おなぐさみに
馮夢龍(ふうむりゅう・またはふうぼうりゅう)の「広笑府」から。
さる男が妻を娶った。香炉が八個入った箱を携えてきた。内の一個だけは新しくて、灰の痕跡がない。わけをきくと、「七つは次々に死んだ夫を供養したもの。もう一個の新しいのは、今度の役に立てるために用意してきたもの」と答えたという。
七人も八人も夫を死なせるような女は、その死後にはどういうことになるのか。
おなじみの袁枝の「子不語」から。
江蘇省句容(こうよう)県の南門外に九夫墳という墓があった。伝えるところによると、美しい女がいて、夫がいて一幼児あり、家も裕福だったので、新しい婿を迎えた。一子を生む。夫はまた死んだので前夫の傍らに葬った。次にまた一人の入り婿を迎えたが、同様に死亡し、かくて次々に九夫を迎えて九子を生み、ずらりと九つの墳墓がならんだ。やがて女も死んで九墳のあいだに葬られたが、夕暮れになると、その地に陰風が吹きおこり、夜は罵り騒ぐ声がして、あたかも互いにこの妻を奪い合うごとくであった。行人も絶え、近村でも不安なので、官に訴え出て、各墳の頭に杖三十の罰を加えたところ、それからは静かになったという。
この世には男と女があり、生と死がある。愛憎の葛藤は生死を超えて絶えない。死んだ者が生きている者に執着を残すことでのこわい話は無数にあり、なかには凄惨な話もある。そんな話を次回は紹介しよう。
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