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2016年8月 8日 (月)

映画「黒衣の刺客」(2015 台湾・中国・香港・フランス)

 監督・ホウシャオシェン、出演・スー・チー、チャン・チェン、妻夫木聡、忽那汐里ほか。

 とにかく台詞の少ない映画である。だからストーリーが明確ではない。断片的な一言から、時代や人間関係を推察するしかない。時代設定は、唐の末期ということで、その時代背景を知っているから地方軍閥である節度使と朝廷の緊張関係がわかるけれど、知らないと何のことやらちんぷんかんぷんだろう。

 女道士に預けられた娘が、暗殺の術を極めた上で、節度使の暗殺のためにふるさとに帰ってくる。それが黒衣の刺客である。しかし情が移ってなかなか暗殺が決行できない。妖僧が出てきたり、権力争いや、節度使の疑心暗鬼による別の暗殺が画策されたりして、話はけっこう複雑なのだが、物語はほとんど盛り上がりらしい盛り上がりがないまま、静かに淡々と進んでいく。

 この映画が各種の賞を取ったことが信じられない。映画として出来が悪いとは思えないが、この映画がすんなりわかる人がそれほどいるとは信じられないのだ。
 
 この映画は優れて映像的である。風景や夜の宮殿の中のシーンなどがすばらしい。たぶんそれが評価された理由だろう。ギリギリ映画になっているけれど、もうちょっとで監督のひとりよがりに終わるおそれがあった。

 妻夫木聡と忽那汐里が出ていることに、最初まったく気がつかなかった。中には日本人的な顔立ちの人もいるものだなあ、などと思っていて、ラストでようやく気がついた。私のように知らないで観たら気がつかない人もいるのではないか。それほど重要な役でもないし。 

 もう一度観たくなるような映画ではないが、シーンの美しさだけは忘れられないだろう。

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