山本夏彦「最後の波の音」(文藝春秋)
帯に本文の一部が抜粋されている。
「諸君!」巻頭「紳士と淑女」の名高い匿名子の友の一人が私の旧著四、五冊を熱中して読んでいわく「なんだこの人いつも同じことばかり言ってる」。
匿名子応えて言うには「寄せては返す波の音と思え」。友だち甲斐にかばってくれたのである。たぶん彼は文を読めと言ってくれたのだろうと私は勝手に解釈している。
山本夏彦ではないが、私もブログで同じことばかり言っているはずだ。だってそれが私だから。
私がいつも拝見するブログがいくつかある。そのブログを書いた人の眼で世間を見る。のぞき穴みたいなもので、そのブログを書いた人が開けてくれて見せてくれているものだ。自分にはないのぞき穴から、自分ではふだん見ることのない世界を見せていただくことは大変ありがたいことだと思っている。
私のブログを読む人も、私の開けた穴から私が見ている世界の一部を覗き見ている。なるたけ違うものを見てもらいたいと思っても、そもそも自分の世界など狭いものだ。よく考えれば世界を見てもらうことが目的ではなく、世界の見え方を見てもらいたいのである。それが私の自己紹介であるから。
今回読んだ「最後の波の音」は、雑誌「諸君!」と「文藝春秋」に連載されていた文章の内、著者の晩年にあたる時期のものを抜粋して本にまとめたものだ。内容が分類して並べられているので、いっそう同じことが繰り返されたものになっている。
それでも読むごとに山本夏彦が沁みてくる。彼に出会えたことは私の幸せであった。
切り取った景色に5.7.5の短文を貼りつけ…のぞき穴に差し込むときのドキドキ…いやな面も沢山みすかされているブログの世界・・・それも魅力の一つなのでしょうね。自分とは時々違う角度からの世界観・・・考えさせられることも多く楽しく読ませていただいています。
投稿: かすみ風子 | 2016年8月27日 (土) 22時15分
かすみ風子様
書いているといつの間にかブログが書けていることがあります。
意識していなくても頭の中ではひとりでに考えているのでしょうか。
自分で不思議な気持ちになります。
川柳からイメージする世界も人により違うのでしょうね。
それが短詩の面白さなのでしょう。
投稿: OKCHAN | 2016年8月28日 (日) 06時05分