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2016年8月22日 (月)

誉田哲也「ブルーマーダー」(光文社文庫)

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 池袋の雑居ビルの空き室で服役を終えて出所したばかりの暴力団の組長の惨殺死体が発見される。滅多打ちにされ、全身の骨が折られていた。鉄パイプのようなもので殴られたように見えるけれど、それでは説明のつかないところもあり、どんな凶器が使われたか分からない。

 この凶器について、犯人が凶行に及ぶ際に何度か言及されるのだが、具体的によく分からない。最後の最後にはっきりとイメージがつかめるような説明がある。これは読者を引っ張っていくための著者のしつらえた謎なので、わざとあいまいな描写をしているのだろう。

 この死体発見に続いて、半グレ集団(暴走族上がりの組織の形態の違う犯罪者集団)のOBと不良中国人が同じような惨殺死体で発見される。この犯行の目的は何か。警察は総力を挙げて情報収集に努めるとともに、組織どおしの疑心暗鬼から起こる報復合戦を厳重警戒をする。ところがそれぞれの組織集団にはまったく動きがない。なにかに脅えているように。

 それにしてもこのような殺し方はすさまじい。この凶行シーンを書きたいために、著者はこの小説を書いたのではないか。

 主人公は池袋所の刑事・姫川玲子。「ストロベリーナイト」から続くシリーズは前作の「インビジブルレイン」で壮絶な結末を受けて一度ピリオドを打った観があった。その顛末の責任をとって警視庁本部の姫川班は解散し、彼女は池袋署に転属となっている。

 この池袋の連続殺人事件の犯人像が、過去と現在を前後させながら次第に明らかにされていく。犯人の動機はしかし、なかなか得心のいくものではない。犯罪とはそういうものだといえばそれまでだが、そこのところがこの凶器と殺し方を書きたいためにこの小説を書いたのではないか、とわたしが言う所以である。

 主人公のキャラクターが魅力的で面白い小説だが、かなり殺しのシーンがすさまじいので、そういうのが苦手な人はつらいかもしれない。

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コメント

おはようございます。
先日は私のブログを見ていただきありがとうございます。
少しきついことを書いたかもしれませんが、ポピュリズムの日本への浸透はかなり深刻なことになっています。
残念ながら安倍政権にもその傾向が見られます。
いかに政治に向かない人を政治に関わらせないか?ということを考えています。
ところで最近あまり小説は読みませんね。最近久しぶりに浅田次郎の『天切り松」シリーズを読みましたが。
面白い小説がこれからもたくさん出てきてくれればいいのですが・・・。
では、
shinzei拝

shinzei様
ポピュリズムは民主主義の病的な面の現れなのでしょう。
選挙に勝つにはポピュリズムが必要ですからね。
その極地がトランプ氏でしょう。
選挙民が知的で理性的である前提がそもそも楽観的に過ぎるのでしょう。

浅田次郎は面白すぎるので、中国関連のものだけに絞って読んでいます。
うますぎるところがあると思います。

こういう本も読まれるのですね
私も このシリーズ読んで楽しんでいます
最近のTVの刑事ものも この感じになってきているような気がします
かなり殺しのありようが複雑に残忍に・・・
本心は苦手です

イッペイ様
本で読んでいる分にはまだ良いのですが、映画などでリアルに映像化されるとちょっと引けますね。
ただ、現実にあった殺人事件の写真(例えばコリン・ウィルソンの切り裂きジャックの本など)を見ると、それはそれは映画どころではないほどおぞましいものです。

こういう本は卒業しようと思いながら、ときどき手に取ってしまいます。
もともと根が好きなのですね。

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