伊丹十三「ふたたび女たちよ!」(文春文庫)
この前に読んだ「女たちよ!」とくらべると、一つ一つの文章がだいぶ長くなっている。また、蘊蓄自慢のようなものがかなり少なくなっている。一つ一つの話しがちょとした物語風になっていて、そういう楽しみが味わえる。
伊丹十三は、やはり個性的である。そのスノッブなところが好き嫌いを分けるかもしれないが、私はぎりぎりで嫌いではない。それに猫好きであることもあって点が甘くなる。
ところでスノッブというと俗物根性、というような意味で取られるが、伊丹十三については俗物では決してない。むしろ俗物とは最も遠いところにいると思う。彼を俗物と思うとすれば、そう思うことが俗物なのかもしれない。
ある意味で物事にこだわり、三流を嫌う、という意味でのスノッブなのだ。そのこだわりがいい格好しい、と見られるだろうけれど、つまりセンスがいいのだ。筋の悪いのが嫌いで、妥協が苦手なのだろう。
人は妥協もするし、なにかにこだわりもする。そのこだわりをこのような本で読んで、私などはつい影響を受けてしまうのだ。それが生きにくくなることにつながっていても、それでいいのだ。
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