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2016年3月 1日 (火)

強がりをいっているけれど

 むかし、「北の国から」という、傑作ドラマがあった。仕事が忙しかったし、放映当時はビデオも持っていなかったから、ほとんど見ることができなかった。そこでビデオを買ってから、貸しビデオ屋で借りて見た。違法であるが、コピーガードキャンセラーを手に入れ、ダビングをしてコレクションを作った。画質の劣化は甚だしいが、ドラマの良さは堪能出来た。

 そのあと、年に一回くらい後日談のスペシャルが放映され、これはリアルタイムで見たし、テレビから直接ビデオにダビングした。私自身が小学生の息子と娘を抱えて妻のいない三人暮らしを始めたから、これらのドラマは私にとってほとんど身内の実話である。何遍見直し、勇気づけられたか分からない。父親というもののあり方を教えてもらった。

 このスペシャル版の一つのなかで、裕木奈江の叔父にあたる菅原文太が、田中邦衛に向かって、「誠意、誠意とあんたはいうけれど、誠意って何ですかね?」と静かに問う場面がある。田中邦衛は答えに窮する、というシーンだ。

 田中邦衛は息子のしでかした過ちについて、謝罪している。そのなかにいささかの計算がないとはいえないけれど、計算がなければ謝罪も成り立たない。当たり前のことだ。このことでついに黒板五郎(田中邦衛)はいままで築き上げてきたものすべてを失う。その自己犠牲によって、彼が父親として息子をいかに愛しているのか、分かりすぎるくらい分かる。少なくとも私には皮膚感覚で分かる。

 私はこのシーンを見たあと、菅原文太を憎んだ。大嫌いな俳優になった。この時の菅原文太の姿は、繰り返し頭に浮かび、その姿と声と語り口に、私は耐えられない。菅原文太は年を経て、農業をやって見せ、政治や環境問題に口を出し、老醜をたださらした。何様になったつもりなのだろう、ちやほやされた自分の愚かさがみえないのか。彼は役柄としてではなく、菅原文太という自分自身のことばとして、あのシーンでこの台詞を言ったと私は感じた。

 いま私は「誠意とは何か?」という論法で窮地に立たされている。

 そのことで多くを失い、老後の人生設計が根底的にこわれてしまう事態になりそうである。そのことを考えると口惜しくて夜眠れなくなる日が続いている。しかしよくよく考えてみれば、失うことで得られることもある。そのよろこびはいかばかりか、金には換えられないものだ。

 もちろん強がりだけれど、生きていけないことはない。ただ、いままでのような脳天気な生き方は望めない。しかし、そのときは子どもたちが助けてくれるだろう。それが信じられるから、強がりが言えるのだ。

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コメント

北海道は、何回も行きましたがドラマを観てないので感動が少なかったかもしれません。
菅原文太は、翁長知事の応援にも行きました。農業までにしておけば・・・・・。
『誠意』とは、自分を守りながら相手を責めるのに便利な言葉です。
まるく収まらなければ、最後は法律(判決)に従うというのが三流法学士の私の考えです。

けんこう館様
なかなか人間は晩節を全うするのが難しいようです。

おっしゃるように、現在法律的な解決を進めていますが、法律そのものが現実と乖離していて、心情的に納得出来ないことがあります。
まあ、こちらの立場に立ってのことで、相手は相手なりに不満かもしれません。

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