高峰秀子「私の渡世日記 上・下」(文春文庫)
先般所用で千葉へ行った際に弟の家(実家)に宿泊した。私の本がたくさん積んであるので、本は持参せず、積んであるなかから手に取ったのがこの本だったことは先日書いた。
読みかけのままだったので今回の旅に持参したのだが、毎日酒を飲んでばかりであまり読み進めず、帰ってきてからようやく読了した。
高峰秀子は私の母の一歳年上(1924年生まれ)。2010年に肺ガンで亡くなっている。ヘビイスモーカーだったという。
子役で天才といわれて、おとなになって名優になることはない、といわれるが、天才子役で名女優になった希有な例がこの人だ。
むかしの子役(子役時代は戦前)は児童福祉法などないから引っ張りだこで、彼女はほとんど学校に行くことができなかった。松竹から東宝への移籍の条件として、なんとか女学校へ行かせてもらったが、それもほとんど出席できず、一年足らずで退学している。
この本は彼女の生い立ちと五十歳までの半生記だが、同時にそれは日本の映画史でもあり、彼女の交遊録でもある。しかしなにより、自分の母親との壮絶な闘争記でもある。高峰秀子は実母を五歳で亡くし、実父の妹である平山志げの養女となる。この平山志げの芸名が高峰秀子であり、子役になるときに養母が彼女の芸名とした。
とにかく凄まじい養母なのである。ほとんど一生をこの母親に食い物にされたといっても過言ではないのだが、それにめげずに耐え抜いた高峰秀子という女性の強さに脱帽する。人間力が尋常ではない。
そのあたりは巻末の解説に沢木耕太郎がまとめてあり、それがすばらしいので、この本を読み終わったら是非この解説も読んで欲しい。
前にも書いたが、私は高峰秀子が嫌いだった。しかし映画を見たりその文章を読んだりして、がらりと見方が変わった。そしてこの本を読んで大好きになった。
彼女は、自分は嫌われやすい、と自覚している。それは当然だ、と思っている。演技でないときの自分を飾ることをしないひとなのだ。それは俳優であることと本来の自分とのバランスをとるためかも知れない。ここに彼女の人生のほとんどがさらけ出されている。ここまで書くことで、また人から顰蹙を買うかも知れないと承知しながら、書かずにいられない彼女の気持ちがよく分かる。
特に女性には是非読んでもらいたい本だ。人生観が多少変わるかも知れない。凄い本である。
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私は高峰秀子の赤裸々な著書を7巻読みました。
学校へ行かずとも彼女の生い立ちそのものが生きた教科書ですね。
大人になってからの彼女の交遊録がまた凄い。
先天的な賢さと稀有な人生経験が多くの文化人に愛される女性に仕上がったのでしょう。
投稿: おキヨ | 2016年5月27日 (金) 13時52分
おキヨ様
環境が人間をつくる、などといいます。
社会が悪いから、教育が悪いから、教えてもらわなかったから悪いことをした、などと言い訳します。
とんでもない、悪いことをしたのは悪いことをした人間に責任があるのだとわたしは思います。
高峰秀子のような生い立ちでも真っ直ぐ生きることができるのですから。
投稿: OKCHAN | 2016年5月27日 (金) 14時23分