シェイクスピア(木下順二訳)「マクベス」(岩波文庫)
魔女裁判がもっとも盛んに行われたのは、まさにシェイクスピアの時代である。そして「マクベス」と言えば、のっけから三人の魔女が登場し、マクベスをそそのかすことでこの悲劇が始まるのである。
池内紀「悪魔の話」を読んで、「マクベス」を連想するのもちょっと変だが、たまたまいつか読もうと積んである本の一冊だったこと、先日「人間ぎらい」という戯曲を読んで、戯曲を楽しむ、というのもありだと思ったし、魔女が大事な役割で登場するのも興味深い。
目的があると案外すらすら読めるもので、ようやく持っていただけの本が日の目を見た。
「マクベス」はシェイクスピアの四大悲劇の一つで、「ハムレット」、「オセロー」、「リア王」につづいて、最後に書かれたものだそうだ。
マクベスは魔女たちの予言で、自分が王になりたいという密かな願望がかなえられると思い込む。それにしても自分を引き立て、人望もあり、恩のあるダンカン王を暗殺することには逡巡がある。
しかしその魔女の予言を妻のマクベス夫人に伝えたことで、強くけしかけられて、ついに暗殺を実行する。さらに秘密が漏れないように、魔女の予言を共に聞いた親友のバンクォーに刺客を送る。
ついに王になったマクベスは、しかし人望を失っており、反乱者が続出する。不安から再び魔女に自分の未来を問う。そして「バーナムの森が動かないかぎり安泰である」という託宣を受ける。
ラストの有名なクライマックスは、そのバーナムの森が動くシーンである。
舞台は11世紀のスコットランドであり、まだ魔女裁判は猖獗を極めていたときではない。とはいえこれが書かれた16世紀から17世紀にかけての、シェイクスピア全盛のときは、まさに魔女裁判がもっとも盛んなときであった。しかしこのマクベスにはその影があまり感じられない。
それらのことも含めて、巻末に「『マクベス』を読む」という、訳者の木下順二がこの戯曲の構造解析をしている文章が付けられている。表面だけ読んでいたけれど、このような深読みを絵解きして見せてもらうと、さらに興味深い。名作と言われるだけの奥行きがあるのを知った。
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おはようございます
先日は私の拙いブログを見ていただきありがとうございます。
確かにクルーズ候補は酷い人らしいですね。
アメリカの大統領選挙がこんな惨状になったのは、私見ではこれこそが民主主義が衆愚政治に変わったことだと思っています。衆愚政治は民主主義のエラーなどではなく、必然的な変化だと思います。つまり民主主義を続ける限り避けようがないものだと、残念ながらそう思います。おそらくアテネの民主政の末期もこんな風だったのでしょう。
しかし、今の所民主主義以上の制度が見出せませんから、成り行きを見守るしかないのだと思います。
あまりいい結果は期待できませんが・・・。
では、
shinzei拝
投稿: shinzei | 2016年4月13日 (水) 06時00分
マクベス・・・青春時代に劇団四季の上演で見ました。
今でも所々、劇が浮かんできます。
4大悲劇・・・全て見ましたね~。
今では 劇場に行く事もありません。
最後に見に行ったのは・・・キャッツです。
投稿: マーチャン | 2016年4月13日 (水) 06時32分
shinzei様
民主主義はギリシアが発祥と言われますが、そもそも誰かを選ぶと言うより、誰かを追放するために選挙をした、というのが始まりらしいですね。
そのときから衆愚政治的な状況だったと聞きました。
金で政治を牛耳っていた人物が、それによって賢人を追放したと言います。
投稿: OKCHAN | 2016年4月13日 (水) 07時19分
マーチャン様
舞台を観たのは数回しかありませんが、実際に観ると強い印象が残りますね。
マクベスは海外のものをテレビで観ました。
話を知っていても、ラストはマクベスの気持ちになってドキドキしました。
投稿: OKCHAN | 2016年4月13日 (水) 07時23分
私が子供の頃の少女雑誌は今思えば質が高かったと思います。
シェークスピア四大悲劇を最初に読んだのは少女雑誌でしたから。
他の世界文学なども少女雑誌からの下地があったので
大人になってから本に対する関心が深まりました。
・・・といってもたかが知れていましけど^^
投稿: おキヨ | 2016年4月13日 (水) 12時12分
おキヨ様
古典の良さを知るにはそれに触れなければなりません。
そういう機会がむかしはいまよりあったような気がします。
ときにはいい格好をしたいから古典を読む、というのもきっかけとしてはあっても好いでしょう(かくいう私もそうです)。
ところが、いまは古典を読んでもだれもすてきだと思う人がいなくなりました。
バカの競争に明け暮れて、裸の王様の世界みたいですが、なかにはちゃんと古典を読んでいる若者もいると信じたいところです。
投稿: OKCHAN | 2016年4月13日 (水) 13時34分