人材流失、技術流失のこわさ
韓国は半導体の生産で世界をリードしており、技術的にも確立している。その優秀な技術力を支えている技術者を中国がヘッドハンティングしている、と産経新聞が伝えている。すでに台湾の技術者のヘッドハンティングが進んでいて、中国側は「年俸五倍、三年保証」の条件で勧誘しているという。
韓国の半導体の技術者は人材不足の事態が起きているという。すでに中国に引き抜かれた人材が多いのかも知れない。
これは日本の企業から技術家技術者が流出した歴史をなぞるものである。日本経済が停滞し始めたとき、企業経営者はリストラという安易な方法で利益確保に走った。経営者は会社にとってあまり必要のない人材をリストラしようとしたであろう。ところがそのような他でつぶしのきかない人材は必死で会社にしがみつく。どこでも再雇用してもらえる、腕に自信のある人はリストラをチャンスととらえて退社を恐れない。そういう人にヘッドハンティングが行われるのはもちろんである。
愚かな経営者が計画通りかそれ以上のリストラに成功して喜んでいるうちに、気がついたら会社にとって必要な人材とそれに伴って技術が、そしてノウハウが流出していた。リストラで得られたコストダウンよりも、失ったものがどれほど大きかったのか、どれだけの経営者が気がついていただろうか。
ノウハウは長い時間で蓄積された貴重な財産であり、一朝一夕に取り戻せるものではない。保身で行ったことが会社の資産を大きく失うことになったことの責任を、経営者は自覚していただろうか。
私は観念的にこのことを語っているのではない。営業としていろいろな会社の技術者と折衝する機会があった。この人は優秀だ、と直感することがある。わかるものなのだ。ところがそのような人はたいてい上司とぶつかる。ときに上司に毛嫌いされていることもある。年功序列だけで上司になった人間の多くが、自分より優秀な人間を使いこなせない。
このように優秀な人が突然こちらの折衝相手ではなくなり、現場のどうでもいいところへ移転させられるのをしばしば見たものだ。そしてあとに据えられるのはろくでもない人間だったりする。人の二倍三倍働く人はときに邪魔者あつかいされる。これらの人々を見る人は見ている。そして五年後、十年後、私が海外で出会ったのはその人たちだった。
そういう人たちを何人も失った企業は・・・ほとんどなくなってしまった。
淘汰されていく企業というのは、数字として計数化できない、積み上げた信用、ノウハウ、人材を失うことの意味が理解できない会社だったことを私は実感している。それが韓国で起きているのなら、韓国も日本と同じような停滞を招くだろう。
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まさにその通りで、私も早期退職組のひとりです。
韓国の代表企業が世界を席巻したのも、日本企業の技術流出ですね。
そして、韓国企業の株主が他国である事と同様に、日本の電気業界も
SO、SHも今や他国企業、同業他社も後を追うでしょうね。
投稿: 岳 | 2016年5月 3日 (火) 09時06分
韓国は、ブーメランなのでしかたありません。この先、慰安婦問題もブーメランになりそうです。
銀行を含め多くの企業が外資に支配されてる韓国には未来はありません。
この先、いかにブロックするか日本の覚悟が必要です。
年功序列・護送船団方式の良いところも残しつつ新しい和式資本主義というものは出来な出しょうか。
投稿: けんこう館 | 2016年5月 3日 (火) 10時19分
岳様
経営者が人材流出や技術流失の問題をしっかり認識できていない会社は生き残れないと思います。
韓国や中国はもともと技術家を低く見る国柄ですから、日本以上でしょう。
投稿: OKCHAN | 2016年5月 3日 (火) 13時46分
けんこう館様
日本には職人に敬意を払う文化があります。
それが技術を大事にすることにつながっていると思います。
理科系の役人や経営者が少ないと、技術系死につながることになり、結果的に日本の利点を見失うことになりました。
韓国や中国は職人や技術者に敬意を払うどころか、下に見る国ですから、日本以上にその衰退がひどいかも知れません。
投稿: OKCHAN | 2016年5月 3日 (火) 13時51分