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2016年2月29日 (月)

内田樹・光岡英稔「生存教室」(集英社新書)

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 思想家にして合気道の高段者で、道場を主催している内田樹老師と、武術家の光岡英稔氏の、武道についての対談である。

 人間は社会的な存在であるけれど、その前に生き物であって、身体という自然をベースに生きている。その身体のありようを内側から見直すものとしての武道、という考え方が論じられている。

 人間は昔のように自然豊かななかでは生きられなくなりつつある。しかし武術をなり立たせていたものは、その自然の中で生き抜き、生活することによって作られた躰を基準にして洗練され、継承されてきた。自然と離れれば躰も変わる。武道が失われていくのはとうぜんなのかもしれない。

 養老孟司氏も、人間が自然を離れてしまうことは、生命力の衰退につながる、と危惧している。人類はそろそろ成長拡大の限界点に来ているのかもしれない。

 そういう意味では、私も(いうのも恥ずかしい程度だが)多少の武道をかじったことで、この対談でいっていることの意味がわずかながら分かるつもりだ。息子にも武道を身につけるように仕向けた。

 世の中は、これからあまりほのぼのとした時代ではなくなっていくことだろう。殺伐として、他人を信じることが難しい時代になっていくだろう。プライバシーをここまで護らなければならない時代、というのはたぶん人間の歴史のなかで初めてのことだろう。それだけ悪意が蔓延し、それらが悪用されるのが普通になっていることの表れなのだから。

 この本の副題が「ディストピアを生き抜くために」というのを見て、そんなことを感じている。私は最悪のディストピアを見ないうちに退場するであろうから、いいけれど・・・。

 この本では、特にスポーツ武道について論じてはいないけれど、論ずるに足りない、ということなのだと思う。勝敗の問題ではないのだから。

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