揚げ足をとるが
舛添都知事が会見して一連の疑惑について釈明し、一番の問題である政治資金規正法に抵触する疑いのある家族旅行の経費を会議費用として計上したことに対して抗弁した。旅行先のホテルの部屋で何人かと打ち合わせしたことは間違いないので、会議したことは事実であるが、家族との旅行費用をそれに加えて計上したことは不適切なので返金するという。
しかし、だれと、そして何人の人と会議と称するものをしたのかは明らかにしていない。これではホテルのボーイと立ち話をしても会議だったといいかねない。彼にとっては、誰かと打ち合わせれば会議となるらしいから、家族と談笑しても会議かも知れない。とはいえだれとどんな会議を明らかにしないのだから、会議がなかったということを証明するのは不可能である。あったことは証明できるが、なかったことはこの場合証明するのが難しい。
李下に冠を正さず、瓜田に履を納れず。
公人たるもの、疑惑を招くおそれのある行動を厳に慎むのが当然であろう。
彼の疑惑の解明については今後に待つとして、一連の釈明でたびたび常套句を聞いたのでその揚げ足をとる。
会見前までに、舛添都知事は「ご迷惑」と「ご心配」をおかけして申し訳ないと述べていた。だれに対して言ったのか。都民であり、今回の騒動をニュースで興味津々で見ている人たちに対してであろう。
週刊誌の記事が出るまで、都庁で知事に直接関わっている人以外は、知事がこのようなことをやっていたことを知らない。確かに都税が無駄に使われていたなら都民が、政党交付金が無駄に使われたなら国民が迷惑を受けたと言えないことはないが、彼は合法的であって責任はない、と明言している。どんなご迷惑をかけたのか、彼が迷惑をかけたと言っている対象者は、迷惑を受けた自覚がない。
ましてや普通の人は「ご心配」など全くしていない。彼の役割がこれから全うしにくくなることで迷惑をうけることを心配する当局者はいるだろうけれど、それは別の都知事に交替すれば解決することである。
お騒がせしてご迷惑をおかけしました、ということだろうか。このお騒がせをニュースで見て、それぞれの人が自分の意見を言うことは、ある意味でストレス解消の娯楽である。この私のように。
然らば「ご迷惑」と「ご心配」なのは言っているご当人のことなのだな、とだれでも感じているだろう。
今回の会見ではそれを反省したのであろう。「疑われるようなことをしてお騒がせし、たいへん申し訳ありませんでした」というような妥当なものになり、たびたび頭を下げていた。公私混同の事実を認めることは留保しながらも一応謝罪したつもりなのであろう。
さらに都知事は「ご懸念をおかけして済みません」と繰り返し言った。「懸念」を手元の国語辞典で見てみると、「気にかかって不安がること。心配」とある。気にかかって不安がっているのはニュースを見ている側ではない、ご当人である。ことば巧みなこの人の、このようなことばの使い方にこの人の感性の粗雑さを見てしまう。
巧言令色鮮仁。
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後は、都議会に期待
野党の追及を乗り切れるか?
日本中が見守っている
の問題、選挙はしたくない。
今200万票取れる候補がいるの?
それが一番の問題
投稿: ちかよ | 2016年5月15日 (日) 10時01分
ちかよ様
大人数の都庁職員達をリーダーとして率いて行くには、それなりの資質が必要です。
そういう人が思い当たらないというのは悲しいことです。
それにしても舛添要一という人の金銭感覚は明らかにおかしいように思います。
金に細かい人はしばしば金に汚くて、公私混同に走りやすいようです。
面白いことに、そういう人ほど他人の不正には人一倍厳しいものです。
投稿: OKCHAN | 2016年5月15日 (日) 10時31分