天ぷら
若い頃、新潟の得意先で、とても厳しい人がいた。こちらのいい加減なところをびしびしと指摘されて、ぐうの音もない程やり込められた。そういう人が大好きだ。だからとことん教えを請うた。かわいがられて、その人を通じて沢山の人と仕事の縁が出来た。
その人は春は山菜、秋はキノコをなかまたちと採りに行く。セミプロの集団なので、私は足手まといだ、といわれ、その人の家で帰りを待つだけ。昼頃に帰ってきた人たちと、沢山の収穫物を皆で料理して食べる。私はただごちそうになるばかり。うまそうに食べ、うまそうに新潟の地酒を飲んで酩酊してみせる、という芸しか私にはないから、それに徹する。
しあわせな思い出である。
そのときに、キノコというものがこんなに美味いものなのか、と心から思った。大学で山形に暮らし、一年間だけ下宿したときの主人夫婦が、やはり山菜とキノコ採りのセミプロで、名前も知らないキノコや山菜をばくばくと食べたら、こんなに手放しでうまそうに喰う下宿生はいない、と喜ばれた覚えがあるけれど、それがなにも考えずに出来る私の芸である。そのときよりもうまかったのだ。
新潟のその人の家に時々泊めてもらった。キノコが好きだから、と近くの農家から、わざわざ栽培椎茸の取り立てを分けてもらってごちそうになった。取り立ての身の厚い椎茸は、ジューシーでうまい。たぶん食べたたことのない人には想像出来ないだろう。
突然こんな話を書いたのは、昨日思い立って天ぷらを作ったからだ。普通は一人では作りすぎるので、大好きだけれど滅多に作らない。たまたま何とかいうキノコの天ぷらをテレビで見て、それがちょっとエリンギに似ていたので、エリンギの天ぷらを作ってみよう、と思い立ったのだ。
それだけでは淋しいから人参の天ぷらやかき揚げも作る。かき揚げはネギを大量にきざみ、バナメイ海老のむき身と一緒に揚げる。これはいつも作る。エリンギの天ぷらは想像通り。もう少し高めの温度で揚げて、からっとさせた方が良かったかもしれない。キノコは案外水分の多いものなのだ。エリンギは椎茸ほど美味いものではないが、食感は悪くない。
キノコについては桐生に森産業という栽培キノコの会社があって・・・という話になると、果てしなく話がつづいてしまうので、また機会があったときにする。それはそれで沢山思い出があるのだ。
新潟のその人との関係はわずか二年足らずで終わった。私の個人的な事情もあって、名古屋へ転勤になったからだ。その人からは十年くらいはつき合って、自分の知っていることを出来るだけ教えてやろうと思ったのに、と恨みを言われて、申し訳なくて思わず涙を流した。
天ぷらを揚げて食べながら、そんなことを思い出していた。
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ものごころつき始めたころ我が家の小屋で、シイタケを栽培していたことを思い出しました。
たぶん食べるためではなく、売って生活の足しにするためのものっだたと思います。
牛一頭、豚数頭、ニワトリ数羽もいたような気がします。
牛・豚は飼育して売るため、ニワトリは卵と肉を自家消費するためだったと思います。
母親が嫁に来る前に母親の実家は、天ぷらが原因で全焼したそうです。
そのためか、私は家で天ぷらを作るのを見たことがありません。
ブログを拝見し、材料は身近にあったのに、と残念に思いました。
投稿: けんこう館 | 2016年2月23日 (火) 09時29分
けんこう館様
まだ幼稚園に上がるかどうかという幼い頃(昭和20年代の終わり頃)、家でも鶏を飼っていました。
貝の殻を砕いて餌にませるのが私の仕事でした。
母上が天ぷらを作らなかった気持ち、いまなら分かるでしょうね。
私は九十九里に近いところに育ちましたので、天ぷらのメインは地引き網で揚がったカタクチイワシです。
これを手開きして山のように揚げます。
おいしいですよ!
投稿: OKCHAN | 2016年2月23日 (火) 10時14分
こんにちは。
いつもありがとうございます。
天ぷらは美味しいですよね?
特に揚げたてはたまりません。
恥ずかしながら私の得意料理?
なのですが、病気になってからはほとんど
揚げていません。
いつも、ついつい沢山揚げて毎日のように
頂いていました。夫は「天丼」が好物!
あ~いつになったらその気?になることでしょう。
この頃は専ら「ハゲ天」で調達です!
主婦失格??
投稿: マコママ | 2016年2月23日 (火) 13時36分
マコママ様
天ぷらは気力体力が充実していないと、自分で揚げた上にそれをおいしく食べることはできません。
母も揚げているうちに油で食傷してしまう、と良くいっておりました。
揚げる気になるときがあると好いですね。
投稿: OKCHAN | 2016年2月23日 (火) 14時43分