「言論の自由度が低い日本」という評価の理由
日本人にとって日本の言論は自由度が高いと思う人が大半だろう。一部アフリカ諸国よりも下、なんと韓国の70位よりも下位の72位と評価されたことを、意外に思わない人は少ないのではないか。これが秘密保護法などが制定されたからだ、などと鬼の首を取ったようにいう勢力もある。しかし秘密保護法の手本にしたアメリカが41位であるから、どうも説得力がない。
ネットニュースで日本の記者クラブのことが話題として取り上げられていた。これで、「そうか!」、と得心がいった。
今回の国別ランキングをしたのは、国境なき記者団という組織らしい。もちろん彼らは日本でも取材活動を行っただろう。そこで日本の「記者クラブ」というものに出会った。取材に差別があることを身にしみて実感したにちがいない。
彼らは、「政府の情報をそのまま報道していて、政府にコントロールされている」、「これは日本のマスコミが政府の圧力のもとにあることに外ならない」、「日本の報道には独立性が足りない」とコメントしている。
日本の「記者クラブ」の存在は以前から問題視されてきた。記者クラブは、権力の圧力に個別のマスコミでは対抗できないから共同で対応する、という趣旨で発足したものと思う。ところがそれが仲良しクラブに堕し、自分たちを護るために外部を阻害し、独自取材を怠けるという状況になっている、と批判されている。
いかにも反権力を標榜しているのに、その記者クラブのぬるま湯にどっぷり浸かっている大手新聞社がいるという。この体質が継承され、結果的に中国や韓国の取材でも、同じ行動をしてきたのではないか。だから産経新聞ソウル支局長が韓国であのような仕打ちを受けても、外国記者ほど批判が盛り上がらなかった。
海外ニュースについては日本の大手新聞社のニュースはつまらないものが優先されていて、本質を読み取ることができないことが多い。これについては、現地記者の経験のある人たちの、匿名座談会でのことばを読んで愕然としたことがある。大事な情報を次々に本社に送電するのだが、本社では相手の国を慮って取り上げられないことがしばしばあり、埋め草のような記事ばかりが取り上げられるというのだ。
これを考えれば、外国の記者達が日本の言論が不自由である、と評価するのは当然である。
思えば日本のマスコミは、戦時中「大本営発表」をそのまま報道することを強いられた。その体質がそのまま残されているのだろう。ヨーロッパにいた特派委員達が、次々に重要な情報を入手し、世界情勢について正確な事実を送電したにもかかわらず、当局を慮り、編集局が自発的に握りつぶし続けた、という歴史的事実がある。国民を目隠ししたのは政府だけではない。
安倍政権を批判し続ける大手新聞社は、この日本の言論の自由度が低位であると評価されたことを、自分の問題として受け止めているのだろうか。これも安倍政権の強権政治のせいだ、と強弁して恥じないのだろうか。自分が批判されているのだぞ!
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国境なき記者団という組織自体が中立ではなさそうです。
言論の自由の低い国では、朝日新聞などは存在できないと思います。
投稿: けんこう館 | 2016年5月 5日 (木) 16時22分
けんこう館様
朝日新聞は言論の自由度が低い国でも存在できます。
現に中国で一番信頼されているのが朝日新聞であることがそれを示しています。
中国政府に迎合し、顔色を見ていることからもよくわかります。
戦争中には先頭に立って戦争賛美をしていました。
反体制なのはポーズだけで、国や国民のことを考えている新聞ではありませんから、そのときの状況でどんな態度でもとるでしょう。
そもそも自由を自分で勝ち取る、という気持ちがないから、体制に与えられないことを批判ばかりするのだと思います。
チベットやウイグル、内モンゴルの実態をどこまで報道したでしょうか。
投稿: OKCHAN | 2016年5月 5日 (木) 17時12分