岩満重孝「百魚歳時記」(中公文庫)
著者については全く知らない。著者紹介のところには大正十年生まれで、(ほとんど)独学で絵を学ぶ、とある。画家であり、俳人かと思われる。著書もいろいろあるようだ。
歳時記とあるから当然春夏秋冬に分けられていて、季語としての魚を紹介しながら、その魚にまつわる俳句がいくつか取り上げられている。見開き二ページで魚が一種類、そこに彼自身の魚の絵が添えられている。表紙も彼の絵だ。
たびたび言うが、私は俳句がよく分からない。この本に挙げられている俳句でも、すぐ分かるものもあるけれど、意味がちっとも分からないものも多い。イメージが結ばないし、そもそも漢字が読めない。無用なところにふりがながあって、普通知られていないものにふりがながないのは不親切だ(著者がもともと読めていないなら別だが)。
俳句をやるくらいのひとは、この程度のものは瞬時に分かり、イメージが浮かんで大きくうなずいたりするものなのだろうか。出来れば句の意味を教えて欲しい。分からないままなのはとてもじれったい。
ひがみで言えば、こちらが分からないのを見透かしているのではないか。分からなくて申し訳ありませんね!
絵も今ひとつぴんとこない。私もひところは釣りをずいぶんやったし、水族館も大好き、魚類図鑑を眺めているだけで楽しい、というほど魚好きだから、ここにあげられているような魚についてはたいてい実物がよく分かるし、味も知っている。ちょっと違うんじゃないか?と思うものもなかにはある。
私の知らないこともいろいろあるけれど、知っていることについてはどうも浅薄な知識の感じがするし、ときどき魚を擬人化して語る語り口にユーモアを持たせているつもりらしいが、ひとりよがりでちっとも面白くない。
見開き二ページでは書けることも知れているから仕方がないのだが、そのわりには無駄も多いし、他の魚と重複したエピソードがしばしばあって、少々興ざめである。
ちょっと辛口の批評をしてしまったが、この人の本はけっこう人気があるらしいので、私との相性が悪いだけなのだろう。
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