非寛容の世界
フランス全土でいわゆるゼネストが起きているのを今朝の海外ニュースで見た。フランスの放送局はもちろん、イギリスの放送局も取り上げているからヨーロッパ全体の関心事であるのだろう。
なにを求めてのゼネストか。労働法の改正反対の抗議が目的である。今朝初めて知ったくらいだから詳しいことを知らないが、フランスは労働者の権利が過剰に認められていて、それでは企業にとっては負担が重すぎるので、修正しようというものだそうだ。
雇用や解雇についての企業の裁量権を拡大することが盛り込まれているらしい。現在でも失業率が高く、特に若者の失業率の高いフランスだから、民衆は今以上に労働者が苦しみ、失業も増える、と反対しているのだろう。
フランスの企業の競争力は他の先進国と較べて劣る。それが労働者の権利が過剰に保護されているからだ、という事実があるが、それは労働者にとって既得権であるから、それが少しでも損なわれることに反対するのは当然だと労働者は思う。彼らにとって労働法改正は企業の都合を優先する悪の行為である。
しかしフランス政府から見れば、現在の労働法のままではフランス企業はそれに足を引っ張られて競争力を持てず、ドイツなどとの経済格差はますます拡大してしまう。そうなればフランスはいよいよ勢いを失い、失業がさらに増えてしまう。フランスは没落してしまう。労働法改正は過剰の是正であり、他国とのバランスをとらざるを得ないやむを得ざる措置である。
ニュースを見ていると、政府は改正案の多少の修正も考慮しているらしいが、労働者側は政府側の説明を一切聞く耳を持たず、絶対反対、改正案撤回要求を貫くつもりのようである。非寛容の世界では妥協案が模索されようもない。落としどころが見えないのだ。
画面ではガソリンスタンドの前に並ぶ、車の長蛇の列が映されていた。製油所のゼネストなどでガソリンの供給が滞っているのだ。原子力発電所の前にも多数の人が集まっていて、現場放棄のために稼働率低下が余儀なくされているという。
これではいまに電気もガスも供給に影響が出て市民生活に支障が起きるだろう。道路封鎖をしている労働者達に食ってかかる市民の姿もあった。「我慢比べだ!」と叫ぶ労働者達。我慢比べをしている間にフランスはどんどん出口を見失う。自分の首を自分で絞めている姿に見えるのだが、どうなのだろう。
フランスはどこの国よりも労働者が優遇される社会主義の国だとも言われている。社会主義の国は本質的に崩壊へ到るらしい。オランド大統領も祖国をはるか離れた日本でやきもきしていることだろう。
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