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2016年4月13日 (水)

宮崎正弘「『中国大恐慌』以後の世界と日本」(徳間書店)

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 先日読んだこの著者の「中国、大失速 日本、大激動」が2月28日に出版されたもので、そして今回読んだ本が3月31付けで出版されたもの。同じことを書いているわけではないから、単純に時間経過による変化を読み取るというわけにはいかない。それより、どうしても著者の世界を見る眼を繰り返し読むことになってしまう。

 とはいえ、当然こちらの本の方に、今年に入ってからもたらされたニュースが多いから、その分析には新しい視点も見られる。

 現在伝えられているニュースや中国当局の発表する経済指標によれば、中国の経済状態は小康状態に見える。激減しつつあった保有外貨の減少は三月はプラスに転じ、経済収支も改善され、悲観的に報じられてきた2016年のGDPの伸び率の見通しも、やや上方修正された。元安も株安も止まり、安定している。物価も懸念されていたような上がり方はしていない。不動産も都市部では下落が止まり、再び需要が回復している。

 これらのニュースは本当だろうか。本当かも知れない。しかし、中国は情報を自分の都合で隠したり明らかにしているから、検証のしようがない。発表された統計数字を見て、そこから、楽観的に見る見方も出来るし(中国はそれを期待している)、それぞれの統計値の矛盾をつき合わせて、実態をもっと悪いもの、と悲観的に捉えることも出来る。

 なぜ矛盾が生ずるのか、それが誤差から生ずるものをはるかに超えていれば・・・、当然統計に故意のウソがある、と推計されるのだが、まさか、と思うお人好しもいまだに多いようだ。しかし、それを見抜いて中国マネーを虎視眈々と狙っているハイエナ、いやハゲタカたちがいる。そのハゲタカたちの洩らすことばに実は真実が見えてくることもある。そのこともこの本には言及されている。

 前作でも言及したが、著者は中国ウォッチャーだが、中国だけを見ているわけではない。中国を見るためには、中国を取り巻く世界を見なければならないことを教えてくれる。著者は世界中を飛び回り、世界のパワーバランスがどうなっているのか、世界がどう動いているのか、それにどう中国が関わっているのか、そこから中国の世界戦略を読み解こうとしている。

 結論から言えば、習近平は世界戦略を誤っている。そのことのツケが今回りつつある。無尽蔵とも言える保有外貨を背景に、世界中に金をばらまくような外交を続けてきたが、それが次々に不良債権化しつつある。すでにリビアやベネズエラではひどい火傷を負ったが、著者はそれ以上の焦げ付きが続々と発生すると予測する。

 海外ニュースを注意してみていくと、この予測を裏付けるニュースが散見され始めている。アフリカで、南米で、カナダで、オーストラリアで、そしてインドネシアで・・・。インドネシアの高速鉄道は、中国が受注したけれど、全く進展していない。あり得ない短期間での完工を約束しているが、遅れれば遅れるほど達成は不可能になっていく。そもそもインドネシア(というよりジョコ大統領は)は、国家予算をつぎ込まずに工事をすることが出来ることを是として中国に決めたのだが、中国側は今になってインドネシア政府に債務負担を持ちかけているという。

 あとになって、相手が引っ込みがつかなくなったら、約束を平気で覆すのは中国のお家芸だ。契約、という観念が希薄だから、約束を破ることが悪いことだ、という意識は全くない。国際的なルールを守らなければならないという常識が欠如した国柄なのである。このごろ、世界は習近平主席のお陰で、ようやくそのことに気が付きだしたようだ。いまだに中国に幻想を抱いているのはイギリスとドイツくらい、フランスもようやく気がつき始めたようだ。

 この本の中で私が注目したのは、山内昌之「中東複合危機から第三次世界大戦へ」という本を取り上げ、コーカサス地方に発生している民族紛争が、世界を戦争の危機に引き込む恐れに言及していることだ。私も含めて日本人にはこのことの意味は分かりにくく、唐突に見えるかも知れないが、ロシアとトルコの代理戦争のようなこの紛争が、どれほど危機的か、ヨーロッパの国々は恐ろしいほどよく分かっていることのようだ。ここに武器を供給しているのはもちろんロシアだが、同時に中国も深く関わっている節がある。

 さらにイランとサウジアラビアとの確執が危機につながるおそれもある。

 世界は今までとは大きく変わって、激変しつつあるのかもしれない。このきっかけがアメリカのオバマ大統領の失策にあるとも言えるし、必然だったと言えるかも知れない。ただ、結果から見ればアメリカは出来ることをしなかった、と歴史に残される気がする。それなのにアメリカは、あの大統領選挙のお粗末なありさまである。

 中国が経済的な危機に陥るのか、それを回避出来るのか、今まさに剣が峰にある。そしてその危機が現実になったとき、国内の不満のエネルギーを逸らすため、意外に強行手段に出る、ということは、当然あり得ることとして考慮しておかなければならない。ラップで反戦音頭を踊っているときではないのだ。

 中国は北朝鮮の死命を制する鍵を握っている。これは私の妄想だが、中国経済危機が深刻になったら、それから眼を逸らすために、北朝鮮を追い込んで、暴発させることも可能なのだ。いま北朝鮮は中国から完全に干し上げられれば、かなりの確率で暴発するのではないか。そのあとどうなるか、など中国は知ったことではないだろう。

 ますます踊っている場合ではない。

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コメント

北朝鮮でさえ、日本が射程に入るノドンミサイルを200発持ってるということです。
中国は、数千から1万発と言われてます。そしてルールを守らない国柄です。
かつてのように四方の海は、日本を護れなくなってます。
ラップに抑止力はありません。

けんこう館様
日中戦争から太平洋戦争の時代の軍部の行動と、現在の世界情勢の中の日本政府の当然の対応とが混同されているのは、日本の歴史教育の不備と、若者自身の不勉強のせいでしょう。

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