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2016年8月15日 (月)

仁木英之「三舟、奔る」(実業之日本社)

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 幕末の三舟(さんしゅう)といえば、山岡鉄舟、勝海舟、高橋泥舟の三人で、歴史に名を残す傑物たちである。彼らは互いに深い関係にあった。

 山岡鉄舟が死期の近いことを悟り、訪ねてきた勝海舟とともに自分たちの青春時代の回顧談を語るという筋立てになっている。話はまだ三人がほとんど無名の時代のことである。安政の大獄より以前のことであり、尊皇攘夷などまだ叫ばれていないが、しかし世の中は不穏な空気が漂いはじめている。

 当然この物語には若き日の清河八郎も登場する。ほんの少し清河八郎にこだわっているところなので、三舟に興味があるというより、清河八郎がどう扱われているか知りたくてこの本を手にした。

 残念ながら清河八郎の狷介さ、倨傲さがデフォルメされていて、たぶんそれは実像に近いのかもしれないが、わたしの心情とはかなり隔たりがあるのは残念だった。山岡鉄舟と清河八郎は友人であり、虎尾の会という有志の集まりに名を連ねている。そして新撰組を募集するときも、一緒に幕府に働きかけている。

 だからこの本に書かれているような清河八郎と山岡鉄舟の間柄はすこし違うと思う。この物語のあとに親しくなったのだろうか。

 著者の仁木英之は中国が舞台のファンタジー小説「僕僕先生」のシリーズの著者で、その他にも中国が舞台のものはみな必ず読んでいる。今回読んだこの本はそういう意味ではまったく毛色が違っている。

 残念ながら、傑物である三舟のキャラクターがうまく描かれているとは思えない。まったく架空の人物を使って同じ物語を語ったら、そのほうが面白かったのではないか。

 この本には書かれていないが、山岡鉄舟は最期に座禅を組んで、そのまま息をひきとった。

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