーである。「男性自身」シリーズも、「江分利満氏」シリーズも、私小説風エッセイと言えようか。「男性自身」はエッセイに近く、「江分利満氏」は私小説に近い。

 私は二百人近くが暮らす大学の寮で、ただ一人煙草を吸わなかったのが自慢である。ただし私の部屋はたまり場でもあったので、いつも数人が煙草を吸い、部屋は煙で霞んでいたから、ほとんど喫煙しているのと変わりがない。だから人が煙草を吸うことに抵抗はない。嫌煙権などを振りかざし、喫煙者に目くじら立てる風潮にはなんとなく違和感を感じる人間である。

 煙草は試しに吸ってみたことがある。いままでにひと箱分くらいは吸っただろうか。まったくむせずに吸うことができるが、吸い続けようとはついに思わなかった。そもそも煙草はおとなの男のシンボルの意味合いがあるように思う。だから成人前の少年が、煙草を吸うことで、自分が一人前の男であることを誇示するのだろう。誤解を怖れずにいえば、女性の喫煙にも、男性へのあこがれとコンプレックスがあるのではないかと思う。そうではなく、ほんとうの安らぎのために喫煙している女性も知っているので、すべてとはいわないが。

 酒は、父は下戸だが、母方の祖父や叔父が大酒飲みだったので、高校生の頃から年に二三回だけだが、祖父の家で人並みに飲んでいた。もちろん泥酔するほどのませてはもらえないが。だから大学に入って飲む機会がたくさんあったのはなんとなくおとなになった気がして嬉しかった。こちらはしばしば飲み過ぎて粗相をし、迷惑をかけた。

 米沢という雪国は、酒豪が多い。けた違いに強い人がいる。そういう先輩達に鍛えられたので、いつしか躰が酒になじむようになってしまった。

 「禁酒 禁煙」というけれど、喫煙しないから禁煙をすることが出来ない。それに、今のところ必要に迫られていないので、禁酒するつもりはない。

 肝心のこの本の話だが、読むにしくはない。ところどころ著者の強いこだわりが書かれていて、その繊細でありながら強い意志の表されているところが、読んでいてなんとなく嬉しくなる、そういう本である。

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コメント

この本 大好きです
この機会にもう一度読んでみます
でも どこにあるかわかるかなあ・・・

イッペイ様
私もたまたまでてきたので久しぶりに読んだところです。

10年くらい前にタバコやめましたが、その前に一生分以上吸ってましたので肺機能が少し低いようです。祖父・父と酒飲みだったらしく近所の年長者には『飲めるから飲め!』と言われ迷惑してます。
ほんの付き合い程度です(笑)

けんこう館様
いけない父親として、私は息子に小さいときからお酒をたしなませていました。
いまでは立派な酒飲みで、私よりはるかに酒に詳しく、いつも帰省するときは美味い酒を探して持参してくれます。
二人で飲むとあっという間になくなります。

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