君子、危うきに近寄らず
北朝鮮が核実験につづいて(事実上の)ミサイル打ち上げを強行したことに対して、朴槿恵大統領が開城工業団地からの撤退をはじめ、制裁措置を発動した。いつもに似ず迅速で強硬な行動に対し、韓国国民の大統領支持率は大きく回復しているという。
この人の判断は、自国にとって最も大事なこと、が基準ではなく、国民の人気に基づくものだから、支持率が回復するのは狙いどおりだろう。当然その判断に一貫性などない。とはいえ、現時点で北朝鮮に対して何らかの行動を取らざるを得ないのだから、ほかの選択肢はないのだけれど。
問題は中国との関係である。アメリカ、中国、日本などとの関係のなかでの韓国の立ち位置は、大きく中国寄りであった。中国との経済的な関係がますます大きくなっていくなかで、政治的にも中国寄りになることをアメリカは危惧していただろうと思う。
その中国へすり寄る行動の、大きな要因が反日であることも確かなことに思われる。露骨に日本と距離を置くことを選び、積極的に外交を進めた朴槿恵大統領は、外国を訪問するたびに日本の悪口を言い、日本をナチスドイツと同等の犯罪国であると非難してきた。外交の目的がそもそもなんだったのかよく分からない。反日プロパガンダが目的なら、日本を訪れることなど考えたこともないだろう。国民がそれを望まないからだ。
朴槿恵大統領は、習近平との親しい関係が構築出来た、と自負していたのだろう。確かに中国は、北朝鮮よりも韓国を上位においているように見えた。だから、北朝鮮の制裁について朴槿恵大統領が要請すれば、習近平はそれに応えてくれる、と信じていたのかもしれない。そうなれば、彼女の国際的な評価も国内の人気も大いに上がったことだろう。
ところが案に相違して、中国は朴槿恵の要請に無反応だった。つまり無視した。韓国の要請にこたえて北朝鮮の制裁に動く、などという選択肢など、はなからないようだ。
習近平の対応は、韓国との関係など斟酌する必要があるほどのものとも思っていない、と感じさせたのだろう。それがきっかけか、朴槿恵の中国に対する態度が激変したように見える。
韓国はにわかにアメリカにすり寄り、中国の最もいやがるTHAADの設置まで推進しようとしている。これが対北朝鮮対策というより、中国を対象にしていることは明らかだ。朴槿恵は嫌がらせのつもりが本気になってしまったのかもしれない。
中国は北朝鮮になにもしないだろう。制裁もしないが今以上の支援もしない。もし北朝鮮になにかことが起きて金王朝が崩壊しても、国境を越えようとする難民を銃を用いて阻止しようとするだけだろう。そうなれば難民は南へなだれ込むしかない。韓国は同胞を撃つことなどできないから、受け入れるしかない。
すでにそのようなぎりぎりの状態になりつつある、と思える。韓国でも多くの人がそう感じ始めているのではないだろうか。
韓国のメディアなどでは、南北統一を前提とした夢を語るものが散見される。韓国の人口は四千万人足らず、その人口は少子高齢化が進んでそろそろ減り始める。人口は国力だから、南北統一による人口増は韓国の成長に寄与する、と期待しているようだ。
夢は統一の後の世界の話であり、統一に至るまでの困難について、また、想定される経過を語るものを見たことがない。考えている人は少なくないはずだが、韓国のメディアはそんなものを取り上げないのだろう。
その際に韓国を援助するのを期待されているのがどこであるか、まさか中国ではあるまい。慰安婦問題について政治的な幕引きを強行したのが、そのための日本へのメッセージだと韓国は思っているかもしれないが、日本人はよほどお人好し以外はそう思わないはずだ。ところが、今年に入って日本人の嫌韓比率が急減しているというニュースを見た。日本人はよほどお人好しなのだろう。
北朝鮮の金王朝の崩壊の可能性が高くなっている。あんな異常な体制が、そもそもいままで存続してきたことこそが不思議なことではないか。その異常さがさらにひどくなっているのだから、当然崩壊の可能性も高まっているはずではないか。
北朝鮮の異常さのエスカレートは、実は無意識に「もうだめだ、助けてくれ」というメッセージではないか。
この有事を想定し、日本は準備しなければならないし、さいわいそれが可能なのが日本だが、韓国にはその準備ができていない。有事となれば韓国は日本に救いを求めるだろうが、できればなるべく日本はそれにかかわらない方がいい。日本が助けても、「過去の贖罪である」、とか、「やましいと思うから助けたのだろう」、とふたたびみたびいわれ続けることがほぼ確実だからだ。
最低限朴槿恵大統領が日本に来て「韓国国民を代表してお願いします」と頭を下げること、さらに「反日を二度としません」、と約束することが前提だろう。そんな約束は「足元を見られたものだ、させられた約束だ」と後でいうかも知れないが。
こんな事態が妄想であり続ければいいのだが・・・。
「君子、危うきに近寄らず」の「危うき」は、変節を何とも思わない、朴槿恵という怒れる女性のことで、そのことを書こうとしたら、文意が逸れて、思わぬ長文になってしまった。申し訳ない。
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