技術流失
シャープが支援を最終的にどこに求めるのか、今月25日の役員会で決めるというニュースを見た。それが最終決定になるのかどうか、さらに二転三転するのかもしれない。
シャープにはユニークで貴重な技術があるという。そのようなオリジナリティのあるものなら、うまく生かせば会社がここまでひどいことにならなかっただろうと思われるから、生かし方がお粗末だったのか、経営陣そのものがお粗末だったのか(それともそれほどの技術でもないのか、というのはここではおいておこう)。
シャープの去就はともかく、その技術の流出が懸念される。
では台湾企業が支援したら技術流出し、日本の連合体が支援したらその技術流出は食い止められるのか?
実はその逆ではないか、という意見もあり、私もそちらに与する。首をかしげる方もいるだろう。シャープは台湾企業に対し、社員の継続雇用を強く要望して、傘下に入る条件としている。だが、日本の連合体に支援を受ける場合、銀行の強い指導により、大幅なリストラと報酬低下が必至である。
そうなれば技術を持った優秀な技術者は会社を離れ、よりその技術を生かせる場所へ転身するだろう。まず海外へ行くものと思われる。
いつも拝見している、shinzeiさんの「shinzeiのブログ」に、画期的なガンの治療薬を日本で発見しながら、その開発に応えるところがなくて、みすみす海外にその功をもたらしてしまった話(2/19)が取り上げられていた(shinzeiさん、勝手に紹介してごめんなさい)。このような話はたくさんある。
日本にオリジナリティのある技術がなくて物まねばかりだ、と長くいわれてきたけれど、それは大いに間違っている。そうでなければノーベル賞を取るような研究者がこれほど輩出するわけがない。そのようなオリジナリティのある技術を開発し、製品化することに投資するような、見識があり、勇気のある経営者や銀行家がいなかったのだ。
私は繊維製品の製造や加工を行う会社を得意先として営業してきた。私の四十年近くの営業人生は、日本の繊維産業のピークから衰退を見る人生だった。日本中の繊維の産地の多くが縮小衰退消滅していったのをこの目で見てきた。
もちろんまだ日本にも最先端技術を次々と生み出して、世界と互している立派な会社や産地がある。とはいえ多くの会社は韓国や中国の人件費の圧倒的な安さには抗すべくもなく、リストラを続け、ついには退場していった。
経営者はそのような状況の時、まず設備投資を控え、リストラを行う。リストラされる人に、しばしばその会社にとって金の卵を産む鶏が含まれる。というよりも、そのような優秀な人間は正論を語るので、上司や回りに煙たがれている上、高給で遇されていることが多いので、真っ先にターゲットにされる。信じられないことだが、私が、この人は生来楽しみな優秀な人だ、と思って積極的につき合った人ほどリストラされたのを見てきたから事実だ。
そういう優秀な人が韓国や中国の会社から、三年程度の契約期間で高給で引き抜かれていった。リストラされているから引き抜かれたのではなく、自分の意志だけれど、見た目にはそう見える。結果的に彼らの赴任先の工場はあっという間に日本の技術レベルに追いついてしまった。
彼らも退職金とそのあとの短期間に入ったまとまった金で、その後の生活を確保することが出来たし、かれらを引き抜いた会社もわずかな投資で大きな利益を上げることができた。失われたのは長年かけて蓄積された日本のノウハウであり、その価値はリストラで得られたものとはけた違いに大きい。
シャープの経営再建について、多くの人が技術流出を懸念すると思うが、必ずしも日本の企業や銀行が支援すれば流出が止まる、というものではないことを知っておいてもらいたいと思う。
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そろそろ中国・韓国に振り回され利用されるのはおしまいにしたいものです。
技術流失・投資・援助など、彼らの言うところの侵略の代償以上に負担済です。
反日教育・反日プロパガンダをする国に、なぜ利用されるのでしょう。
投稿: けんこう館 | 2016年2月22日 (月) 09時59分
けんこう館様
安易なリストラがもたらしたものでしょう。
組織の資産は第一に人だ、という当たり前の事を見失った愚かな経営者が、コストダウンのために貴重な人材を切り捨てたからです。
愚かな経営者は愚かな中間管理職を取り巻きに集め、有能なために真に会社を憂える人材から切り捨てていきました。
日本の企業が低迷したのは外的要因よりもそのことが大きな要因でしょう。
東芝を見ればよく分かります。
投稿: OKCHAN | 2016年2月22日 (月) 10時32分