自発的か、おためごかしか、使嗾されているのか
日本の領海である沖ノ鳥島の周辺で漁をしたとして台湾の漁船が拿捕され、罰金を支払って釈放されたことに対して、台湾国民党の馬総統が、日本は不当であると噛みついたことを以前取り上げた。
馬総統はさらに、「このままでは日台関係に悪影響が出る」、「日本は意地を張るな」と日本を批判しているという。
台湾のニュースを注目していたら、馬総統のこの件に対しての対応に批判が出ている、と言う記事を見た。さもありなん、と思って内容を読むと、野党の国会議員の「馬総統の対応は日本に対して弱腰過ぎる」、という批判であった。なんだこれは。
5月20日に新総統に就任する蔡英文氏は、日本の若手議員たちと面談(就任祝賀の席では話がほとんど出来ないだろうというので少し早めに訪問したとのことである)した際、「抑制的に、出来るだけ早く終息させたい」と述べたそうで、これは当然のことばであろう。
国民党は、沖ノ鳥島に台湾の軍艦を派遣すべしと主張している。それに対して、次期駐日大使の謝氏(元行政院長=首相)は「軍艦派遣は戦争も辞さない、という意味合いがあり、反対である」と発言している。これに対して国民党からは批判が続出しているらしい。
国民党のある議員は「中国が南シナ海は中国領であると主張していることに対して、アメリカは軍艦を派遣した。それは中国に対する宣戦布告に当たるのか?」と指摘したそうだ。馬鹿ではないか。宣戦布告であるとは中国ですら考えないけれど、アメリカはいざとなれば戦争になってもかまわない、という覚悟を持っていることを中国に意思表示をしたのである。
国民党の議員にその覚悟などありはしない。そもそもそんな覚悟が必要な事態などどこにもない。台湾の領土を日本が侵略したとか、台湾の国民が日本に拉致され、危害を受けたというのなら話は別だが、今回は日本の領土について台湾は認めがたいという話だけである。
今回の国民党の言動は、この問題を国民的もり上がりに結びつけて自党の支持挽回に結びつけたい、という下心が見え見えである。それは台湾にとっても日本にとっても、害のみあって全く利のないことである。亡国の愚かな言動で、ここまで国民党は末期的なのか、と哀れを誘う。
しかし人は扇動されるとしばしばそれに乗せられる。台湾国民たちがこの国民党のアジテーションに扇動されて盛り上がらないとは限らない。台湾が反日的になるのは国民党にとってはもちろん、何より中国の歓迎するところだろう。
国民党の今回の言動は、自党に支持を取り戻すための自発的なものなのか、中国が喜ぶ(これは馬総統がひたすら台湾国民よりも中国のために行動したものを受けている)ことをしようとするおためごかしなのか、それともまさかとは思うが、中国の使嗾によるものなのか。
今のところ日本でそれを報ずることが少なく、日本人は台湾に対して不快感を感じることはほとんどないが、台湾が反日的な色に染まりだせば、日本人もそれに反応するだろう。そうすれば、台湾を訪れる日本人は激減し、台湾は中国からの観光客ばかりになるだろう。そしてなし崩しに台湾は中国領に取り込まれていくだろう。まさかと思うことも、あのトランプ氏のような人物が大統領候補指名を受けるように、起こるのが世の中である。
台湾国民がこの件をどうとらえるか、注意して見ていきたい。
蒋介石ならどう思うだろう。
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おはようございます
この件については「所詮は台湾も中華民族の”国”で、日本とは利害がぶつかるのか」
と少し残念に思っています。
なまじ親日的な”国”で、私も台湾人の友人が結構いますので
つくづく残念でなりません。
しかし、これは日本の利益にかかわる問題ですから、台湾には譲れない部分が大いにあると思います。
では、
shinzei拝
投稿: shinzei | 2016年5月10日 (火) 07時10分
shinzei様
蔡英文新総統は、日本と事を構える気などないでしょうし、穏便におさめようとするでしょう。
それを弱腰、と国民党が騒ぎ立てることになると思います。
それに対して台湾のマスコミがどのように報じるのか、国民をあおり立てなければいいと思います。
おかしなことになればおっしゃるように残念です。
投稿: OKCHAN | 2016年5月10日 (火) 15時13分