流動児童
文化大革命時代、朝日新聞を始めとするマスコミは、中国は理想的な平等社会だと力説した。その平等は資本主義社会の機会の平等ではなく、結果の平等である点に問題があるとは思っても、中国が平等であることに疑いをもつ人はいなかった。
ところがその中国に厳然たる身分差があったことに驚いたことがある。その最たるものが農民と市民の戸籍の差である。農民は都市部で市民として生活できないようにして、農地に固定化するための施策である。
しかし中国が経済躍進を遂げるために最も大きなエネルギーとなったのは、低賃金の労働力だった。その供給源が農民工と呼ばれる農村部からの出稼ぎ労働者達だった。世界の工場、と中国が呼ばれたのはこの安価な労働力のお陰であった。
その賃金が上昇してきて、中国進出企業にとってメリットがなくなりつつあることが、中国の経済成長鈍化の大きな原因の一つであることは間違いないだろう。しかしそのことは置いておく。
今朝のニュースで取り上げられていたのは「流動児童」の問題である。中国では共稼ぎが普通だから、農民工は男性ばかりではなく、女性も都市部に仕事を求めることが多い。祖父母に子どもを預けることが普通だったが、都市部での生活が固定化すれば、子どもたちを呼び寄せるのは当然だ。しかし農民工は都市部の戸籍を持たないために市民としての行政上の恩恵を受けることができない。
その一つが、子どもが普通の都市部の学校に通うことができない、というものだ。そのような児童を流動児童というのだ。そのため、未認可の農民工の子どもたち向けの学校がたくさん開設されている。事実上の黙認状態であって本来違法である。
劣悪な環境であることなどから、その教育レベルは低く(そもそも教師が教員資格を持たないのが普通である)、子どもたちは必然的にすさむ。
なんと少年犯罪の半数がこの流動児童である。犯罪の頻度が高いのだ。これが社会問題化しているという。そういえば、日本でも中国残留孤児の子弟が、日本に帰ってきてから犯罪に追い込まれていったといわれる。在日韓国人の犯罪頻度が高い時期もあった。もちろんすべてではなく、一部の人の話ではあるが、社会から疎外されればそこへ追い込まれるのは必然なのかもしれない。
それは社会のひずみから生ずる問題で、それが是正されるには、そのひずみを解消する必要があり、それがただされても、問題が解消されるまでに長い時間が必要であろう。結果的にひずみを放置したメリットよりも、はるかに大きなコストを支払うことになるのが世の中だ。
中国は、流動児童、少数民族などの問題を始め、そのようなひずみをたくさん抱えている。経済が右肩上がりの間はそれを覆い隠せて顕在化しなかったけれど、いまそれらが次々に噴出している。それはまだ始まったばかりだ。
習近平が情報管制、言論規制を露骨に行っているのは、それらの問題が多数発生していることを却って認めているということだろう。
習近平は問題解決の優先順位を間違えている。それは彼が国民のことを考えるよりも、自分のことを優先していることに外ならない。中国危うし。
« 今日は新酒試飲会 | トップページ | 新酒試飲会 »
「ニュース」カテゴリの記事
- 意見の相違(2022.06.25)
- 諸刃の剣(2022.06.23)
- 気になる数字(2022.06.21)
- ニュース雑感・国会関連(2022.06.02)
- ニュース雑感・朝鮮半島(2022.06.02)
コメント
« 今日は新酒試飲会 | トップページ | 新酒試飲会 »
こんばんは。。
わたくしもそのニュース拝見いたしました。
子どもがさらに小さい子どもに暴力している動画には心が締め付けられました。
経済を優先すると必ず子どもから仕返しされると思います。
やはり日本の武士道の精神、教育勅語の教えは素晴らしいと思います。
投稿: 藤子 | 2016年2月 6日 (土) 22時26分
藤子様
その日本の良さが失われつつあるような気がします。
子どもに、相手の立場に立ってものを考えてみる、という習慣が教えられるといいのですが。
投稿: OKCHAN | 2016年2月 6日 (土) 23時49分